2025年の参議院選挙が「海の日」を含む3連休の中日(7月20日)に設定されたことで、「自民党の陰謀ではないか」という声や、「投票率を意図的に下げるためでは」といった疑念がSNSなどで拡散されています。しかし、この日程が自民党による陰謀だと断言できる根拠は現時点でありません。
主な論点は以下のとおりです。
- SNSや一部メディアでは、「現役世代や若者の投票を抑制したい狙いがあるのでは」との批判や憶測が広がっている。例年、行楽シーズンや夏休み開始時期と重なると、特に若年層の投票率が下がる傾向が指摘されています。
- 政治学者や専門家の間でも「なぜ連休中日にしたのか理解できない」とする声がある一方で、このような中日投票はこれまで国政選挙では例がない異例の判断である。
- 具体的な日程は政府(内閣)が決定しており、閣議決定の形で公示日・投票日が定められた事実が報じられています。
- 公明党の要望で通常国会日程や3連休中日の投票設定が考慮された経緯が指摘されていますが、与党全体の「組織票を有利にする」意図だったとする証拠は提示されていません。
また、世論調査などでは自民・公明の与党が苦戦し、必ずしも与党有利の状況ではありません。さらに与野党ともに期日前投票の活用を強く呼びかけており、組織票の締め付けに全力を挙げている状況です。
以上より、「自民党の陰謀」と断定する証拠や公式な裏付けは存在しておらず、あくまで疑念や憶測の段階にとどまります。日程設定の経緯や意図については、複数の政党や日程的都合が絡むため、単純に自民党だけの陰謀と結論づけるのは妥当ではありません。
- 現代世界で急速に拡がり、政治・社会に実際の影響を及ぼし始めている陰謀論の実態と、その背景や構造にメスを入れる新書です。
- 著者の烏谷昌幸は慶應義塾大学法学部政治学科教授で、政治コミュニケーションや現代社会論、メディア研究を専門としています。
この本では、
- Qアノンなど米国を中心とした「トランプは闇の政府と戦っている」「オバマもバイデンもすでに処刑された」といった荒唐無稽に思える事例を挙げつつ、なぜこうした陰謀論が生まれ、人々が信じ込んでしまうのかを解説しています。
- 陰謀論が「特異な人々」の誤信ではなく、「誰もが抱きうる身近な問題」であり、“この世界をシンプルに把握したい”“何か大事なものが奪われる”という人間の根源的欲望や感覚から生まれるもの、としています。
- 陰謀論が「社会状況次第で、誰の心にも芽生える現象」だとし、見下すべき“異常な例”ではなく、現代社会全体が抱える構造的課題と密接につながっていると位置付けています。
構成例としては、
- 陰謀論とは何か
- 「パラレルワールド化」する現代社会
- なぜ「陰謀論政治」が広がるのか
- 陰謀論がどのように拡散し、社会に効果を持つのか
- 日本社会にも忍び寄る陰謀論の影と、それを防ぐために必要な視点
といったテーマが扱われています。
烏谷はインタビューで、自分だけは陰謀論に騙されない、陰謀と陰謀論の違いを見極められるという「過信」に警鐘を鳴らし、規模の大きい不可解な現実を前に私たちの判断力は簡単に曇ることがあると指摘しています。
本書は、陰謀論を“あちら側”の出来事とせず、「となり」の、つまり私たち自身の問題として捉えることの重要性を説いています。