中国人オーナーによる家賃急騰と民泊転用問題 片山さつき参議が法規制見直しを要請
問題の概要
- 東京都板橋区のマンションで、中国人オーナーによる買収後に家賃が2倍から3倍に引き上げられ、住民の約3割が退去を余儀なくされる事態が発生しています。中には、エレベーターを停止して高齢女性に退去を促すなど、強硬な手段も報じられています。家賃が7万2500円から19万円にまで跳ね上がった例もあり、既に複数世帯が退去し、さらに退去予定の世帯も出ています。
- この背景には、オーナーが住民を退去させた後、空室を民泊に転用する目的があるとみられています。実際に、無届けで民泊として運用されているケースも確認されており、住民の生活環境や安全への影響が深刻化しています。
国政での動き
- 2025年6月9日の参議院決算委員会で、片山さつき参院決算委員長(自民党)はこの問題を取り上げ、外国人による居住用不動産購入や民泊運営が地域住民に与える影響について強い懸念を表明しました。片山氏は「日本の弱い国民が常識が通用しない相手の強硬手段におびえている」と述べ、法規制の抜本的な見直しを政府に要請しました。
- また、板橋区長からも「区ではこれ以上の対応ができない。国としての対策をお願いしたい」との要望が寄せられており、国レベルでの対応が求められています。
社会的背景と課題
- 円安やインバウンド需要の高まりを背景に、都市部で中国系企業や投資家によるマンション買収と家賃高騰、住民退去、民泊転用の流れが複数発生し、社会問題化しています。
- 法制度の隙間や規制の不十分さが指摘されており、今後は外国人による不動産取得や民泊運営に関する制度の見直しが大きな課題となっています。
今後の見通し
- 政府・与党内では、インバウンド消費の重要性を認めつつも、「国民の安全・安心が損なわれることは断じてあってはならない」とし、賃貸住宅市場への外国人オーナーの影響や民泊転用問題に対する法規制強化の議論が進む見通しです。
- この問題は、都市部を中心に今後も拡大する可能性があり、国政レベルでの早急な対策と法制度の見直しが求められています。
スペインの住宅危機と政府の新たな対策
- スペインは近年、深刻な住宅不足と家賃高騰に直面しており、その主な要因として「オーバーツーリズム(観光公害)」や民泊の拡大、さらには外国人による不動産投資が挙げられています。
Airbnbに対する大規模削除命令
- 2025年5月、スペイン消費者権利省はAirbnbに対し、国内の物件約6万6000件の掲載削除を命じました。
- 対象となった物件の多くは、営業許可番号の不記載や偽造、不明確な所有者情報など、短期賃貸に関する規則違反があったためです。
- Airbnb側は異議を申し立てましたが、マドリードの高等裁判所は政府の主張を支持しています。
外国人投資家への規制強化
- スペイン政府は、EU域外の居住者による不動産購入に対して最大100%の課税を検討しています。
- この措置は、住宅供給の不足と価格高騰を招いている投機的な不動産購入を抑制するためのものです。
- さらに、一定額以上の投資で在留資格を付与する「ゴールデンビザ」制度も廃止する方針です。
地方自治体の動きと市民の反発
- バルセロナ市は2028年までに短期賃貸物件約1万件を全面禁止する方針を打ち出しています。
- マドリードやアンダルシア、カタルーニャ、バレンシア、バスク、バレアレス諸島などの観光地では、住宅不足や家賃高騰を受けて住民による抗議デモが相次いでいます。中には家賃が過去10年で80%上昇した地域もあります。
欧州全体への波及と今後の展望
- スペインだけでなく、欧州各地でオーバーツーリズムや住宅問題に対する抗議行動が計画されています。
- スペイン政府は今後3年で外国人労働者3万人の受け入れも計画しており、観光と住宅ニーズのバランスを取る政策が急務となっています。
- 「観光の受け入れと生活環境の保全はジレンマ。過度な観光の受け入れは住宅不足だけでなく、ホテルの価格上昇や交通機関の混雑なども生じさせる」
- スペインの事例は、観光立国が直面する住宅政策の難しさを象徴しています。政府は今後も、住宅の社会的供給や規制強化など多角的な対策を進めていく見通しです。
世界に広がる住宅高騰問題とアイルランドの現状
- 住宅価格と家賃の高騰が、欧州をはじめ世界の大都市で深刻な社会問題となっています。アイルランド、特にダブリンはその象徴的な例です。
アイルランドの住宅価格・家賃の現状
- ダブリンの住宅価格はEU内でも突出して高く、住宅価格の中央値は年収の8倍に達しています。
- 1ベッドルームのアパートを借りるだけで給料の大半が消えるため、多くの若者が家を買うことはおろか、独立して暮らすことも困難です。
- ダブリンの平均家賃は過去10年で2倍になり、2010年から2022年の間にアイルランド全体の家賃は84%上昇。これはEU平均(18%)を大きく上回ります。
- 住宅価格の高騰により、2022年時点で20~34歳の59%が親と同居しており、10年前の38%から大幅に増加しています。
背景にある要因
- 強い雇用市場と人口増加により住宅需要が急増する一方、住宅供給が追いついていません。
- 建設費の高騰や高金利も住宅不足を悪化させています。
- アイルランドでは、賃貸物件の供給が極端に少なく、2023年秋時点でダブリンの賃貸市場に出ている物件数は約1,800軒と非常に限られています。
- 投資目的の不動産購入や「ゴールデンビザ」政策など、国外からの投資も価格押し上げに拍車をかけています。
社会への影響
- 住宅不足と高騰は、若者の独立や結婚・出産の遅れ、出生率の低下(2012年から2022年で20%減)にもつながっています。
- ホームレス人口も増加し、2024年のアイルランドのホームレス人口は約1万4,000人に達し、ここ10年で4倍に増加。うち4,000人以上が子どもです。
- 住宅問題は中間層や貧困層の生活水準低下、富の格差拡大、政治的緊張にも直結しています。
世界的な広がり
- 住宅価格の高騰と手の届きにくさは、アメリカやオランダ、イギリス、南欧諸国など世界中の都市で共通する現象です。
- IMFの調査でも、住宅の手頃さは2008年のリーマンショック直前よりも悪化していると指摘されています。
- 「アイルランドの価格は異常だ。家を持つのは無理だ」——多くの若者がこう感じており、家を買えない問題はもはや個人の努力だけでは解決できない社会的課題となっています。
まとめ:
- アイルランドをはじめとする欧州の大都市では、住宅価格と家賃が所得の伸びを大きく上回り、若者や中間層が家を買えない・借りられない「住宅危機」が深刻化しています。この問題は供給不足、投資資金の流入、建設コストの上昇など複合的な要因によって世界的に拡大しており、今後も各国で大きな社会的・政治的課題となる見通しです。