ユーラシア・グループ 2026年 世界の10大リスク

ユーラシア・グループ 2026年 世界の10大リスクの概要

米国の調査会社ユーラシア・グループが発表した2026年の「世界の10大リスク」は、米国が自ら築き上げた国際秩序を解体し、自国内の政治体制を根本から変質させている状況を最大のリスクとして挙げています。

イアン・ブレマー氏らは、2026年を「転換点(ティッピング・ポイント)」の年と位置づけ、世界最強の国家である米国自身が、世界の不安定化を招く最大の要因になると警告しています。

以下に、発表された10大リスクの一覧とそれぞれの概要をまとめました。

2026年 世界の10大リスク 一覧

  1. 米国の政治革命(US political revolution)
    トランプ大統領が権力に対する抑制機能を解体し、政府機関を「武器化」して敵対者に差し向けることで、米国の民主主義システムが不可逆的に変質するリスクです。
  2. 電気国家としての中国(Overpowered)
    中国がEV、蓄電池、AIなどの「電気」を基盤とする次世代インフラで世界をリードし、化石燃料に固執する米国に対して技術・経済的な覇権を確立するリスクです。
  3. ドンロー主義(The Donroe Doctrine)
    モンロー主義のトランプ版です。米国が西半球(南北アメリカ)での支配権を強硬に主張し、ベネズエラへの介入や関税を通じた一方的なディールを周辺国に強いるリスクです。
  4. 包囲される欧州(Europe under siege)
    英・仏・独の政権が弱体化する中、ポピュリズムの台頭とトランプ政権からの圧力を受け、欧州の結束と指導力が失われるリスクです。
  5. ロシアの第二の戦線(Russia’s second front)
    ウクライナ支援を切り崩すため、ロシアがNATO諸国に対してサイバー攻撃や破壊工作などのハイブリッド戦争を仕掛け、直接衝突の懸念が高まるリスクです。
  6. 米国式国家資本主義(State capitalism with American characteristics)
    米国政府が国家安全保障を名目に、関税や補助金を用いて市場に深く介入し、政治的な忠誠心がビジネスの成否を左右するようになるリスクです。
  7. 中国のデフレの罠(China’s deflation trap)
    中国が内需拡大よりも政治的統制を優先し、深刻なデフレに陥る中で、安価な製品を世界中に輸出することで他国の産業を圧迫するリスクです。
  8. AIがユーザーを食い尽くす(AI eats its users)
    収益化の圧力にさらされたAI企業が、ユーザーの自律性を損なうような操作性の高いビジネスモデルを採用し、規制がないまま社会の健全性が損なわれるリスクです。
  9. USMCAのゾンビ化(Zombie USMCA)
    北米自由貿易協定(USMCA)が見直し時期を迎える中、トランプ政権の予測不能な政策変更や関税の脅しによって、協定が事実上形骸化するリスクです。
  10. 水の武器化(The water weapon)
    水不足が深刻化する中、水資源が戦略的な武器として利用され、地域間の紛争や経済的な不安定化を招くリスクです。

 

 

東側の破壊・離間工作に対し、アメリカが現実的に対応しているだけ

「東側諸国による破壊や離間工作(ハイブリッド戦)に対し、米国が現実的な対抗手段をとっているに過ぎない」という視点は、現在の国際情勢を分析する上で非常に重要な論点です。

ユーラシア・グループの見解は「米国の内政変貌が世界を不安定化させる」という批判的な側面が強いですが、一方で米政権側の論理や国家安全保障戦略(NSS)に基づくと、あなたの指摘に近い「積極的な防御と自国利益の再構築」という文脈が見えてきます。

専門的な分析として、以下の3つのポイントで整理します。

1.外部脅威への「攻めの防御」としての内政浄化

トランプ政権のロジックでは、司法省やFBIの再編は「敵対勢力(東側諸国やその影響下にあるとされる勢力)に対して脆弱になった国内機構の浄化」と位置づけられています。

特に中国やロシアによるサイバー攻撃、情報工作、知的財産の窃取といった「静かな侵略」に対抗するためには、平時の民主的なプロセスよりも、迅速で強力な執行権限が必要であるという考え方です。

これを「リスク」と見るか「現実的な防衛」と見るかは、米国の既存の制度を「守るべき資産」と見るか「更新すべき脆弱性」と見るかの違いに集約されます。

2.「ドンロー主義」による西半球の要塞化

10大リスクの3位に挙げられた「ドンロー主義」も、東側諸国(特に中国・ロシア)の進出を排除するための現実的な封じ込め策という側面があります。

中南米での中国の経済的影響力拡大や、ベネズエラ・キューバを拠点としたロシアの工作に対し、米国が自らの「庭」である西半球の支配権を再主張することで、東側の離間工作を物理的・経済的に遮断しようとする試みです。

伝統的な国際協調よりも、地政学的な「実効支配」を優先する極めてリアリズムに基づいた対応と言えます。

3.経済・技術面での脱依存と国家資本主義

リスクの6位にある「米国式国家資本主義」は、東側の経済的威圧に対するカウンター戦略です。

中国などが国営企業を通じて市場を歪めている現状に対し、米国も同様に「国家安全保障」を理由に関税や補助金を駆使して、重要なサプライチェーンを東側から完全に切り離そうとしています。

これは自由貿易という理念を捨ててでも、経済的な弱点を突かれるリスクを排除しようとする、冷徹なまでの現実主義の表れです。

ユーラシア・グループは、こうした手法が「予見可能性を奪い、同盟国を困惑させる」点をリスクとしていますが、政権側からすれば「綺麗事では東側の工作には勝てない」という確信があるのでしょう。

この「米国の強硬な自己変革」が、結果として世界の安定に寄与するのか、あるいはさらなる混沌を招くのか、2026年はその答えが出る重要な1年になりそうです。

コメント