Temuはアメリカから撤退 東南アジア市場に向かう

中国

 

図々しい国、中国

2025年10月08日 米国から東南アジアにシフトするTemu。セミホスティングモデルで現地業者の共存をはかる

  • 中国の越境EC大手Temuがアメリカでの成長鈍化を受け、東南アジア市場へ戦略的にシフトしている現状を分析している。

米国市場での失速

  • Temuは、米国で商品価値800ドル以下の小包に関税を課さないde minimis規定を利用して低価格販売をしていた。しかしトランプ政権による規定廃止と追加関税により、2025年5月のグローバル月間アクティブユーザー数が前年比28%減少した。米国での事業環境悪化により成長が止まった形となる。

東南アジアでの拡大と成果

  • Temuは方針を転換し、東南アジア市場で広告投資とユーザー開拓を強化。特にフィリピン、タイで急拡大し、同地域でのアクティブユーザー数は2200万人を超え前年比87%の成長を達成している。

成長を支えるセミホスティングモデル

  • 急成長の背景には、2025年2月から導入されたセミホスティングモデルの存在がある。従来のフルホスティングはTemuが物流・通関などを一括で請け負う仕組みで、価格競争力が高い反面、出店業者は利益を出しにくい問題があった。
  • 一方セミホスティングでは、業者が自力で通関・現地倉庫納品を行う代わりに販売価格を自由に設定できるため、適正利益を確保できる。また、現地の販売業者もTemuプラットフォームに参加可能となり、東南アジアでの商品多様化と信頼性向上を実現した。

各国の規制と提携可能性

  • ただし、インドネシアやベトナムでは現地産業保護を理由にTemuの営業許可が下りていない。TikTok ShopがインドネシアでEC「Tokopedia」を買収して参入を果たしたように、Temuもインドネシア企業「Bukalapak」との提携が予想されている。

東南アジア市場の競争構図

  • 東南アジアではShopee(テンセント系)とLazada(アリババ系)が2強だが、TikTok Shop、Temu、SHEINなど新興勢が市場をかき回す存在となっている。結果として、中国資本同士の競争が東南アジアで激化する構図が浮かび上がる。

Temuは米国での規制強化により撤退傾向を見せながらも、柔軟なモデル転換で東南アジア市場を成長の新たな軸に据えたことが、この報告の核心となっている。

 

 

米ネブラスカ州、Temuを提訴 個人情報の不正取得や虚偽表示の疑い

概要

  • 2025年06月12日、米ネブラスカ州のマイク・ヒルガーズ司法長官は、中国系格安通販サイト「Temu(ティームー)」とその関連企業を州の消費者保護法違反で提訴しました。主な訴因は、個人情報の不正取得や商品に関する虚偽表示などで、これらの行為が州民や地元企業に深刻な影響を及ぼしているとされています。

主な訴訟内容

1. 個人情報の不正取得

  • Temuはスマートフォン向けアプリを通じて、ユーザーの同意なしに広範な個人データを収集していた疑いがある。
  • 一部ではマルウェアとみられるプログラムを用いて端末のセキュリティを回避し、利用者の端末に無制限にアクセスしていたケースも指摘されています。
  • 収集されたデータにはマイク音声、メッセージ、写真、利用者の行動追跡を十分可能にする情報が含まれ、これらが中国共産党当局に提供されるおそれがあると州側は深刻な懸念を示しています。
  • 中国の法律では、企業が政府の要請に応じて利用者の個人情報を提供する義務があり、さらにその事実を隠蔽しなければならないと定められています。

2. 商品に関する虚偽表示

  • Temuのサイトでは、商品の品質や説明が実際と異なるケースが多数確認されています。
  • 商品画像や紹介文が誤解を招く内容であったり、高評価レビューの操作疑惑、実際より高い「参考価格」を表示して値引き販売を装う手法も問題視されています。

3. 知的財産権の侵害

  • ネブラスカ州に拠点を置く企業や大学のロゴなどを無断で使用した商品が「正規品」として販売されていた事例もあり、知的財産権侵害に該当するとしています。
  • 「地元製」と表示しながら実際は海外生産の商品もあったことが明らかになっています。

州の対応と今後

  • ヒルガーズ長官は「Temuはネブラスカ州民のプライバシーを危険にさらしている」と警告し、オンライン市場の誠実性と安全性を守るため、違法行為の差し止めや被害者救済、制裁措置を求めていく方針を示しています。

背景と社会的意義

  • この訴訟の背景には、中国企業が中国共産党への忠誠を義務付けられている点や、米国民の個人データが中国当局に提供されるリスクへの懸念が強くあります。自由社会におけるプライバシー保護と、グローバルなEC市場の信頼性確保が問われる事案となっています。

 

 

前月比58%減 Temu米国ユーザー激減と免税撤廃の影響

米国の小口免税撤廃によるTemuへの影響

  • 2025年05月、米国政府は中国・香港・マカオからの小口輸入品(De Minimis、800ドル未満)に対する免税措置を撤廃し、これによりTemuの米国ユーザー数は前月比58%減と急激に落ち込んだ。
  • この免税撤廃はTemuやSheinなど中国系格安ECのビジネスモデルに直接打撃を与え、Temuの業績も大きく悪化。親会社PDD Holdingsの四半期利益は前年同期比47%減少した。
  • 関税負担の増加により、Temuは価格競争力を大きく損ない、売上や顧客増加率も急落。特にTemuの減少幅がSheinを上回るとされる。
  • 米国以外でも規制強化の動きが拡大。G7や日本、EUでも小口免税制度の見直しや課徴金導入が議論されており、Temuは他国市場への展開を加速させているが、各国での規制強化が今後のビジネスモデル存続に大きな影響を及ぼす見通し。

まとめ

米国の小口免税撤廃をきっかけに、Temuは米国でユーザー数・業績ともに大幅悪化。世界的な規制強化の流れを受け、TemuやSheinなど中国系格安ECのビジネスモデルが根本から問われる局面に直面している。

 

 

ピークアウトする中国 「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界
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  • 中国の経済成長の曲がり角と現代中国が直面する深層的な構造問題を解説した書籍です。

中国経済の「ピークアウト」現象は、不動産バブル崩壊と経済成長の鈍化、そして過剰供給型産業構造「殺到する経済」が限界にきている状況を指摘しています。著者は、不動産市場危機の多層的側面として、個別企業の危機や都市化の限界、新型コロナ以降の財政・金融政策の摩擦などを整理し、これまで中国経済の牽引力となってきた合理的バブル(成長率が金利を上回る状態下で長期持続するバブル)が世代間の資源移転スキームとして役割を終えつつあると論じます。

  • 不動産バブルが崩壊し経済の分岐点を迎えた現在、中国は衰退に向かうのか、再び持ち直すのかという難局を現地ルポも交えて描写しています。
  • EVの台頭による貿易摩擦、「殺到する経済」(過剰な供給力による競争激化)も重要なキーワードです。
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