松井宏樹 病院組織の隠蔽・責任転嫁が問題

まとめ

兵庫県赤穂市民病院の元脳神経外科医、松井宏樹(まつい ひろき)氏は、在職中に多数の医療事故に関与したとして業務上過失傷害の罪に問われ、2026年3月に有罪判決を受けました。

この一連の出来事は、インターネット上で連載された漫画「脳外科医 竹田くん」のモデルになったと報じられています。

経歴と赤穂市民病院での活動

松井氏は2019年7月に赤穂市民病院に着任しました。

同病院に在籍した約2年間のうちに、松井氏が関わった手術では8件の医療事故が発生したと報告されています。その内容は、神経の切断による麻痺や、術後の死亡例など極めて重篤なものが含まれていました。

刑事裁判と判決

2020年1月に当時74歳の女性に対して行った腰椎の手術において、医療用ドリルで神経の一部を誤って切断し、両脚麻痺などの後遺症を負わせたとして、業務上過失傷害の罪で在宅起訴されました。

2026年3月12日、神戸地裁姫路支部は松井氏に対し、禁錮1年・執行猶予3年(求刑:禁錮1年6か月)の有罪判決を言い渡しました。

判決では、止血が不十分で視界が悪い中での執刀継続を「基本的な注意義務違反」と認定する一方、経験不足の医師をバックアップできなかった病院側の体制についても言及されました。

民事訴訟とその後

民事裁判においては、2025年5月に松井氏と赤穂市に対し、合計約8800万円の損害賠償を命じる判決が下され、確定しています。

松井氏は2021年8月に赤穂市民病院を依願退職した後、別の病院(吹田徳洲会病院など)でも勤務していましたが、現在は退職しており、公判時には「無職」であると述べています。

 

 

本人の問題が最も大きい。しかし所属する病院や関係者、医師会などは状況を把握していてもたらい回しにして責任を回避していたのではないか?

病院側の体制の不備が背景に

まとめ

この事件では執刀医個人の資質だけでなく、病院組織のガバナンス欠如や、事故後の隠蔽・責任転嫁とも取れる対応が極めて大きな問題として浮き彫りになっています。

第三者委員会や学会からは、病院の安全管理体制が機能していなかったこと、不適切な手術が繰り返されるのを組織として阻止できなかったことが厳しく批判されています。

病院組織のガバナンス欠如

赤穂市民病院の「ガバナンス検証委員会」の報告書(2023年3月)では、以下の点が指摘されています。

  1. 指揮命令系統の不全:病院全体として、医療事故が発生した際に行うべき適正な対応の認識が欠如していました。
  2. 手術禁止命令の形骸化:院長が執刀医に対し、2020年3月から手術や侵襲的検査(体に負担のかかる検査)を禁止する指示を出していましたが、その後も複数の検査が強行され、組織としてそれを止めることができませんでした。

責任の回避と隠蔽への疑念

事故後の対応についても、組織的な責任回避の姿勢が批判の対象となっています。

  1. 過失認定の消極性:病院側は、松井氏が関わった8件の事故のうち、刑事裁判の対象となった1件のみを「医療過誤」と認め、残りの7件については「過失はない」との立場を崩していません。これに対し、被害者側や学会からは再検証を求める声が上がっていました。
  2. 認定停止処分:日本脳神経外科学会は、同病院の安全管理体制に「重大な懸念」があるとして、専門医訓練施設の認定停止処分を下しました。これは、病院側の総括が不十分であることを専門機関が公式に認めた形となります。

他病院への移動(たらい回し)の問題

松井氏が赤穂市民病院を退職した後、吹田徳洲会病院に採用され、そこでも医療トラブルに関与したと報じられたことは、医師の「リピーター(事故を繰り返す医師)」に対する情報共有の不備を露呈させました。

  1. 情報共有の欠如:過去に多数の事故を起こした医師が、その事実を伏せたまま(あるいは病院側が精査せずに)別の病院で再び執刀を続けることが可能な現状があり、これが「たらい回し」や「責任の先送り」と批判される要因となっています。
  2. 医師会の役割:医師会や厚生労働省による「リピーター医師」に対する再教育や免許の制限といった仕組みが十分に機能しておらず、現場の自浄作用に任されていることが、抜本的な解決を遅らせているとの指摘があります。

裁判での主張

2026年3月の刑事裁判において、松井被告自身も「自分一人の責任にされるのはおかしい」と述べ、バックアップできなかった病院側の体制や上司の責任に言及しています。

判決においても、医師個人の過失を認めつつ、未熟な医師を指導・管理できなかった病院側の体制の不備が背景にあることが明示されました。

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