東洋と西洋の文明は800年周期で交代する説とは
- 日本の文明研究家・村山節氏が提唱した「文明法則史学」に基づく理論であり、世界の文明は約800年ごとに東洋と西洋で隆盛と衰退を交互に繰り返すとされます。
理論の概要
- 世界文明には約1600年の盛衰サイクルがあり、その中で800年ずつ「高調期(繁栄期)」と「低調期(衰退期)」が交代する。
- 東洋(中国・インド・日本など)と西洋(ヨーロッパ・エジプトなど)は逆位相の関係にあり、一方が繁栄すると他方が衰退する構造になっている。
- この交代は、世界史の中心地やパワーバランスの変化として現れるとされます。
歴史的な例
時 代 区 分 | 東 洋 の 繁 栄 | 西 洋 の 繁 栄 |
紀元前400年〜西暦400年 | 西洋(ギリシャ・ローマ) | 東洋(中国:漢など) |
400年〜1200年 | 東洋(唐・宋など) | 西洋(暗黒時代) |
1200年〜2000年 | 東洋(停滞・衰退) | 西洋(ルネサンス〜近代) |
2000年以降 | 東洋(再び繁栄?) | 西洋(衰退?) |
- 例えば、1200年頃から西洋がルネサンスや産業革命で急速に発展し、東洋は元・明・清と続き近代になると欧米列強の影響で衰退しました。
- 21世紀はこのサイクルの交差点にあたり、西洋の衰退と東洋の台頭が同時に進行しているとみなされることが多いです。
現代への示唆
- この理論に従えば、現在は西洋文明の800年繁栄期の終わり、東洋文明の新たな繁栄期の始まりに位置しているとされます。
- 実際に中国の経済成長やアジア諸国の台頭などが、こうした「文明交代」の現象と重ねられることもあります。
注意点
- この説は歴史の大きな流れを単純化した仮説であり、学術的に広く認められているわけではありません。あくまで文明史のパターンを読み解く一つの見方です。
「西洋と東洋はおおよそ800年ごとに繁栄と衰退を繰り返している。その流れは約1600年で一巡し、まるでDNAの『二重らせん構造』のように動いている」
このように、「東洋と西洋の文明は800年周期で交代する」という説は、歴史を大局的に捉えるユニークな視点として紹介されています。
似たような学説・文明周期論
- 東洋と西洋の文明が周期的に交代するという村山節の「文明法則史学」や800年周期説に類似した学説は、世界の比較文明論や歴史哲学の中で複数存在します。
主な類似学説
- オズワルド・シュペングラー『西洋の没落』・・・文明は生物のように誕生・成長・衰退・死滅というサイクルを持つとした。彼は西洋文明の終焉を予言し、他の文明との交代を示唆しました。
- アーノルド・トインビーの文明論・・・文明は「挑戦と応答」のサイクルで発展・衰退を繰り返すとした。彼も複数の文明が歴史の中で興亡を繰り返すという周期的な見方を持っています。
- ニコライ・ダニレフスキー・・・文明ごとに独自の発展サイクルがあるとし、欧州中心史観を批判した。
- ジャンバッティスタ・ヴィーコの歴史循環論・・・歴史は「神の時代」「英雄の時代」「人間の時代」というサイクルを繰り返すとした。
- 伊東俊太郎の「五段階革命説」・・・人類史を「人類革命」「農業革命」「都市革命」「精神革命」「科学革命」という大きな変革期で区分し、各文明がこれらのサイクルを経験するとした。
比較表
学 説 名 | 周期性 ・ 交代の主張 | 代 表 者 |
文明法則史学 | 約800年ごとに東西で交代 | 村山節 |
西洋の没落 | 文明は生物のように盛衰サイクル | シュペングラー |
文明の興亡 | 挑戦と応答のサイクルで興亡 | トインビー |
ロシア文明論 | 文明ごとに独自の発展サイクル | ダニレフスキー |
歴史循環論 | 神・英雄・人間の時代の循環 | ヴィーコ |
五段階革命説 | 五つの革命期で文明が変遷 | 伊東俊太郎 |
補足
- これらの学説は、周期や交代の年数・文明の単位・交代のメカニズムなどに違いはありますが、「文明や歴史は直線的でなく、一定のリズムやサイクルで変化する」という共通した発想があります。
- 村山節の800年周期説は、こうした比較文明論の日本的発展形ともいえます。
まとめ
- 「東洋と西洋の文明が周期的に交代する」という見方は、世界の比較文明論や歴史哲学の中でも繰り返し現れており、シュペングラー、トインビー、ヴィーコ、ダニレフスキー、伊東俊太郎らの理論が代表例です。
800年に一度の「文明交代」がやってくる コロナ後のニッポン
- 小西昭生著『800年に一度の「文明交代」がやってくる――コロナ後のニッポン』(Clover出版、2020年)は、新型コロナウイルスのパンデミックを契機に、現代社会が大きな文明の転換点に立たされているという視点から、今後の日本と世界の行方を論じた書籍です。
本書の主な内容と構成
文明交代の800年周期説
- 著者は「文明法則史学」に基づき、東洋と西洋の文明が約800年周期で興亡を繰り返していると述べています。
- いまは西洋文明の800年周期の終わりにあたり、新たな「文明交代」が始まる節目だと位置づけています。
- 具体的には、物質文明の衰退と精神文明の台頭が起きるとし、コロナ禍をその象徴的な出来事と捉えています。
主なキーワードと変化
- 物質文明から精神文明へ(モノからココロへ)
- 精神文明は「還元・共生型の文明」(征服から共生へ)
- 知識から智慧へ
- 信用の基準がお金から人へ(言行一致・人相・見かけ)
六部構成の内容
- 資本主義の軌跡とその先の時代
- 天象・気象の変化と地球規模の浄化
- 心の教育・真人間の生き方
- 経済システムと日常生活の変化
- 平和に暮らすヒント
- 日本国の黙示録(既存の統治機構の崩壊と新しい総意形成の仕組み)
著者の主張とメッセージ
- コロナ禍は資本主義の終焉を示す転換点であり、今後は「精神文明」への移行が進むとしています。
- 物質的な価値観の限界が露呈し、人間同士の信頼や共生、智慧の共有が重視される社会が到来すると強調しています。
- 日本はこの文明交代の中で大きな役割を果たしうるとし、読者に新しい時代の生き方や価値観を考えることを促しています。
評価と特徴
- 本書は「人類の運命」や「世界平和の回復」をテーマに、混乱の時代に希望と指針を与えることを意図しています。
- 歴史的な文明の周期、コロナ後の社会変化、精神性の重要性など幅広いテーマを扱い、具体的な生き方や社会システムの提案も含まれています。
- 歴史の興亡を数学的に分析する試みを展開した著作です。本書は、歴史を自然科学のように扱い、社会や国家の盛衰を数理モデルで説明しようとする「Cliodynamics(クリオダイナミクス/歴史動力学)」という学際的分野の代表的な一冊です。
主な内容と理論
1. 地政学的アプローチ
- 国境や地形が国家の興亡にどのように影響するかを分析。
- これだけでは歴史の繰り返しを十分に説明できないことが示されます。
2. 集合的連帯(Collective Solidarity)
- 記号的に区分された集団(エトニー)が連帯して行動する力に注目。
3. メタエトニー辺境理論
- 「エトニー」と呼ばれる集団の連帯力が国家拡大・衰退の鍵とする新理論を提案。
- 歴史データと照合し、高い説明力を持つことを示します。
4. 民族運動学
- エトニーがどのように形成され、帝国に取り込まれたり宗教改宗したりするかをモデル化。
- 「自己触媒モデル」が特に説明力が高いことを実証。
5. 人口構造理論
- 国家の人口をエリートと農民の2階級に分け、エリートの振る舞いが国家の衰退に強く影響することを明らかにします。
6. 永年サイクル
- 長期的な人口増減のサイクルが歴史上普遍的であることを、実データで検証。
7. ケーススタディ
- 上記理論をフランスやロシアの歴史に適用し、その有効性と課題を検証。
8. 動的経済史
- これらの理論を総合して「動的経済史」という新しい研究分野を提案。
目次構成(抜粋)
第1章 取り組むべき課題・問題を明らかにする
第2章 地政学
第3章 集合的連帯
第4章 メタエトニー辺境理論
第5章 メタエトニー辺境理論の実証検証
第6章 民族運動学
第7章 人口構造理論
第8章 永年サイクル
第9章 ケーススタディ
第10章 結論
特徴と意義
- 歴史の大きな流れを、数式やモデルによって再現・予測しようとする点が最大の特徴です。
- 数学が苦手な読者でも、モデルの仮定や導き出される予測を把握すれば理解できるよう配慮されています。
- 歴史学・社会学・経済学・理論生物学などの知見を融合した、極めて学際的なアプローチです。
まとめ
- ピーター・ターチンの『国家興亡の方程式 歴史に対する数学的アプローチ』は、国家の盛衰を「数式」で説明するという斬新な試みであり、Cliodynamicsという新しい歴史研究の潮流を代表する重要な一冊です。