ネクスペリア問題で西側諸国がやるべき事

中国の経済的影響力を抑制する枠組み作り

  • ネクスペリア(Nexperia)問題」とは、オランダに本拠を置く半導体メーカー・ネクスペリアが中国資本によって実質的に支配されていることに対し、西側諸国で安全保障上の懸念が高まっている問題です。特に英国やドイツでは、自国の半導体関連企業や先端技術が中国に流出するリスクが指摘されています。

この問題に対して西側諸国が取るべき行動は、以下のように整理できます。

1. 経済安全保障の強化

  • 対外投資審査制度の厳格化:外国資本(特に中国企業)によるM&Aや出資を精査する体制を強化する必要があります。
  • 重要技術の定義と保護:半導体設計・製造分野を安全保障上の重要インフラとして指定し、技術移転を制限すべきです。

2. サプライチェーンの再構築

  • 脱中国依存:原材料からチップ製造、組み立てまで、中国依存度の高いサプライチェーンを段階的に分散化する。
  • 同盟国間での連携強化:米国、欧州、日本、韓国、台湾などが共同研究・生産を進める枠組みを構築する。

3. 技術・人材流出の防止

  • 輸出管理の統一基準化:国家間での「技術輸出の監視リスト」を共通化し、中国への迂回輸出を防ぐ。
  • 機微技術者の流出管理:国家安全保障に関係する研究・人材の移動をモニタリングする。

4. 国家支援による自国半導体産業の育成

  • 補助金と投資減税:欧州や日米で自国ファブ設立を支援し、中国資本に頼らない製造基盤を確保する。
  • 中小・新興企業の育成:研究開発型ベンチャーを支援して、技術力の底上げを図る。

5. 情報共有と法的整備

  • 機密情報の共有体制:NATOやG7レベルでの「経済安全保障情報ネットワーク」を構築する。
  • 対中投資ルールの策定:投資を完全に遮断するのではなく、リスクに応じた管理モデルを国際的に標準化する。

結論として、西側諸国がやるべきことは「経済活動の自由を維持しつつ、安全保障リスクを可視化し統制する」ことです。ネクスペリアのようなケースをきっかけに、軍民両用技術やサプライチェーン支配を狙う中国の経済的影響力を抑制する枠組みを早急に整える必要があります。

 

 

ネクスペリアの中国部門と欧州本社が事実上の分裂状態

  • 2025年11月29日 ネクスペリアに離脱の動きと非難、中国の親会社 供給網巡り

ネクスペリア(オランダ拠点の半導体メーカー)とその親会社である中国の聞泰科技(ウィングテック)間で、支配権・供給網を巡る対立が表面化しています。

  • ネクスペリア欧州本社は、中国を除外したサプライチェーンを構築する動きを進め、ウィングテックからの独立を示唆。
  • ウィングテックはこれを非難し、「正当な支配権を回避している」と主張。供給網の混乱が再発する恐れを警告。

背景は以下の通りです。

  1. オランダ政府は安全保障上の懸念からネクスペリアを管理下に置き、裁判所がウィングテックの経営支配権を取り消した。
  2. 中国はネクスペリア製品の輸出停止で報復し、自動車用半導体の供給網に混乱が生じた。
  3. 11月に輸出規制は緩和されたが、裁判所の決定は依然有効。

現在の状況

  • 中国部門は欧州本社の管理から独立すると宣言し、欧州側は中国工場への半導体ウエハー供給を停止。
  • 中国部門は海外生産拡大計画の中止を要求し、2026年半ばまでに生産の9割を中国国外に移す内部目標を持つ。
  • ネクスペリア欧州本社は対話再開を試みたが、中国側がメールやITシステムを遮断してコミュニケーションを妨害していると反論。

欧州本社は「建設的な話し合いの方法を探す必要がある」としています。

要点は、ネクスペリアの中国部門と欧州本社が供給網・支配権を巡って事実上分裂状態にあり、半導体サプライチェーンに混乱が続くリスクがあることです。

 

 

2025年11月12日 中国、ネクスペリア掌握撤回をオランダに求めるようドイツに期待

  • 中国商務相、独政府にオランダ政府の説得要求 ネクスペリア巡り

中国は、オランダが9月30日に中国系半導体メーカー・ネクスペリアを掌握したことに対し、ドイツ政府にオランダへの働きかけを期待している。ネクスペリアは自動車や電子機器向けチップを生産しており、オランダによる掌握を受けて中国は輸出規制を課し、世界的なサプライチェーンに混乱が生じた。

中国商務相の王文涛は、ドイツの経済・エネルギー相との会談で、オランダがネクスペリア掌握を撤回し、問題の早期解決に向けた具体的措置を取るようドイツに促すことを期待すると発言。一方、オランダ側は日常業務には影響がないとし、欧州での生産・供給の継続を目的とした措置であると説明している。

中国はオランダの行動を不当介入と非難し、輸出規制の緩和によってチップ不足はやや解消されたものの、所有権や運営をめぐる緊張は依然として続いている。王文涛は、半導体の安定供給にはオランダ側の建設的な態度と具体的行動が必要だと強調した。

 

 

中国に依存しているドイツを利用して、オランダを攻略しようという中国側の目論見?

そう読み取れます。状況を整理すると次のようになります。

  • ネクスペリアは中国系企業が所有するオランダ拠点の半導体メーカーで、欧州向けの重要な自動車用チップを生産。
  • オランダが9月に同社を掌握したことで、中国は輸出規制で対抗。結果、欧州の自動車産業にチップ不足が発生。
  • 中国は、チップ不足で影響を受けるドイツに対して「オランダに撤回させるよう圧力をかけてほしい」と要請。

つまり、中国はドイツ経済のオランダ依存や、自国製チップの重要性を逆手に取り、間接的にオランダを動かそうとしている構図です。実際には、ドイツの自動車産業が中国の輸出規制に影響を受けているため、ドイツ政府は中国の要望を無視できない立場にあります。

これは典型的な「経済的レバレッジを利用した外交圧力」と言えます。