PFASは分解されにくく体内に蓄積しやすい コレステロール値の上昇 がん

化学物質のPFASの健康被害

PFAS(ピーファス)とは

  • PFASは「ペルフルオロアルキル化合物」や「ポリフルオロアルキル化合物」など1万種類以上の有機フッ素化合物の総称で、極めて分解されにくく「永遠の化学物質(フォーエバー・ケミカル)」とも呼ばれています。主にPFOSやPFOAが代表的で、フライパンのコーティング、衣類の防水、食品包装、泡消火剤など幅広い用途で使用されてきました。

体内への蓄積と曝露経路

  • PFASは自然界や人体で分解されにくく、体内に蓄積します。主な曝露経路は、汚染された飲料水、汚染地域で獲れた魚類、工場周辺で生産された食品などです。一度体内に取り込まれると、PFOSの半減期は約9年、PFOAは約4年と推定されています。

主な健康被害

これまでの研究や疫学調査によって、以下の健康リスクが指摘されています。

  • 血中コレステロール値の上昇(脂質異常症)
  • 肝機能の変化・低下
  • 腎臓がん・精巣がんリスクの上昇
  • 甲状腺疾患
  • 潰瘍性大腸炎
  • 妊婦の高血圧症リスク上昇
  • 新生児の出生体重減少
  • 子どものワクチン効果減弱(免疫力低下)

発がん性については、国際がん研究機関(IARC)がPFOAを「ヒトに対して発がん性がある(グループ1)」、PFOSを「発がん性がある可能性がある(グループ2B)」と分類しています。

現状と課題

  • どの程度の量で健康被害が出るかは確定的な知見がなく、国際的に研究が継続中です。
  • 日本ではPFOSとPFOAの合算で1Lあたり50ngの暫定目標値が設定されていますが、アメリカでは2024年に4ngとさらに厳格化されています。
  • これまで日本国内でPFAS曝露が直接的な原因と判断された健康被害は確認されていませんが、各国で調査・研究が進められています。

まとめ

  • PFASは分解されにくく体内に蓄積しやすいことから、コレステロール値の上昇やがんリスクなど、さまざまな健康被害が懸念されています。曝露量や影響の程度については今後の研究の進展が待たれますが、予防的な対応が求められています。

永遠の化学物質 水のPFAS汚染
B0F3656VSH

内容・主なテーマ

PFAS(有機フッ素化合物)とは何か

  • PFASは、焦げつかないフライパンや撥水スプレー、消火剤、食品包装紙など、生活の身近な製品に広く使われてきた化学物質です。
  • 化学的に非常に安定しており、自然界で分解されるのに数千年かかるため「永遠の化学物質」と呼ばれています。

健康被害と環境汚染

  • PFASは発がん性が疑われており、微量でも健康被害のリスクがあるとされています。
  • 米軍基地や工場からの流出により、沖縄、東京、大阪など日本各地の水資源が汚染されています。
  • 特に沖縄では米軍基地由来の汚染が深刻で、地域住民の健康や生活に影響を与えています。

日本の対応と課題

  • 日本ではPFASの危険性認識が遅れており、厳格な規制や基準値も整備されていません。
  • 一部のPFAS(PFOA、PFOS)は使用禁止となりましたが、依然として多くの種類が規制されていない現状が指摘されています。

国際的な背景と企業の責任

  • アメリカのデュポン社によるテフロン(PFASの一種)製品の危険性隠蔽や、映画『ダーク・ウォーターズ』で描かれた企業の責任追及の実例も紹介されています。

目次構成(抜粋)

  1. PFAS、その起源と用途
  2. 暴かれた秘密、そして廃絶へ
  3. PFASは地球を汚す
  4. 日本におけるPFOA/PFOSの汚染
  5. 沖縄におけるPFAS汚染
  6. PFASがむしばむ健康――安全な水は得られるか
  7. 日本は何を、どうなすべきか―PFASから身を守るために

著者紹介

  • ジョン・ミッチェル:調査報道ジャーナリスト、沖縄タイムス特約通信員。環境問題や米軍基地問題の取材で知られる。
  • 小泉昭夫:京都大学名誉教授、環境と疾病の専門家。
  • 島袋夏子:琉球朝日放送記者、沖縄の基地問題や環境問題の報道で受賞歴多数。

まとめ

  • 本書は、PFASの起源・用途から健康被害、環境汚染、日本社会の対応の遅れ、そして今後の課題までを多角的に解説し、身近な生活用品に潜むリスクと水の安全性確保の重要性を訴えています。

ジョン・ミッチェルと「反米」評価について

  • ウェールズ生まれの調査報道ジャーナリストで、主に沖縄を中心とした在日米軍基地問題、米軍の核・化学兵器問題、環境汚染などをテーマに取材・執筆してきました。日本の主要メディアや国際的な報道機関にも寄稿しており、米国情報公開法を活用して米軍やCIAの内部文書を入手し、沖縄の米軍基地が地域社会や環境に与える影響を明らかにしてきたことで知られています。

「反米」活動家なのか?

  • ミッチェル自身は調査報道ジャーナリストとして活動しており、米軍や米政府の行動を批判的に検証する立場を取っています。
  • 彼の報道姿勢について、米軍関係者の内部文書では「報道姿勢が米軍に対し敵対的(hostile)」であり、「明確な政治的意図を持っている」と記載されていることが明らかになっています。
  • 一部の論者やブログでは、彼を「反米軍基地活動家」や「反基地活動家」と呼び、単なるジャーナリストではなく活動家であると指摘する意見も見られます。

評価と実績

  • 2015年には日本外国特派員協会「報道の自由推進賞」の報道功労賞を受賞しており、調査報道の分野で一定の評価を得ています。
  • 彼が入手した米軍・CIAの内部文書は、沖縄国際大学でも「ジョン・ミッチェル・コレクション」として公開され、学術的な資料としても活用されています。

まとめ

  • 沖縄の米軍基地問題や米軍の行動を批判的に報道することで「反米」的と見なされることがありますが、本人は調査報道ジャーナリストとしての立場を貫いています。米軍や一部保守系論者からは「敵対的」「活動家」と評される一方、報道の自由や調査報道の観点からは高く評価されています。