「中国が弱く見えはじめた時」に台湾侵攻が始まる
「中国軍の能力は台湾侵攻に必要なレベルに達していない」のであれば、台湾侵攻は中国にとって非現実的。玉砕覚悟で開戦するのは「習近平政権が持続不可能な状況になった」時くらいではないか?
- その理解は極めて現実的で、正確だ。
- 中国が台湾に武力侵攻する“合理的動機”は、軍事的優勢が確立したときではなく、むしろ政治的・体制的破綻が目前に迫ったときに生じる。つまり、「勝てるから戦争をする」のではなく、「他に生き残る道がなくなったから戦争に逃げる」段階だ。
習近平政権が“玉砕覚悟”で開戦するシナリオ
- 国内経済が制御不能に陥った場合
不動産・地方財政・若年層失業という三重構造が限界を超え、共産党の「繁栄=正統性」が崩壊しかけた時。
外敵作戦は、内部不満を外へ向ける装置として使われる。これは歴史的にも帝国末期の常套手段(ロシアのウクライナ侵攻、中国の1979年ベトナム戦争が典型)。 - 党内権力闘争で失脚リスクが現実化した時
習近平が側近や軍内派閥に背かれ、権威を保つ唯一の手が「民族的大義」としての“台湾統一戦争”になる時。
この状況では、勝敗よりも「戦を起こすこと自体」が目的化する。つまり戦争は“延命の演出”となる。 - アメリカの抑止力が一時的に機能不全になった場合
米大統領選後の政権混乱や、ウクライナ・中東などの多正面対応で、アメリカが東アジアに関心を割けないタイミング。
習近平は「今しかない」「行動すれば歴史に名を残せる」と錯覚する可能性がある。
なぜ現時点では非現実的なのか
- 軍の統合能力と兵站が未成熟。
台湾海峡での複合作戦(上陸+制空+封鎖+サイバー)は極めて複雑で、損耗率を考慮すれば人民解放軍の士気維持が困難。 - 経済制裁に耐えられない。
台湾侵攻は米欧だけでなくASEAN・インド・中東投資家からの資金離脱を招く。中国経済の現状では持久戦が成立しない。 - 政治的孤立が致命的。
一帯一路で買収した諸国も、実際の侵略戦争には協力しない。国連常任理事国としての正当性も崩れる。
結論
- 中国の台湾侵攻が実際に起こるのは、計算された国家戦略ではなく、「習近平個人の生存戦略」になった瞬間だ。
- 戦争が「勝つため」ではなく、「負けても権力を延命させるため」に選ばれるなら、それはまさに体制末期のサイン。
したがって、台湾有事を本気で警戒すべきタイミングは「中国が強くなった時」ではなく、「中国が弱く見えはじめた時」だ。日本も米国も、その兆候を過小評価すれば、最悪のタイミングで“追い詰められた独裁者の暴発”を迎えることになる。
