日高の遺書 私はもう生きてゆくこんきもカもなくなりました。

日高の遺書

私はもう生きてゆくこんきもカもなくなりました。

署長様、ご承知のように私の夫も死にました。そして相手の人も死にました。夫は自業自得でありましょうから如何ようにせめられてもしかたありません。でも、あとに残った私と子どもニ人にまでその責任があるのでしようか。

私に財産がたくさんあれば、ご遺族の方の気の済むように弁償したいと思います。いくらお金をあげたからと言って亡くなられた人の命を元通りにすることは出来ませんが。

でも私には何もありません。それでも将来家をたてるために貯金していたお金が97万円程あったのでございます。これで私はこのお金とテレビ、冷蔵庫、洗たく機、洋服タンス、時計、指輪,夫の洋服等も売りました代金23万円と合わせて120万円をお見舞金としまして、また夫の退職金をも全部差上げる条件でご遺族の家に持っていったのでございます。

ご遺族のご両親は「こんな少額では納得できないからもっとお金をだしなさい」と申します。

私はこのお金が私の全財産でどざいますからこれ以上のお金を調達することはできませんので幾重にも私の事情を申し上げたのでございます。

ご遺族のど両親は親戚回りをしても賠償金をだしなさいともうします。でも、夫の親戚も私の親戚も決して余裕のある生活はしていませんのでぼう大な金額を調達することはとうてい出来ないのでございます。

すると次は私に働いて毎月一万円ずつ弁償しなさいと申します。

私のような学歴もなく手職もない人間に何万もする給料を払って<れるところがありましょうか。たとえ就職することが出来ましたところで、弁済金と家貸を払ってしまうと生活費にまでまわすことは出来ないのでございます。どうして親子三人生活すればよろしいのでしょうか。罪のない子どもたちと生活だけは近所の子供たちと同じようにしてあげたいと願うのは母として当然のことではないでしょうか。

子供たちは「お父さんはどうしたの」「なぜテレビがなくなったの」「テレビがみたい」とせがまれます。子供たちは今すやすやねむっております。これからお父さんのもとに行けるのも知らずに!

署長さん、この小さな子供の命をうばう母をばかな女とおよび下さい。でも、子供をのこしたなら、あとの子供たちの生活を考えるとあわれでなりません。親子三人でお父さんのもとにまいります。

ご遺族のご両親のおっしゃることは決してご無理なことではありません。私の夫さえ、酒を飲まずに退転していたならば、決してご子息様を死なせずに済んだのでございます。

私と子供二人の命とひきかえに夫の罪をおゆるし下さるよう、ご遺族のご両親様におとりはかりくださいますようお願い申し上げます。

45年6月、北海道日高管内S町の国道で、38歳の会社負が酒酔い運転で追越しをかけ、対向車と正面衝突し相方とも死亡した。

この酒酔い運転の家族は妻(32歳)と5歳及び3歳になるニ人の子供がおり、それまで明るい平和な生活をおくっていたが、この事故により一瞬にして幸せな生活が崩れ去り、前途を悲観した妻は警察署長宛に遺書を残し、可愛い二人の子供を道連れに自殺した。

これはその時の遺書である。

2019年05月19日 飲酒運転事故で被害者と共に死亡、加害者の妻が幼い子供を道連れに自殺する際警察署長に宛てた遺書