ロシアと中国、ノルウェー領スバルバル諸島でプレゼンス強化
ノルウェー情報部(NIS)が発表した2026年版の年次脅威評価報告書に基づき、スバルバル諸島におけるロシアと中国の動向について、その構造的背景と実力行使の狙いを分析します。
ロシアによる「自立化」とインフラの切り離し
ロシアはスバルバル諸島において、ノルウェー側の供給網や輸送インフラへの依存を意図的に減らす動きを見せています。これは単なる物流の効率化ではなく、有事の際にノルウェー側からの制限を受けずに活動を継続するための「構造的な自立化」が主眼です。
特に、バレンツブルクへのロシア船の定期寄港は、事実上の独自の補給路を確立する試みです。これにより、ノルウェーが主導するサプライチェーンから同地域を切り離し、ロシアの完全なコントロール下に置く地盤を固めています。
中国による「極地研究」を通じた拠点化
中国は北極海における自国の法的根拠が薄いなかで、「極地研究」と「将来の航路確保」を大義名分としてプレゼンスを急拡大させています。
NISの指摘通り、北極圏での中国調査船の数は、2023年以前の1隻から、2025年には5隻へと急増しました。この科学調査の強化は、海底地形の把握や通信データの収集を目的としており、将来的な軍事転用や、ロシアと共同での北極海航路(NSR)の支配を視野に入れた「既成事実化」のステップといえます。
既存の世界秩序の崩壊と中立国への圧力
今回の報告書で最も注目すべきは、NISのステンソネス部長が「これまでの世界秩序が崩壊しつつある」と明言した点です。
ロシアと中国は、西側諸国の結束の乱れを好機と捉えています。スバルバル諸島は軍事利用が禁じられた特殊な地位(スバルバル条約)にありますが、両国はハイブリッドな手法(民間活動を装った圧力)を用いることで、ノルウェーに対して「西側に付くか、中立を維持するか」という二者択一を迫る、目に見えない「サプライチェーンの組み換え」を強行しています。
まとめ
- ロシアは供給インフラを自前化し、ノルウェーの影響力を排除しようとしている。
- 中国は調査船を激増させ、科学調査を隠れ蓑にした戦略的拠点を構築している。
- 両国の連携は、北極圏における既存の国際法や安全保障の枠組みを形骸化させる実力行使である。

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