国家の金融システムと社会の安定を守る
中国は国として暗号資産を支持しない態度だった。それはなぜか?
- 中国が暗号資産(仮想通貨)を支持しない、あるいは全面的に規制・禁止する態度をとってきた主な理由は、国家の金融システムと社会の安定を守ることにあります。
- 特に中央集権的な統制を重視する中国政府にとって、暗号資産が持つ非中央集権性や匿名性は、自国の管理体制と相容れないリスクと見なされています。
🇨🇳 中国が暗号資産を規制・禁止する主な理由
1. 資本規制と金融安定性への懸念
- 資金流出の抜け穴: 暗号資産が、中国政府による厳格な資本規制を回避し、国内外への資金移動の手段として悪用されることを防ぐためです。人民元の価値が不安定になった際などに、暗号資産が資本逃避の手段となることを懸念しています。
- 国家通貨(人民元)の支配: 中国人民銀行(PBoC)は、自国通貨が「私的な遊び場」になることを望んでおらず、国家の指示なしに通貨に影響を及ぼす存在を認めません。ステーブルコインなどが国家の通貨システムにリスクをもたらすことを懸念しています。
2. 社会の安定と投資家保護
- 投機による混乱の防止: 暗号資産の価格は激しく乱高下するため、素人投資家が大きな損失を被り、それが社会不安や抗議活動につながる事態(社会の安定維持という中国政府の最重要原則)を極度に警戒しています。
- 詐欺・違法行為の防止: イニシャル・コイン・オファリング(ICO)などを通じた金融詐欺の横行を防ぐ目的もありました。匿名性の高い暗号資産が、マネーロンダリングなどの違法な金融活動に利用されることも問題視しています。
3. 電力消費と環境への配慮
- マイニング規制: 2021年には、暗号資産のマイニング(採掘)活動を国内で厳しく取り締まりました。これは、マイニングが大量の電力を消費し、環境負荷が高いと見なされたためです。
💡 補足:ブロックチェーン技術自体は重視
- 中国政府は、暗号資産(トークン)の取引や利用は厳しく規制・禁止していますが、その基盤となるブロックチェーン技術自体は、改ざん防止や安全性の高さから、国家のデジタルインフラや商用分野への応用を積極的に推進しています。また、中央銀行がコントロール可能なデジタル人民元(DCEP)の発行にも取り組んでいます。
このように、中国の暗号資産に対する姿勢は、非中央集権的な通貨が、中央集権的な国家の金融統制や社会の安定にとって大きな脅威となると判断した結果だと言えます。
安価なエネルギーを経済活動に利用
しかし暗号資産のマイニングを再開し始めた。なぜか?
- 中国政府は2021年に暗号資産マイニング(採掘)を全面的に禁止しましたが、近年、マイニング活動が静かに復活し、中国が再び世界のマイニングシェアで上位(現在第3位程度)に浮上しているとのデータがあります。
- これは、政府が公式に規制を緩和したというよりは、主に地下活動や抜け道を利用した結果と考えられています。
⛏️ 中国でマイニング活動が復活している主な背景
1. 豊富なエネルギーとデータセンターの利用
- 中国国内、特に新疆ウイグル自治区や内モンゴル自治区などエネルギー資源が豊富な地域では、安価な電力が利用可能です。
- マイナー(採掘業者)は、公式な暗号資産マイニングを隠し、データセンターのブームに便乗したり、エネルギー供給業者と結託したりして、この安価な電力を利用して活動を再開しています。
- 特に地方政府や一部の企業は、マイニングをデータセンター事業や計算能力提供の名目で運営することで、経済成長や税収確保の手段として黙認している側面があると見られます。
2. 地下での活動と規制の隙間
- 2021年の禁止後、多くのマイニング業者は国外へ移転しましたが、一部は国内に残り、地下で活動を継続しています。
- これらは、規制の目が行き届きにくい個人や小規模な法人によって行われていることが多いです。
- 一部の地域では、経済的な利益や電力の有効活用を目的として、中央政府の厳格な禁止措置にもかかわらず、地方政府の監視が緩くなっているという見方もあります。
3. ハードウェア製造の拠点としての優位性
- 中国はもともとASICマイニング機器の世界最大の製造拠点の一つであり、このサプライチェーンが国内に残っているため、活動を再開しやすい土壌があります。
4. 香港の規制緩和への動き
- 中国本土の規制とは別に、香港では暗号資産取引に関する一般規制緩和の動きが進んでおり、これが中国国民の間でビットコインへの関心を再び高め、本土でのマイニング活動への間接的な動機付けとなっている可能性も指摘されています。
このように、活動の再開は中央政府の正式な政策転換というよりは、地下活動の拡大と、地方における安価なエネルギーを経済活動に利用したいという誘因が組み合わさった結果であると言えます。
暗号資産のマイニング事業 中国の一部地域で禁止へ(2021年3月3日)
ビットコインなど暗号資産の取引などの際、大量のコンピューターで計算をさせる「マイニング」事業が中国の一部地域で禁止される見通しです。
中国メディアは内モンゴル自治区で来月から暗号資産のマイニングを行う企業活動を禁止すると報じました。
地元政府が省エネ目標を達成するためだと説明しています。
マイニングとは中央銀行などが存在しない暗号資産取引の信頼性を保証する膨大な計算を世界中のコンピューターが分散して検証する作業で、参加者は成果に応じて報酬を受け取ることができます。
ただ、マイニングは大量のコンピューターを稼働させて計算するため、多くの電力を消費します。
ロイター通信によりますと、世界のマイニング事業の約半数が中国で行われ、なかでも電気料金の安い内モンゴル自治区に集中しているということです。
