亡くなった男性の弟が証言「俺は容疑者というより役所が許されへん」
殺人容疑者と区職員の『異様な関係性』背任容疑で職員4人が書類送検…
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3月20日、大阪府堺市の中区役所の同じ課に所属する職員4人が書類送検された。隣人男性を殺害した疑いで今年1月に逮捕された男に対して、職員らは生活保護費を不正に支給した背任の疑いがもたれている。「殺人事件」と「職員の書類送検」、この2つには一体どのような関係があったのか。取材班は書類送検される前の職員らを直撃した。
「職員の書類送検」と「殺人事件」
背任の疑いで3月20日に書類送検された堺市中区役所の生活援護課の職員4人。去年6月、区内に住む男が条件を満たさずに申請した運転免許の取得費用を不適切だと知りながら支給して、堺市に対して約26万円の損害を与えた疑いがもたれている。
その不適切な金を受給していたのは今年1月に殺人容疑で逮捕された楠本大樹容疑者(33)だ。殺人事件の容疑者と、生活保護の担当課に勤務する区役所の職員。彼らの間にいったい何があったのか。
亡くなった被害者の弟の証言
楠本容疑者に殺害されたのは唐田健也さん(当時63)。集合住宅で一人暮らしをしていたが、去年11月に部屋で遺体となって見つかった。唐田さんの弟(62)は区役所からの電話で兄の死を知ったという。
(唐田健也さんの弟)
「泣き崩れてしもたわ。2人きりの兄弟やったから。ましてや兄貴やし。俺は兄貴(の遺体)を家に連れて帰ろうと思っていたんですよ。そしたら警察の方から『事件性がある、解剖したい』と。はい、お願いしますという感じで了解したんですけど」
司法解剖の結果、唐田さんのろっ骨は折れ、全身にいくつもの打撲痕があることがわかった。警察はその後、隣の部屋に住んでいた楠本大樹容疑者を殺人容疑で逮捕した。実は、唐田さんの弟は兄の遺体が見つかった日、楠本容疑者と区役所で面会していた。区の職員から「楠本容疑者が話をしたがっている」と電話で呼び出されたという。
(唐田健也さんの弟)
「(楠本容疑者が)『兄貴に11万7500円を貸している』と。『役所で会おうや』と。ほんまに借りている金やったら俺も払うつもりでコンビニで20万円ほど下ろして行ったんですよね」
そして、区役所に現れた楠本容疑者はこう言った。
(楠本大樹容疑者)
「(死亡)保険があるから金で返済しろ。良かったのぉ。いっぱい金入るやんけ」
突き付けられたのは手書きの誓約書。楠本容疑者は「唐田さんに金を貸していた」などと因縁をつけ、約12万円を肩代わりするよう要求してきたのだ。
(唐田健也さんの弟)
「そのとき楠本容疑者が『あと2、3万円や』と言うたんですよ。『俺はお前の家知っているからな』とかいろいろ言われて。そのとき役所の人も『あと2、3万円やからもうサインしたら』と言った。役所の人がそう言うから俺も安心というか」
容疑者と区職員『異様な関係性』の目撃証言
唐田さんは去年10月以降、楠本容疑者から繰り返し暴行を受け、生活保護費などの金銭を脅し取られていたという。その歪な関係を周辺の住民たちもたびたび目撃していた。事件直前に2人が訪れたという近所の飲食店。店主によると、楠本容疑者と唐田さんのほかに、区役所の生活援護課の職員も同席していたという。
(2人が訪れた飲食店の店主)
「容疑者が無理やり(区の職員に)『お前も入ってこい』みたいな。自分だけビールとか頼んで『2人は水でええから』みたいな」
唐田さんと職員には何も注文させなかったという楠本容疑者。突然、店主に“あること”を尋ねた。
(2人が訪れた飲食店の店主)
「『すみません、ここのお店カメラ付いていますか?』って言われたんですよ。だから『付いていませんけど付いていたらなんかあるんですか?』って私が逆に聞いたんですよ。それを言った瞬間に、そのおじいちゃんの胸ぐらを掴みにいったから、私は『店の中でそういうことはやめてください』って言ってすぐ止めたんです。24歳の男の子(区職員)は止める様子が全然なかったからびっくりした。普通やったらすぐ止めるでしょ」
区の職員は楠本容疑者が唐田さんに暴行するのを黙認していたというのだ。警察はこうした被害について区から一度も相談がなかったとしている。今年1月、一連の対応について区は会見を開き、こう説明した。
(堺・中区 西川明尚区長)
「いざこざの一環として認識していた職員、これは致し方ない部分があるのかなと。決して見過ごしたり、静観したり、見て見ぬ振りをしたりしたということはございませんので」
楠本容疑者の行動を「いざこざの一環」として処理した区の対応は適切なものだったと言えるのか。
行政書士「とにかく普通ではない」…区に提出された『空白だらけの申請書』
区と楠本容疑者の関係を調べる中で、取材班は楠本容疑者が去年6月に区に提出した“ある申請書”を入手した。それは、生活保護の受給者が運転免許の取得費用を支給してもらうために区に提出する書類だが、ほとんどが空欄になっている。だが、区はこの書類で審査を通して約26万円を支給した。
生活保護に詳しい三木ひとみ行政書士に見てもらうと次のように話した。
(ひとみ綜合法務事務所 三木ひとみ行政書士)
「いくら収入が得られるかっていうのもわからないですし、通常はもっとハードルが高いので、こんな簡単な資料でそもそも支給されたっていうことが、行政書士としては驚いています。書かなければいけない部分が空欄になっているし、この申請書だけ見ても、この支給が不適切あるいは不自然あるいはずさんだったのか、とにかく普通ではないっていうことはわかります」
書類送検前の職員を直撃「不適切な金の流れはない」「申請書自体には問題ない」
なぜ、ずさんな申請が通ってしまったのか。取材班は区役所で対応にあたり書類送検された係長を直撃した。
(記者)「楠本容疑者に特別扱いしたということはないですか?」
(係長)「それはないです。全くないです」
(記者)「不適切な金の流れはない?」
(係長)「ないです。ちょっと上司に相談しますね。いきなりなんなんですか」
(記者)「では、いっさいそうした特別扱いはないんですね?」
(係長)「ないです。それは絶対ないですから。勤務時間外にやめてください」
(記者)「区役所側が暴行を見逃した結果、人が亡くなっているんですよ?それに関してはどう思っているんですか?」
(係長)「上司を通して言ってください、本当に」
「楠本容疑者への特別扱いはない」と否定。取材に応じようとはせず、逃げ去ってしまった。そこで、この職員の上司らに取材を申し込むと「インタビューに応じる」と回答があった。取材に応じた課長(55)と課長補佐(44)も背任の疑いで書類送検された職員だ。
(記者)「申請書と採用通知書には問題はないでしょうか?」
(課長補佐)「申請書自体には問題ございません」
(記者)「採用通知書についてはどうですか?」
(課長補佐)「こういうものがあるんだなと思います」
少し黙った後に「書類に不備はない」と断言した。
(記者)「こういった申請に関して誰か1人を特別扱いするようなことはないですか?」
(課長)「ございません」
(課長補佐)「ございません」
警察は今年3月、中区役所で家宅捜索を行い、区の職員4人を3月20日に書類送検した。実務にあたった係長と係員の2人は調べに対して容疑を認め、係長は「これまで楠本容疑者の対応に手を焼いていたので、対応をしなくてもいいようにしたかった」などと話しているが、上司である課長と課長補佐の2人は否認している。
さらに、課長補佐は唐田さんへの暴行容疑でも書類送検されている。唐田さんが死亡する10日ほど前の防犯カメラに、課長補佐が唐田さんに暴行する様子が映っていたという。課長補佐は調べに対して「唐田さんのトラブル対応のために長時間拘束されて苛立ったため暴行をした」と容疑を認めている。
警察は職員らが楠本容疑者への対応を面倒に思い忖度したとみて捜査を進めている。
被害者の弟「役所が普通の対応をしていたら兄貴の命はあった」
唐田さんの弟は、区役所の不適切な対応が殺人事件の根幹にある、と訴える。
(唐田健也さんの弟)
「許せないですよ。俺は楠本容疑者も許されへんけど役所も許されへん。俺は楠本容疑者というより役所が許されへん。役所がちゃんと普通の対応をしていたら兄貴の命はあったんやから。思うでしょ。役所がちゃんと対応していたら兄貴の命はあったと思うでしょ」
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時代で意味が変わる「了解いたしました」問題。嘘マナー?最適解は?
2021年03月22日
1990~2000年ごろ 神垣あゆみさんという方が「了解しました」に違和感を抱いたことが始まりとされている。