キルギス、アカエフ元大統領の疑惑
アスカル・アカエフ元大統領が認めた「自身の過ち」の具体的な内容は、主にクムトール金鉱山の開発における国家利益の毀損に関わる判断ミスとされています。
2021年の帰国時の証言やメディアへの発言によると、以下の点が挙げられます。
不利な契約への署名と税の免除
1992年にカナダの企業(カメコ社)と基本合意を交わした際、キルギス側に著しく不利な条件を受け入れたことを過ちとして認めています。
具体的には、カナダ側に資源利用料を含む各種税金の免除という過度な特権を与え、さらにプロジェクトの管理権を完全に相手側に委ねるという「不当な譲歩」を行ったことが国家利益を損なわせたとしています。
2003年の再編(リストラクチャリング)
アカエフ氏は、自身の最大の過ちとして2003年のプロジェクト再編を承認したことを挙げています。
この再編により、キルギス政府が保有していたクムトール金鉱山の株式比率が約25.7%も減少しました。本人の説明によれば、当時は政府当局者から「これが必要である」と説得されて承認したものの、結果としてキルギスが受け取るべき配当や利益を大幅に失わせることになったと後悔の念を述べています。
権力の乱用と怠慢
法的な文脈では、これらの判断が「職権乱用」や「過失」にあたるとされました。アカエフ氏は、国家元首として十分な監視を行わず、国家の利益よりも外国企業の利益を優先させるような決定を最終的に下したことについて、国民に対して謝罪と反省の意を表明しました。
この「自身の非を認め、捜査に全面的に協力したこと」が、その後の刑事訴追取り下げの大きな要因となりました。
カナダ企業カメコの非道
カメコ社の行動に対する専門的な分析
カメコ社が「怪しい」かどうかについては、当時の国際的なビジネス慣習と、キルギスという新生国家の特殊な状況を切り分けて考える必要があります。
専門家や調査機関の視点からは、カメコ社の行動には以下の二面性が指摘されています。
圧倒的な交渉力の差を利用した「略奪的」側面
1992年当時、ソ連から独立したばかりのキルギスには、国際的な契約や採掘権に関する法整備も専門知識もほとんどありませんでした。
カメコ社はこの知識の格差(情報非対称性)を最大限に利用したと批判されています。
リスクの転嫁: 投資リスクを理由に、資源利用料や法人税の免除など、通常の国際基準では考えられないほどの優遇措置を勝ち取りました。
閉鎖的な合意: 入札を行わず、アカエフ政権との直接交渉で独占権を得たプロセスは、国際機関からも不透明であると非難されました。
汚職の「道具」としての側面
カメコ社自体が直接賄賂を渡したという法的な証拠は確定していませんが、同社が起用した仲介者たちの動きは極めて不透明でした。
特に、仲介役のボリス・ビルシュタイン氏(シーベコ・グループ)は、当時の政権幹部と密接に癒着しており、彼を通じて不適切な資金が流れたという疑惑が根強く残っています。
カメコ社は「現地の商習慣に従った」という姿勢を崩しませんでしたが、結果として独裁的な政権の腐敗を助長し、それを利用して巨額の利益を得たという「道義的な責任」は免れません。
結論としての評価
現代の企業の社会的責任(CSR)やコンプライアンスの基準に照らせば、カメコ社の手法は極めて「不透明で不公正」であったと評価せざるを得ません。
しかし、当時のカメコ社からすれば、政情不安な途上国への投資リスクを回避するために、現地の最高権力者に食い込み、自社に極端に有利な条件を引き出すのは「有能なビジネス戦略」であったという見方もできます。
この「ビジネスとしての合理性」と「国家利益の搾取」の境界線が曖昧であったことが、今もなお真相を不透明にしている原因と言えます。

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