【分析】ロシアへの圧力強める欧米、そこに水を差したトランプ氏
主な内容:
- 欧州とウクライナは、トランプ米政権が2カ月前に提案した「30日間の無条件停戦合意」をロシアに要求していた。欧州首脳は、トランプ大統領が電話会談でこの提案を支持し、ロシアが合意しなければ制裁を示唆したと明らかにした。
- しかしロシアのプーチン大統領はこの要求に一切言及せず、代わりにトルコ・イスタンブールでのロシアとウクライナの直接交渉を提案。欧米の結束は崩れ、トランプ氏はロシアの提案に歩調を合わせる形となった。
- トランプ氏は自身のSNSで「プーチン氏は停戦を望んでいない」と発信し、ウクライナのゼレンスキー大統領に「今すぐ会談をしろ」と圧力をかけた。
- その間もロシアはウクライナへの攻撃を続行。停戦要求が出された夜にも、ロシアは108機のドローンを発射し、民間人にも被害が出ている。
- 欧州首脳は、ロシアが停戦に応じなければ大規模制裁やウクライナへの軍事支援強化を示唆したが、実際にはプーチン氏に対して新たな制裁は課されていない。
- プーチン氏は、欧州とウクライナの要求を無視し、直接会談の提案をトランプ氏の立場の基盤としたことで、三重に勇気づけられていると分析されている。
- トランプ氏はロシアとの関係を損なう行動を避けており、欧州の同盟国が求める結束よりもプーチン氏との関係維持を選んだと指摘されている。
- イスタンブールでの会談が実現しても、和平や停戦には直結せず、むしろ外交的な儀式に終わる可能性が高いとされる。
- 記事は、プーチン氏が時間稼ぎをしていることをトランプ氏が見抜いていないとし、米国がプーチン氏を怒らせたくない姿勢が露呈したと結論づけている。
分析のポイント
- 欧米のウクライナ支援に対する結束は、トランプ氏の対応によって揺らいでいる。
- ロシアは欧米の制裁や停戦要求に応じず、外交的に主導権を握ろうとしている。
- トランプ氏はロシアに対して強硬な態度を取らず、欧州同盟国との足並みも乱れている。
- 停戦や和平への道筋は依然として不透明で、今後の欧米とロシアの動向が注目される。
Europe and US briefly upped the pressure on Russia over Ukraine. Trump upended that
記事の日本語要約
- 欧州とウクライナは、トランプ米政権が2か月前に提案した「30日間の無条件停戦」をロシアに求めていた。欧州首脳はトランプ大統領がこの停戦案を支持し、ロシアが応じなければ制裁を科すと警告したが、プーチン大統領は停戦要求に一切触れず、代わりにイスタンブールでのロシア・ウクライナ直接会談を提案した。
- このプーチン氏の提案により、欧米の結束は崩れ、トランプ氏はSNSで「プーチンは停戦を望んでいない」と発信し、ウクライナに「今すぐ会談しろ」と圧力をかけた。
- 欧州の首脳らは停戦実現への期待は薄いと考えており、今回の動きは欧米の結束を示すパフォーマンス的な側面もあった。しかしプーチン氏は欧州・ウクライナの要求を無視し、制裁や軍事支援の強化も現時点で実行されていない。
- プーチン氏の会談提案は以前からの主張の焼き直しであり、トランプ氏はこの提案を自らの立場の基盤とした。トランプ氏はロシアとの関係を損なう行動を避けており、欧州同盟国との結束よりもプーチン氏との関係維持を優先した。
- イスタンブールでの会談が実現しても、即時の和平や停戦にはつながらず、外交的な儀式に終わる可能性が高い。プーチン氏は時間稼ぎをしており、トランプ氏はそれを見抜けていないと分析されている。
- 欧米の対ロシア圧力は一時的に高まったが、最終的にはトランプ氏の対応によってその流れが崩れ、今後の欧州とウクライナの対応は不透明なままとなっている。
マクロン大統領 ロシアが停戦応じなければさらに厳しい制裁科すことを支持
by 李皓月
欧州の指導者たちは引き続きロシアへの圧力を強めており、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は5月13日、モスクワが停戦に同意しない場合、今後数日以内にロシアに対してさらに厳しい制裁を科すことを支持すると述べた。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、ロシアがウクライナとの停戦に応じない場合、今後数日以内にさらに厳しい制裁を科すことを支持すると5月13日に表明しました。マクロン大統領はフランスのテレビ局TF1のインタビューで「もしモスクワが停戦に応じなければ、新たな制裁を科す予定で調整を進めている」と述べ、制裁の対象として金融サービスや石油・天然ガス分野が含まれる可能性を示唆しています。
この発言は、同日にドイツのフリードリヒ・メルツ首相も同様の立場を示したことと呼応しており、欧州の同盟国がロシアに対して「大幅に強化された制裁」を発動する準備があることが強調されました。また、アメリカやイギリス、ドイツ、ポーランドの首脳もロシアに対し、停戦に応じなければ新たな懲罰的措置を科すと警告しています。
これらの動きは、欧州連合(EU)がロシアによるウクライナ侵攻開始以来、すでに16回の制裁を実施している中でのさらなる圧力強化策であり、今後の制裁には「ノルド・ストリーム2」天然ガスパイプラインの永久凍結も含まれる可能性があります。
記事の要約
2025年5月13日、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、ロシアがウクライナとの停戦に応じない場合、今後数日以内にさらに厳しい制裁を科すことを支持する意向を表明しました。制裁の対象には金融サービスや石油・天然ガス分野が含まれる可能性があります。マクロン大統領はフランスのテレビ局TF1のインタビューで「モスクワが停戦に応じなければ新たな制裁を科す予定で調整を進めている」と述べました。
同日、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相も同様の立場を示し、ロシアのプーチン大統領が停戦に同意しない場合、欧州の同盟国は「大幅に強化された制裁」を発動すると表明しました。
アメリカのドナルド・トランプ大統領もイギリス、フランス、ドイツ、ポーランドの首脳とともに、5月10日にロシアへ圧力をかけ、モスクワが数日以内に30日間の停戦呼びかけに応じなければ新たな懲罰的措置を科すと警告しました。
しかし、これらの警告にもかかわらず、プーチン大統領は動じず、5月15日にトルコ・イスタンブールでのウクライナとの対面による和平交渉を提案しました。トランプ大統領はこの提案を支持し、ウクライナのゼレンスキー大統領に交渉への出席を促し、自身も交渉に参加する可能性を示唆しました。ただしゼレンスキー大統領は、プーチン大統領本人が出席しない限り、ロシア側のいかなる代表とも交渉しないと表明しています。
ホワイトハウス関係者によると、アメリカのウクライナ特使キース・ケロッグ氏と中東特使スティーブ・ウィトコフ氏がイスタンブールでの交渉に参加する予定です。現時点でクレムリンはプーチン大統領または他のロシア高官の出席について明言していません。
欧州連合(EU)は2022年のロシアによるウクライナ侵攻開始以来、16回にわたり制裁を実施しており、今回の新たな制裁には「ノルド・ストリーム2」天然ガスパイプラインの永久凍結も含まれる可能性があると警告しています。このパイプラインは2021年に完成しましたが、2022年の戦争勃発直前から停止され、一度も稼働していません。
まとめ
- フランス、ドイツ、アメリカなど欧米首脳は、ロシアが停戦に応じなければ追加制裁を科す方針。
- 新たな制裁は金融、石油・天然ガス分野が対象となる可能性。
- プーチン大統領は停戦警告に動じず、イスタンブールでの和平交渉を提案。
- ゼレンスキー大統領はプーチン本人の出席を交渉の条件とし、アメリカ特使も交渉に参加予定。
- EUはこれまでに16回の制裁を実施し、「ノルド・ストリーム2」の永久凍結も検討中。