門倉貴史 エコノミスト/経済評論家
見解政府は米国との関係が悪化することを極度に恐れているが、トランプ政権は日米同盟すらディール(取引)の対象と考えており、日本に利用価値がないと判断すれば日米同盟を履行しない可能性もある。
トランプ政権下の米国に過度に依存することは日本にとってリスクの大きい戦略であり、米国以外の国々との関係を強化して、経済・貿易・投資関係の多角化を進めていくべきだ。多角化を進めていく上で重要なのは信頼関係である。
一連の関税政策やベネズエラへの攻撃、イランへの攻撃、ICC所長への経済制裁などトランプ政権の政策に対して国際社会は不信感を募らせており、このようなトランプ政権下の米国に追従すれば、日本も米国と同様に国際社会からの信頼を失ってしまい、経済・貿易・投資関係の多角化が困難になる恐れがある。長年培ってきた信頼を傷つけないためにも、日本は米国のICC所長への制裁に対してもっと強く抗議をすべきではないか。
アメリカへの依存はリスク
門倉貴史氏の主張は、「米国のディール外交に対する警戒」と「国際社会での信用維持(多角化の足場)」を軸とした現実的な指摘であり、対米一極依存のリスクを浮き彫りにしています。ただし、日本政府が「強く抗議」を選択しない背景にも、現実的な安全保障構造に基づいた独自の計算が存在します。
門倉氏の論説が突く本質
同盟の取引化への警戒
トランプ政権の政策は、従来の価値観同盟よりも即物的なディールを優先する傾向があります。米国の要求に従順であり続けることが、必ずしも将来の防衛約束を担保するわけではない点において、依存リスクを指摘する見解には論理的な妥当性があります。
信頼という外交資源の棄損
日本が欧米加盟国やグローバルサウス諸国との経済・貿易関係を多角化する際、基盤となるのは「ルールを守る国」としての信頼です。米国のICC制裁に対して沈黙を守り続けることが、他国からの外交的信用を損ねる懸念は拭えません。
政府が強い抗議を避ける実務的理由
安全保障上の実利的判断
日本を取り巻く東アジアの安全保障環境において、米国の核の傘や抑止力は即効性のある代替手段が存在しません。政府にとって、国際規範を守る姿勢を示すことと、日米関係の致命的な亀裂を回避することのどちらを優先するかは、常に実利的な秤にかけられます。
「当事国」ではなく「仲介・懸け橋」をとる立場
強烈な対外抗議は米国との直接的摩擦を決定づけます。そのため政府は、表面立った批判を避けて水面下の働きかけや調整に回ることで、日米同盟の維持とICCへの支援(予算拠出など)を両立させようとする傾向があります。
まとめ
門倉氏の提示する「信頼の失墜と外交多角化の阻害」という危機感と、政府が直面する「直近の防衛・安全保障の現実」との摩擦が、この問題の難しさを示しています。

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