中国は「台湾有事は日本有事」のやりとりによって出鼻をくじかれた

中国は「台湾有事は日本有事」のやりとりによって出鼻をくじかれた?

  • その感覚は正しい。日本政府、とくに高市早苗首相が「台湾有事は日本有事」と公言したことで、中国側の対日戦略は一気に“外交的口実”を得た状態になった。言葉としての「抑止」にならず、逆に習近平の強硬姿勢を正当化する燃料になったとも言える。

なぜ“出鼻をくじかれた”のか

  1. 日本が自ら「前のめり国家」の構図を作った
    台湾問題で明確に踏み込んだことで、中国は「日本がアメリカの代理として台湾独立を助長している」と国内宣伝に利用した。中国外交部や人民日報が連日「日本は歴史を忘れた」と批判を強めたのはその証拠だ。
    結果、日本が静かに戦略準備を進める余地が減り、外交的柔軟性を失った。
  2. 米国に対する“利用される側”ポジションを再強化した
    同盟調整の場で、アメリカは「日本がそこまで言ったなら、後には引けない」として一部軍事統合計画を前倒しした。つまり日本は、発言によって自主性ではなく「先に立場を固定化された」。
  3. 中国は“正当防衛”の物語を手に入れた
    習近平は国内の保守派や軍への統制で「中国が日本の挑発に対処する」という形を演出。これは内部結束を高める道具として便利すぎる。つまり、日本の一言が中国の国内政治に“統制の口実”を与えてしまった。

冷静に見れば

  • 問題は発言内容そのものではなく、「タイミング」と「外交設計の順序」だ。
    抑止の本質は、言葉ではなく相手が攻めるリスクを冷静に計算して思いとどまることにある。しかし日本は“抑止の演出”を優先し、“抑止の設計”を後回しにした。

今後の教訓

  • 言葉の力は外交では「発射すれば戻らない弾丸」。発言前に、出口戦略と同時に使うべき。
  • 「意志」を見せるより、「選択肢を持っている」ことを示す方がはるかに賢明。
  • 特に対中戦略では、“沈黙の強さ”が最も効く。

つまり、高市発言は抑止のつもりで放たれたが、戦略的には「中国の強硬を促すブーメラン」だった。出鼻をくじかれたのは日本ではなく、実は日本政府自体の“外交運用の未熟さ”と言える。

 

 

中国は内々に「台湾侵攻」を計画していたと思うか?

  • 答えから言おう。はい、計画している。だが「本気で実行するつもりがあるか」と「その能力と確率がどの程度か」は全く別の話だ。
  • 中国の軍事・政治構造を見れば、台湾侵攻シナリオは「存在して当然」の国家計画だ。だがそれは「実行するための計画」ではなく、「いつでも脅威として使える計画」でもある。以下はその現実的な3層構造だ。

1. 軍の立場:作戦計画は既に存在する

  • 人民解放軍には「統合作戦部(連合作戦指揮センター)」があり、台湾有事のシミュレーションや即応訓練は常時実施されている。
    • 上陸作戦(海軍+陸戦)
    • 封鎖作戦(海空の周囲制圧)
    • 電磁戦・サイバー攻撃(情報遮断)
  • これらは明確に一体化して訓練されている。つまり「侵攻オプション」は書類上・指揮系統上ですでに完成している。
  • ただし、これは「実際にやる」より「いつでもやれることを政治的圧力として示す」ための側面が強い。習近平が繰り返す「和平統一努力の選択肢と同時に実力行使の準備を維持する」という発言は、この二重性を示している。

2. 政治の立場:侵攻は“政治的最終兵器”

  • 習近平にとって台湾問題はレガシーであり、国家目標を象徴する看板だ。しかし実際に戦端を開けば、中国経済、共産党支配、対外関係のすべてが不安定化する。習政権が本当に恐れているのは「敗戦よりも、長期泥沼化による党支配の崩壊」だ。
  • 彼にとって台湾侵攻のカードは「実際の行動」ではなく、「威圧により譲歩を引き出すための政治兵器」。つまり「使うと負ける核兵器」のような存在だ。

3. 現実の制約:能力はまだ不十分

  • 米国防総省の最新評価でも、中国軍の空輸能力・後方支援・水陸両用戦力は台湾侵攻に必要なレベルに達していない。また、侵攻には以下の3条件が必要:
    1. 台湾内部が政治的に分裂している(親中派が内応)
    2. 米日が即応できず、政治的に混乱している
    3. 中国国内で経済・社会不満が爆発しかけ、外敵作戦が必要になる
  • 現時点(2025年)では1~3いずれも揃っていない。習は「軍が準備万端になるまで恫喝で済ませたい」という段階にいる。

結論

  • 中国は台湾侵攻を計画してはいるが、実行する覚悟も能力もまだ整っていない。むしろ本当の狙いは「侵攻の脅しを使って相手を自己抑制させる心理戦」。習近平の焦燥は「時間が足りない恐怖」ではなく、「脅しが効かなくなっていく焦り」でもある。

したがって今後の数年、日本と台湾が取るべき姿勢は「挑発せず、屈せず」。つまり、戦争の口実も、誘惑も与えない立ち回りこそが最も現実的な防衛になる。