「ウクライナの中立化とNATO不拡大の確約」でロシアによるウクライナ侵攻は防げたか?

「ウクライナの中立化とNATO不拡大の確約」したとしても「ロシア系住民を戦略的要衝に移住させる」いつもの侵略手段を用いた可能性は?モルドバ、バルト三国、中央アジア(カザフスタン北部)などが被害に遭っている

いいえ。NATOに入っていない国ほど、ロシアの軍事介入を受ける

あなたが指摘された懸念は、国際政治や歴史学の専門家の間でも非常に重要な議論の対象となっています。

ロシアが「同胞の保護」を理由に近隣諸国へ介入し、実効支配を広げる手法は「ハイブリッド戦争」や「サラミ戦術」と呼ばれ、過去から現在に至るまで繰り返されてきた戦略です。

ご質問いただいた点について、専門的な分析に基づき整理します。

ロシアによる「同胞保護」を口実とした介入モデル

ロシアには、国外に住むロシア系住民やロシア語話者を「同胞(コンパトリオット)」と定義し、彼らの権利を守るために介入する権利があるという「プーチン・ドクトリン」が存在します。

もしウクライナが中立化していたとしても、以下のようなプロセスで侵略が進められた可能性は十分にあります。

  1. 戦略的要衝への居住:ソ連時代からの国策、あるいは経済的誘因により、特定の地域(クリミア、ドンバス、トランスニストリアなど)にロシア系住民を集中させる。
  2. パスポートの配布(パスポート化):当該地域の住民にロシアの市民権を大量に与え、法的に「ロシア国民」を捏造する。
  3. 紛争の捏造:メディアや工作員を使い、現地のロシア系住民が「弾圧されている」という偽情報を流布し、社会不安を煽る。
  4. 「人道的介入」:自国民の保護を名目に、平和維持軍として軍を派遣し、事実上の領土併合や傀儡(かいらい)政権の樹立を行う。

他国における被害事例の共通点

あなたが挙げられた国々でも、同様のパターンが確認または警戒されています。

  1. モルドバ(トランスニストリア):1990年代初頭にロシア系住民の保護を理由にロシア軍が介入し、現在も「凍結された紛争」としてロシア軍が駐留、モルドバの欧米接近を阻む「楔(くさび)」となっています。
  2. バルト三国(エストニア・ラトビア):ソ連時代の移住政策によりロシア系住民が多く、ロシアは常に「少数民族への差別」を主張して政治的圧力をかけています。これに対抗するため、彼らはNATO加盟を選びました。
  3. カザフスタン北部:ロシアと国境を接する北部にはロシア系住民が多く、ロシアの政治家が「北部はもともとロシアの土地だ」と主張することがあり、カザフスタン政府は首都を南から北(アスタナ)へ移転させるなど、警戒を強めています。

中立化が「侵略の呼び水」になるリスク

歴史的に見れば、中立化や軍事的な空白は、ロシアのような拡張主義的な国家に対しては「抑止力の欠如」とみなされる傾向があります。

トランプ氏の言う「中立化による回避」が成功するためには、ロシア側が「これ以上の領土拡大を望まない」という善意に基づいていることが前提となります。

しかし、モルドバやジョージア(グルジア)の事例を見ると、NATOに入っていない国ほど、ロシアによる「ロシア系住民の保護」を口実とした軍事介入を受けやすいという現実があります。

このことから、たとえ中立化を約束したとしても、ロシアが「ハイブリッドな手段」を用いてウクライナの主権を実質的に解体し、属国化していくプロセスは止まらなかったのではないか、という分析が有力です。

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