スーダンが飢餓状態にある主な原因 ロシアはスーダンにおける自国の影響力拡大を狙っている 支援してもムダでは?

世界

 

世界で最悪の飢餓危機、スーダン

  • 2年以上に及ぶ内戦の長期化により、多くのインフラや生計手段が破壊されたこと
  • 基本的サービスのアクセスが困難になり、市民が深刻な食料不安に陥っていること
  • 国連世界食糧計画(WFP)の推定によると、スーダン人口の約半数に当たる約2460万人が急性の食料不安にあり、そのうち約63万人が非常に深刻な飢餓状態にあること
  • 国内の武装衝突が支援物資の輸送や配給を妨害し、人道支援活動が十分に機能しないこと
  • 経済危機や食料価格高騰、気候変動の影響(干ばつや洪水)も飢餓問題を悪化させていること
  • 農業地域での紛争により農作物の生産や流通が妨げられていること
  • 避難民や難民の増加により、周辺国も含めた地域全体の食料不足が深刻になっていること

これらを背景に、支援の遅れや紛争による食料供給の途絶が続き、飢餓状態に陥っている人々が増えています。状況は「世界で最悪の飢餓危機」ともいわれ、支援体制の強化が急務となっています.

 

 

スーダンの内戦の原因

  1. 北部と南部の対立:
    人種や民族、宗教の違いによる対立が根本的な原因であり、南部の人々は北部のアラブ化・イスラム化政策に抵抗していました。
  2. 地方政府の南部開発失敗:
    南部地域の経済開発や社会発展が進まず、格差や不満が拡大しました。
  3. 資源を巡る対立:
    南部には豊富な石油資源があり、これをめぐって南北間で激しい争いがありました。特にジョングレイ運河の大規模開発計画も対立を深めました。
  4. 植民地時代の負の遺産:
    イギリス・エジプトの共同統治時代に根付いた分断構造が内戦の引き金となっています。
  5. 冷戦構造と周辺国の介入:
    大国による介入が紛争を複雑化しました。

近年の軍内部の争いは、2019年の独裁バシール政権崩壊後、軍と準軍事組織RSF(即応支援部隊)の主導権争いが深刻化したことが背景にあります。これは軍の再編や権力闘争に起因しており、国軍トップのブルハン氏とRSF指導者ヘメティ氏の確執が紛争継続の大きな要因になっています。

これらの複雑な背景が重なり合い、長期にわたる内戦や断続的な武力衝突が続いているのです.

 

 

2025年現在のスーダンは、軍が支配している軍事政権

2025年現在のスーダン政権は、主に軍が支配している軍事政権です。国軍を率いるドゥルファッターフ・ブルハーン将軍が主権評議会の議長を務め、準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」のリーダーであるモハメド・ハムダン・ダガロ将軍(ヘメティ)らとともに国を統治しています。

2019年のバシール政権崩壊後、文民と軍が協力する移行政府が設立されましたが、2021年10月に軍が再びクーデターを起こして実権を握り、ブルハーン将軍が実質的なトップとなりました。その後、軍とRSF間で対立が激化し、2023年04月には軍とRSFの間で武力衝突が起きて内戦状態となっています。

現在は主権評議会が軍主導となり、議会は設立準備中で、首相はカーミル・アッタイイブ・イドリスが務めていますが、政権の実質的な権力は軍とRSFの指導者に集中しています。国の統治は軍の上級評議会が正規軍の最高司令部を引き継ぎ、民政移管は難航しています.

 

 

ロシアはスーダンの内戦に軍事・政治両面で関与

ロシアはスーダン内戦に対して一定の介入を行っています。2023年から国軍と準軍事組織RSFの内戦が続く中、ロシアは2024年からスーダン国軍に対して武器や弾薬、燃料を提供し支援を強めています。また、ロシアはスーダンの紅海沿岸のポート・スーダンに海軍基地を建設する交渉も進めており、軍事的な影響力拡大を狙っています。

さらに、ロシアの民間軍事会社ワグネルは過去にスーダンで武装勢力の訓練や支援を行っていましたが、現在の内戦には直接関与していないとされています。ただし、ワグネルは内戦勃発直後にRSF側に兵器を供給するなど、関係があったとみられています。

ロシアの介入は軍事支援だけでなく、国連安保理での停戦決議に対する拒否権行使という政治面でも影響を与えており、スーダンの軍事政権側に比較的近いスタンスをとっている状況です。このようにロシアはスーダンの内戦に軍事・政治両面で関与し、影響力を強めていると見られます.

 

 

ロシアが国連安保理でスーダンの停戦決議に拒否した理由

  • ロシアは決議案を「ポストコロニアルの香りがする」と批判し、国連が一方的に紛争当事者に停戦を押しつけることに反対しています。
  • 軍事的には、ロシアはスーダンの国軍を支持しており、特に国軍のトップであるブルハーン将軍寄りの姿勢を強めています。国軍は準軍事組織RSFとの対立で軍事的に優位と見られているため、国際的な停戦呼びかけに消極的な態度を取っています。
  • 政治的には、ロシアはスーダンの国家の独立と統一を支持する立場を表明しており、停戦決議が国家の内部問題に外圧的に介入するものであると見なしています。
  • ロシアはスーダンにおける自国の影響力拡大を狙っており、武器支援や拠点構築を通じて国軍側との関係を深めているため、停戦決議が妥結することでその影響力が弱まることを警戒しています。

以上を踏まえ、ロシアは安保理の停戦決議に対して拒否権を行使し、結果として決議案は否決されました。この行動は国際社会からは非難を浴びており、特にイギリスやアメリカから「平和の敵」として批判されています。

 

 

アミーラの日記 スーダンの革命と紛争
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2019年のスーダン革命と2023年の紛争を、少女アミーラの視点で日記形式に描いた絵本です。著者は米国人とスーダン人の元教員2人で、10カ月にわたるスーダンの紛争の現実を子どもから大人まで分かりやすく伝え、共感や思いやり、平和への理解を深めるために制作されました。

物語はスーダン人13人への聞き取りを基にしており、架空の登場人物ながら、当時の生活や社会状況をリアルに表現しています。例えば、インターネットが切断され学校に通えなくなる様子や、2023年04月15日の紛争発生日の朝に起きた爆発音や銃声の描写があり、スーダンの人々が体験した混乱や恐怖が伝わります。

この絵本は子ども向け絵本としてだけでなく、平和教育の教材としても活用されており、授業ガイドも用意されています。日本語版は2025年04月15日に出版され、埼玉県立伊奈学園中学校の英語授業でも扱われ、生徒からは「自分事として捉える大切さを学んだ」との反響がありました。

さらに、この絵本は英語のほかアラビア語、ロシア語、スペイン語にも翻訳されており、世界各地でスーダンの現状を伝え、平和を訴える活動として広がりつつあります。

 

 

 

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