オーストラリア北部に大都市が存在しない理由
- 複数の自然環境・歴史・経済・文化的な要因が複雑に絡み合っているためです。
自然環境の過酷さ
- 北部は「アウトバック」と呼ばれる厳しい内陸地帯が広がっており、年間の気温がほぼ25度以上、最高気温は45度を超えることもあります。雨季には洪水が頻発し、乾季は極度に乾燥します。
- サイクロンも非常に多く、特にカテゴリー5の強力なサイクロンが毎年2回ほど襲来します。1974年のサイクロンでは、ダーウィンの建物の95%が破壊されました。
- 土壌は農業に適さずpHは4以下。ほとんどの作物が育たず、食糧は南部から2000km以上かけて運ぶ必要があります。
- 動植物の生態系も独特で、7m級のワニなど人間の定住にはリスクがあります。
歴史・文化的要因
- 植民地時代、イギリス人が最初の都市建設地として北部ではなくシドニー(南東部)を選択し、その後も南部にインフラ投資が集中しました。北部の入植は過酷な環境や熱帯病、孤立などで何度も失敗しています。
- アボリジニの伝統的な土地利用や文化も大規模開発を難しくしており、1992年以降は北部の約50%がアボリジニの土地権利として保護されているため、同意が不可欠です。
経済・インフラの壁
- 現在でも人口が非常に少なく(人口密度は1km2あたり0.2人)、経済効率からインフラ整備への莫大な投資が見合いません。ダーウィンから主要都市への鉄道や高速道路建設には合計3兆5000億円が必要と見積もられています。
- 主要産業である資源や天然ガス、牧畜は機械化・遠隔操作(FIFO:フライインフライアウト)が進み、多くの定住者を必要としません。
- 物価・生活コスト・電気代も南部の3倍以上となっており、一般家庭にとって住みづらい状況です。
環境保護・文化的制約
- 北部は地球最古級の熱帯生態系・固有種の宝庫であり、Amazon並みの生物多様性があります。環境保護法制の影響で環境アセスメントに3~10年以上かかることも珍しくありません。
- アボリジニの聖地など文化的価値も高く、開発による損壊事件(例:2020年のリオティント社の聖地爆破)も問題視されています。
明るい側面・将来展望
- 北部には観光資源(グレートバリアリーフ、国立公園、ダークスカイツーリズムなど)があり、環境保護・文化保存と経済発展を両立する形で注目されています。
- アジアへの戦略的立地も活かし、軍事拠点・電力輸出拠点(太陽光発電)として発展する可能性もあります。再生エネルギー輸出プロジェクトは2030年稼動を目指しています。
まとめ
- オーストラリア北部に大都市がないのは、単一の理由ではなく、過酷な自然・農業不適・インフラ投資効率悪化・歴史的選択・先住民の権利と文化・環境保護政策など多層的な要素によるものです。近年は観光や再生可能エネルギー分野などで新たな可能性も生まれており、将来的に状況が変化する可能性も指摘されています。
東京の広告代理店を辞めて岩手県遠野市に移住し、遠野に伝わる郷土芸能「張山しし踊り」の踊り手として自身が「シシ」になる過程を描いています。著者は地域プロデューサーかつ作家で、『遠野物語』の異界的世界に引き込まれ、遠野の伝統文化や民俗学の聖地としての魅力・謎を身体と心で体験しながら探訪しています。
本書は「遠野物語」の世界から「シシ踊り」への没入体験、コロナ禍とお盆の過ごし方、内なる野生、魂と共に生きるという5章構成で著者の実体験と民俗学的知見を融合させています。巻末には遠野の芸能とシシ踊りに関する解説も収録。若き文化プロデューサーの10年にわたるリサーチと実践が詰まった、遠野の伝統文化を題材にした渾身のデビュー作です。
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