将来的には米ドルの基軸通貨地位に変化を与える可能性
185ヵ国が人民元決済へ!
- BRICSが2025年に導入した新しい決済システムは、現在185カ国で中国元を使った国際取引をサポートしており、米ドルを使わない決済を可能にしています。これは、BRICS加盟国の中国が主導するクロスボーダーインターバンク決済システム(CIPS)によるもので、世界の金融市場における米ドルの基軸通貨支配を揺るがす大きな動きです。
BRICSの新決済システムの概要
- BRICSの新決済システムは、中国のCIPSを基盤とし、アフリカ、アジア、東ヨーロッパなどで主に利用されており、米ドルを介さずに中国元での貿易決済を実現しています。2023年時点で約40カ国が合意し、取引金額は52兆人民元(約数十兆円)に達し、全体のクロスボーダー決済の58%を占めています。現在185カ国がこのシステムを利用可能な状態にありますが、実際の利用は発展途上国が中心です。
米ドルに代わる中国元の台頭
- この新システムの普及は、中国元が米ドルの代替通貨として徐々に世界の貿易・金融市場に浸透していることを示します。中国銀行の人民元貸出・預金・投資額は過去5年で4倍に増加し、約3.4兆人民元(約4800億ドル)に達しています。さらに、人民元建ての海外債権発行も増え、インドネシアやカザフスタン、アフリカ諸国が人民元建て資金調達をおこなうなど、信頼性と需要が急拡大しています。
世界情勢とBRICSの影響
- 米国がロシアに経済制裁を仕掛ける中、BRICSの影響力は増大し、G7が世界GDPの18%を占める一方、BRICSは2050年までに約50%弱のシェアを占めると予測されています。特に中国はBRICSのリーダーとして経済・金融分野での存在感を高めています。また、東南アジア諸国は中国との自由貿易協定を強化し、貿易の中心が米国から中国にシフトしつつある動きもあります。
BRICSの新決済システムは単なる金融インフラの構築だけでなく、世界の経済秩序や貿易のルール再編をもたらす重要な出来事となっており、将来的には米ドルの基軸通貨地位に変化を与える可能性があります。
独裁的・専制的な国々も巻き込んだ国際的な金融と経済秩序の変化
「発展途上国」というより、実際は独裁国家や専制国家ではないの?
BRICSの新決済システムを利用している国々には、確かに発展途上国だけでなく、独裁的な政治体制や専制国家も含まれていることが指摘されています。BRICS自体の加盟国にはブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカなどがあり、この中にはロシアや中国のように強権的な政治体制を持つ国も含まれています。
さらに、BRICSが影響力を広げている地域には、発展途上国の中で政治的に不安定であったり独裁体制であったりする国も多く存在します。こうした国々がBRICSの新決済システムや中国元を利用し、米ドル依存からの脱却や経済的な独立を目指している実態があります。
要するに、この新決済システム利用の広がりは単なる経済的な発展途上国支援ではなく、政治体制の多様性も含んだ実情であり、BRICSの拡大と中国の影響力強化は、独裁的・専制的な国々も巻き込んだ国際的な金融と経済秩序の変化を示しています。
人民元決済を追加選択肢として導入する形で運用
おそらく米ドル決済も維持するが、人民元決済も導入するだけでは?
- BRICSの新決済システムでは、米ドル決済を完全に排除するのではなく、人民元決済を追加選択肢として導入する形で運用されており、多くの国々が両方を並行して維持しています。BRICSブリッジなどのプラットフォームでは決済通貨を選択可能としており、インドのように人民元支配を避けつつ他のBRICS通貨を使う柔軟性が確保されています。
併用運用の実態
- 実際の取引では、中国とロシア間のCIPS(中国の決済システム)で人民元が拡大していますが、BRICS諸国間の貿易の約50%が現地通貨(人民元やルピーなど)で行われ、米ドルも依然として主要通貨として併用されています。国際決済シェアでは米ドルが47%を占め、人民元は2.88%程度と低迷しており、急激な置き換えではなく多通貨化の進展です。
背景と影響
- この併用アプローチは、米ドルの制裁リスク回避と人民元国際化を両立させるもので、ブロックチェーンやCBDCを活用した試験運用も進められています。発展途上国やBRICS参加国はドル依存を減らしつつ、信頼できる代替を確保する戦略を取っており、完全脱ドル化には時間がかかります。
多くのBRICS参加国やパートナー国はバランス外交
自分が国家元首なら、中国にもアメリカにも恩を売ると思う。いわゆるバランス外交で、両方から利益を得ます。
- 多くのBRICS参加国やパートナー国は、国家元首の立場で中国とアメリカの両方に恩を売り、バランス外交を実践して経済・安全保障の利益を最大化しています。特にインドネシアやエチオピア、UAEなどの新加盟国は、中露とのBRICS協力と並行して米欧との連携を維持し、反米欧路線を避けています。
バランス外交の具体例
- インドはBRICSで積極的に参加しつつ、米欧との経済・安全保障協力を優先し、人民元決済の拡大に慎重な姿勢を示しています。ブラジルも2025年の議長国としてリオデジャネイロ宣言で米国批判を避け、多国間主義を強調し、BRICSを対立軸ではなく共存の場と位置づけました。
中国の戦略と各国対応
- 中国はBRICS拡大を通じてグローバルサウスとの関係を強化しますが、インドやブラジルは西側依存からの脱却を経済利益優先で進め、両陣営間の橋渡し役を担っています。このアプローチは制裁リスク回避と貿易拡大を両立させる現実的な選択です。
現実は米ドル支配の完全崩壊ではなく、多通貨化の始まり
この動画は【Great Reset】と煽っているが、あくまで始まりに過ぎない。
BRICSの新決済システムは、確かに「Great Reset」(世界経済の抜本的再構築)を示唆する動きとして一部で煽られていますが、現実は米ドル支配の完全崩壊ではなく、多通貨化の始まり段階に過ぎません。BRICSブリッジのようなプラットフォームは現地通貨やCBDCを活用した選択的決済を推進しており、国際貿易の人民元シェアは7.6%程度と米ドルの47%に遠く及ばず、急激な変化は起きていません。
グレートリセット論の背景
- 動画のような主張は、BRICSの金購入増加や新通貨「The UNIT」構想を米ドル覇権終焉の証拠として描きますが、実際はロシアの制裁回避策や中国の人民元国際化の延長線上です。BRICSサミットでは脱ドル依存を議論するものの、インドの人民元支配懸念から通貨選択の柔軟性が確保され、完全代替には程遠い状況です。
現実的な影響と限界
- このシステムはグローバルサウスでの貿易効率化に寄与しますが、西側経済との併用が主流で、ブロックチェーン試験運用も初期段階です。将来的にドル依存低下が進む可能性はあるものの、2025年現在はバランス外交下の漸進的変化であり、劇的なリセットの始まりに留まります。
アメリカは軍事費と財政赤字の金利支払いが負担
アメリカは世界中でドル決済を維持するためにどれくらいのコストを払ってきたのか?
- アメリカはドル基軸通貨地位の維持のため、主に軍事費負担と財政赤字の金利支払いという形で巨額のコストを払ってきました。2023年の世界軍事費に占める米国のシェアは36.8%で、約9,000億ドル超と推定され、これがドル決済の安全保障裏付けとして機能しています。また、2024年度の連邦財政赤字はGDP比6.4%の1兆8,300億ドル、利払い費はGDP比約3%の8,500億ドルに達し、基軸通貨プレミアムによる低金利調達の裏返しです。
軍事・安全保障コスト
- ドル覇権を支える「Pax Americana」体制下で、米国は中東・アジアでの軍事プレゼンスを維持し、石油貿易のドル決済(ペトロダラー)を守るために多大な支出を続けています。IMF統計では外貨準備のドルシェアが58.22%(2024年第2四半期)と低下傾向ですが、これを防ぐための同盟国支援や制裁執行に年間数兆円規模のコストが発生します。
財政・金融コスト
- 双子の赤字(財政・経常)を海外投資家がドル資産でファイナンスする特権により、通常国では不可能な赤字拡大が可能ですが、債務残高はGDP比123%の35兆4,600億ドル(2024年度)に膨張。金利上昇時の利払い増大がドル維持の真の負担で、2025年現在も4兆円超の年間コストを生んでいます。
トランプ大統領は2025年現在も「ドル基軸喪失は敗戦同然」と明言
アメリカは「世界の警察」という立場から降りた。それは経済的な理由が大きいと思う。同様にアメリカは基軸通貨についても固執しない考えになったのではないか?
- アメリカは「世界の警察」役割から部分的に後退しつつありますが、基軸通貨ドルの地位については固執を続け、経済的理由で放棄する考えは示していません。トランプ大統領は2025年現在も「ドル基軸喪失は敗戦同然」と明言し、BRICSの脱ドル化に10%関税を課す方針を表明しており、軍事・財政負担を厭わず維持する姿勢です。
世界の警察からの後退
- 経済的負担増大(年間軍事費9,000億ドル超)と国内優先政策により、中東・アジアでの介入を縮小していますが、これはドル覇権放棄ではなく、効率化を図るもので、安全保障同盟(NATO、日米安保)を通じたドル決済の裏付けは継続中です。
ドル基軸への固執理由
- 外貨準備のドルシェアは58%超を維持し、人民元などの代替が育たない「基軸通貨の慣性」が働き、米国は低金利調達の特権(債務35兆ドル超)を享受しています。FRBや財務省もシェア低下を懸念し、制裁執行でドル支配を強化しており、BRICS挑戦に対抗する戦略を堅持。
アメリカは高関税政策と金融制裁で人民元シェア拡大を抑制
アメリカはどのように対抗すると思うか?
- アメリカはBRICSの新決済システムや脱ドル化に対し、主に高関税政策と金融制裁で対抗します。トランプ大統領は2025年現在、BRICS加盟国や反米政策に同調する国に対し10-100%の追加関税を課す方針を明確に示しており、BRICS通貨創設時には100%関税で市場アクセスを封じ込めています。
関税と貿易戦争の活用
- BRICS拡大(エジプト、エチオピア、イラン、UAE、インドネシア加盟)に対し、トランプ政権は中国輸入に60%超、BRICS全体にベース10-20%関税を公約化し、ブラジルに50%相互関税を適用。目的はBRICS諸国の米国市場依存を逆手に取り、ドル使用を強制する交渉術です。
金融・外交的対抗策
- SWIFT排除や二次制裁を強化し、ロシア・イランへのドル決済封鎖を継続。一方、同盟国(インド、ブラジル)とのFTA強化でBRICS内部分裂を誘発し、人民元シェア拡大を抑制。軍事同盟維持でドル裏付けの安全保障を提供します。
