中国系格安ECのビジネスモデルの危機

米ネブラスカ州、Temuを提訴 個人情報の不正取得や虚偽表示の疑い

概要

  • 2025年6月12日、米ネブラスカ州のマイク・ヒルガーズ司法長官は、中国系格安通販サイト「Temu(ティームー)」とその関連企業を州の消費者保護法違反で提訴しました。主な訴因は、個人情報の不正取得や商品に関する虚偽表示などで、これらの行為が州民や地元企業に深刻な影響を及ぼしているとされています。

主な訴訟内容

1. 個人情報の不正取得

  • Temuはスマートフォン向けアプリを通じて、ユーザーの同意なしに広範な個人データを収集していた疑いがある。
  • 一部ではマルウェアとみられるプログラムを用いて端末のセキュリティを回避し、利用者の端末に無制限にアクセスしていたケースも指摘されています。
  • 収集されたデータにはマイク音声、メッセージ、写真、利用者の行動追跡を十分可能にする情報が含まれ、これらが中国共産党当局に提供されるおそれがあると州側は深刻な懸念を示しています。
  • 中国の法律では、企業が政府の要請に応じて利用者の個人情報を提供する義務があり、さらにその事実を隠蔽しなければならないと定められています。

2. 商品に関する虚偽表示

  • Temuのサイトでは、商品の品質や説明が実際と異なるケースが多数確認されています。
  • 商品画像や紹介文が誤解を招く内容であったり、高評価レビューの操作疑惑、実際より高い「参考価格」を表示して値引き販売を装う手法も問題視されています。

3. 知的財産権の侵害

  • ネブラスカ州に拠点を置く企業や大学のロゴなどを無断で使用した商品が「正規品」として販売されていた事例もあり、知的財産権侵害に該当するとしています。
  • 「地元製」と表示しながら実際は海外生産の商品もあったことが明らかになっています。

州の対応と今後

  • ヒルガーズ長官は「Temuはネブラスカ州民のプライバシーを危険にさらしている」と警告し、オンライン市場の誠実性と安全性を守るため、違法行為の差し止めや被害者救済、制裁措置を求めていく方針を示しています。

背景と社会的意義

  • この訴訟の背景には、中国企業が中国共産党への忠誠を義務付けられている点や、米国民の個人データが中国当局に提供されるリスクへの懸念が強くあります。自由社会におけるプライバシー保護と、グローバルなEC市場の信頼性確保が問われる事案となっています。

前月比58%減 Temu米国ユーザー激減と免税撤廃の影響

米国の小口免税撤廃によるTemuへの影響

  • 2025年5月、米国政府は中国・香港・マカオからの小口輸入品(De Minimis、800ドル未満)に対する免税措置を撤廃し、これによりTemuの米国ユーザー数は前月比58%減と急激に落ち込んだ。
  • この免税撤廃はTemuやSheinなど中国系格安ECのビジネスモデルに直接打撃を与え、Temuの業績も大きく悪化。親会社PDD Holdingsの四半期利益は前年同期比47%減少した。
  • 関税負担の増加により、Temuは価格競争力を大きく損ない、売上や顧客増加率も急落。特にTemuの減少幅がSheinを上回るとされる。
  • 米国以外でも規制強化の動きが拡大。G7や日本、EUでも小口免税制度の見直しや課徴金導入が議論されており、Temuは他国市場への展開を加速させているが、各国での規制強化が今後のビジネスモデル存続に大きな影響を及ぼす見通し。

まとめ

米国の小口免税撤廃をきっかけに、Temuは米国でユーザー数・業績ともに大幅悪化。世界的な規制強化の流れを受け、TemuやSheinなど中国系格安ECのビジネスモデルが根本から問われる局面に直面している。

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