アレルギー患者は増えているのか?
患者は増えている。日本では国民の約3人に1人が何らかのアレルギー疾患を抱えているとされ、特に子どもの食物アレルギーは過去20年間で数倍に増加しているという調査もある。花粉症や喘息、アトピー性皮膚炎なども増加傾向が続いている。増加の背景には、アレルゲンの増加(スギ花粉やダニの増加)、食生活の変化、環境汚染、衛生仮説(衛生環境の改善により子どもの免疫調節が不十分になる)など複数の原因が考えられている.
具体的には、戦後のスギ大量植林でスギ花粉が増えたことや、住環境の良化によりダニが増えたこと、食生活の欧米化、環境中のアジュバント物質の増加が影響している。加えて、子どもが幼少期の感染機会が減ったことで免疫系のバランスが崩れやすくなり、アレルギーが増えやすくなっていると説明されている.
日本の現状では、アレルギー患者の増加は社会的にも問題視されており、専門医不足などの医療体制の課題も指摘されている.
以上から、アレルギー患者は確実に増えており、その予防と管理が重要な課題になっている。
アレルギーの原因は解明された?
アレルギーの原因については最近大きな進展があります。東京大学などの研究チームが、食物アレルギーの原因となるIgE抗体が、皮膚から抗原(例えば卵のタンパク質)が侵入した際に産生される物質PGD₂の作用により誘導される仕組みを世界で初めて解明しました。特に、皮膚の損傷部位から抗原が侵入しPGD₂の産生が増え、これが免疫細胞の受容体を刺激してIgE抗体の産生を促進し、アレルギー発症につながると判明しました。また、このPGD₂シグナルを阻害する薬剤を皮膚に処置することでアレルギー発症を抑制できる可能性も示されています。これは乳幼児の皮膚炎などアレルギーリスクの高い子どもへの早期介入に効果的な治療・予防法開発への期待につながっています。
加えて、東京理科大学の研究からは肺の共生細菌の変化がIgE抗体の産生を誘発することも分かっており、これもアレルギー発症に関与するメカニズムの一部として注目されています。
このようにアレルギーの発症には皮膚からの抗原侵入による免疫反応と、体内環境の細菌バランスの両方が関わっており、これらのしくみの解明が進んでいます。これらの研究成果は新しい治療薬や予防法の開発を促進し、今後のアレルギー疾患のコントロールに大きな役割を果たすと期待されています。
2025年10月06日 「かゆい、かゆい」3歳が耳かき一杯で救急搬送 “重症化”しやすいナッツアレルギー 外食に潜むリスクと支える家族
この記事は、急増するナッツアレルギーの現状と、家族が抱える課題を描いた報道である。内容は大きく次の5点に整理できる。
- ナッツアレルギーの現状
クルミやカシューナッツなどのナッツ類による食物アレルギーが、子どもを中心に急増している。過去12年間で症例数は約10倍に増え、卵に次ぐ多さとなった。特に3〜17歳ではクルミが主要原因となっている。日本人のナッツ消費量の増加が背景とされ、少量でも重いアナフィラキシー症状を起こしやすい。 - 家族の対応と生活の負担
3歳のときに「耳かき一杯」ほどの量で発症した子どもを持つ家庭では、母親が家事リストを作成し、ぬいぐるみの洗濯など徹底した衛生管理を行っている。母親は看護休暇を活用して仕事と育児を両立しているが、職場では理解を得られず「仕事を辞めたら」と言われた経験もある。 - 経口免疫療法への挑戦
ナッツアレルギーを克服するため、少量ずつ食べて耐性をつける「経口免疫療法」に挑戦する様子も紹介されている。例えばクルミ入りチョコレートを自宅で少量食べながら進め、病院で専門医の管理下でも実施している。少しの量でも体調変化を伴うため、慎重さが求められる。 - 外食時のリスクと制度の限界
外食ではアレルギー表示が義務づけられておらず、店員や調理工程でのナッツ混入(コンタミネーション)により事故が起きるリスクがある。パッケージ食品には表示義務が進んでいる一方、外食や洋菓子店など「店内調理食品」は対象外となっている。 - 表示制度化への課題
消費者庁は、外食産業は事業規模や原材料が多様なため、統一ルール化が難しいと説明。専門医は、患者団体などが行政に働きかけることで社会的機運を高め、政府が主導すれば改善が進む可能性があると述べている。
全体を通じ、記事は「急増するナッツアレルギー」と「対応が追いつかない制度」、そして「家族の負担」を軸に、社会全体に支援と理解を求める内容となっている。
2023年10月11日 花粉症被害軽減へスギ伐採・植え替えの重点区域を今年度中に設定へ 政府関係閣僚会議で対策全体像まとまる
政府は2023年10月11日、花粉症対策の関係閣僚会議で「初期集中対応パッケージ」をまとめ、今年度中にスギ人工林の伐採・植え替えを重点的に行う区域を都市部周辺から設定する方針を決定しました。
発生源対策
- 都市部周辺から優先区域を選定し、スギ人工林を伐採・植え替え
- スギ材需要拡大のため、工場や保管施設の設備支援
- 花粉の飛びにくい苗木の生産拡大
飛散対策
- 国のスギ花芽調査対象拡大
- 民間事業者への詳細な予測情報提供
発症・曝露対策
- 舌下免疫療法の普及促進
- 2025年以降、治療薬生産量を倍の50万人分に増加
岸田総理は、このパッケージを経済対策に組み込み、必要な予算を確保し確実に実行するよう閣僚に指示しました。
卵・乳・小麦・そば・落花生・えび・かに
牛肉・鶏肉・豚肉・ごま・くるみ・カシューナッツ・あわび・さば・さけ・いか・いくら・りんご・キウイフルーツ・バナナ・もも・オレンジ・まつたけ・やまいも・大豆・ゼラチン
こんなにあるアレルギーの病気
主なアレルギー疾患
- アトピー性皮膚炎
- 気管支ぜん息
- アレルギー性鼻炎
- 食物、薬物、金属アレルギー
- アナフィラキシー
増えているアレルギー疾患・・・戦後、日本人の生活及び生活環境は大きく変わりました。食事は西洋風になり、住宅も昔ながらの通気性のよい住まいから、マンションのような密閉性の高いものへと変化してきました。さらに、工場の煤煙や車の排気ガスなどの大気汚染の問題もあります。こうした生活環境の変化は、アレルギー疾患の原因となりうるものばかり(図3参照)。実際にこの数十年の間に、アトピーや花粉症、気管支ぜん息などのアレルギーで悩む人は、大変な勢いで増えました。
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