日本はオーストラリアとのSEA1000後継(GPF)協力継続を望むが、信頼性低下で契約凍結の可能性も示唆

2025年12月15日 日本が護衛艦技術提供の豪企業、韓国資本が筆頭株主に

  • この記事は、韓国ハンファグループによるオーストラリア造船大手オースタル(Austal)への出資をめぐる国際軍事・経済関係の動向を伝えています。内容を整理すると以下の通りです。

記事概要

  • 韓国防衛産業の大手「ハンファグループ」は、オーストラリアの造船企業オースタルの株式19.9%を取得し筆頭株主となった。これにより、韓国が事実上、米海軍やAUKUS(米英豪の安保協力枠組み)の軍需サプライチェーンへ直接参入する転換点になったとみられる。
  1. 出資の背景と承認
    オーストラリア財務省が12日に承認し、ハンファはこれまでの最大株主タタラン・ベンチャーズ(19.28%)を超えた。
    米国の対外投資委員会(CFIUS)と豪州の外国投資審査委員会(FIRB)の双方がこの取引を認可しており、CFIUSは「国家安全保障上の懸念なし」と明言。
    豪政府は、19.9%上限と機微情報アクセス制限などの条件付きで承認している。
  2. アメリカとの関係強化
    オースタルは米海軍向け小型艦船や兵站艦の製造で40〜60%の市場シェアを持つ企業。
    これによりハンファは米防衛市場への足がかりを確立した。
  3. 日本との関連と懸念
    日本の三菱重工もオースタルのパース造船所を拠点に、護衛艦「もがみ」型改良艦(豪フリゲート計画、約100億豪ドル)を建造予定。
    ただし、韓国企業の筆頭株主化による技術流出への懸念が日本側に出ている。
    豪政府は韓国防衛産業の技術力と納期遵守能力を高く評価しており、ハンファとオースタルの技術融合が双方の競争力強化につながるとみられる。
  4. 分析的視点
    この出来事は、AUKUSにおける日韓の影響力バランスにも関わる。日本が「護衛艦技術提供国」として関与を強めるなか、韓国は企業買収を通じて制度的・産業的にAUKUS圏に入り込もうとしている。
    米国・豪州の承認は、韓国の防衛産業を信頼できるパートナーと認めた象徴ともいえる。

 

 

日本政府の懸念表明詳細

日本政府はハンファのオースタル株取得に対し、正式に技術流出懸念を豪州当局へ表明した。​

外務省と防衛省は11月以降、豪国防省・財務省に書面で懸念を伝え、三菱重工業も直接パース造船所での「もがみ型」護衛艦建造計画の見直しを要請。主な懸念点はステルス設計、推進システム、電子戦装備の機微情報が韓国企業経由で流出するリスク。​

豪財務省承認(12日)後、日本側はCFIUS・FIRBの審査過程で「知的財産保護の不十分さ」を指摘したが、19.9%上限とアクセス制限条件で却下された。​

表明の経緯

  1. 11月上旬: 日本政府が豪側に初の正式書簡を送付。オースタル支配で現場管理が韓国影響下に入り、ザル管理化の恐れを指摘。​
  2. 11月下旬: 三菱重工が豪企業に直接抗議。「企業秘密共有契約の無効化リスク」を強調。​
  3. 12月8日: 日経報道で公表。豪政府に「追加審査」を要求。​

懸念詳細

懸念項目 具体的内容 根拠
ステルス技術 船体形状・レーダー吸収材の設計情報漏洩 ハンファの韓国軍需網接続リスク​
推進・電子装備 AIPシステム・C4I統合の核心データ オースタル株主権限で間接アクセス可能​
管理体制 造船所人事・運用が韓国寄り化 19.9%超で実質支配の懸念

日本は豪とのSEA1000後継(GPF)協力継続を望むが、信頼性低下で契約凍結の可能性も示唆。

 

 

2025年12月13日 豪州が承認、韓国企業がもがみ型の建造を請け負うAustalの筆頭株主に

豪政府が韓国Hanwhaの出資拡大を承認

  • オーストラリアのチャーマーズ財務相は、韓国防衛大手 Hanwha社による造船企業Austal社の持株比率を9.9%から19.9%へ引き上げる ことを承認した。このAustal社は、豪海軍向けの もがみ型フリゲート(三菱重工製造)を現地で建造する予定の企業。
  • 日本政府はこれまで「三菱重工の知的財産流出の可能性」を懸念して同件を注視しており、在豪の鈴木大使も「Hanwhaが筆頭株主になれば日本政府は何らかの対応を取る可能性がある」と述べていた。

豪政府は、

    • Hanwhaに対し情報アクセスや取締役就任への制限
    • 三菱重工の知的財産を保護する措置
  • などを条件として承認。外国投資審査委員会もこれに同意した。

各国・関係者の反応

  • Hanwha社:決定を歓迎し「条件を全面的に尊重する」と声明。これによりHanwhaは、Austal USAを通じて米国防総省の契約への関与が可能となった。
  • Austal経営陣:三菱重工の知財リスクを否定。「20%の出資では技術データアクセス権は得られない」と強調。
  • 日本側:現時点では契約締結前の「優先交渉者」段階のため、仮に交渉決裂しても違約金は発生しない。
  • 豪ABC放送:今回の決定は造船能力の強化には有利だが、日本との関係悪化を懸念する声も紹介。

背景と今後の展望

  • もがみ型フリゲートの契約は総額約100億豪ドル規模とみられる大型案件。1〜3番艦を日本で建造後、4〜11番艦をAustalが持つ西オーストラリア州ヘンダーソン造船所で建造予定。
  • Hanwhaは防衛・造船双方で存在感を拡大しており、AUKUS関連の潜水艦建造にも関与が見込まれている。一方、日本では「韓国企業の関与が技術流出につながるのでは」との懸念が強く、豪政府が提示した制限措置の実効性が焦点となる。

要約すれば、

豪州は造船基盤強化を優先しつつ、知的財産保護の条件を課して韓国資本の拡大を容認。日本は防衛装備輸出で慎重姿勢を維持し、今後の正式契約交渉に注目が集まる、という構図です。

 

 

2025年12月12日 財務相ジム・チャルマーズ氏、ハンワの造船会社オースタルへの持分倍増にゴーサイン

Treasurer Jim Chalmers gives green light to Hanwha’s double stake in shipbuilder Austal

  • オーストラリアのジム・チャルマーズ財務大臣が、韓国の国防大手ハンワのオーストラリア造船会社オースタルへの投資拡大を承認した。​

承認内容

  • ハンワは保有株を9.9%から19.9%へ倍増可能だが、少数株主にとどまり、これ以上の増加は禁止される。機密情報へのアクセス制限や取締役派遣の厳格条件が課せられ、国家安全保障を保護する。​外資審査委員会(FIRB)は10カ月超の審査後、条件付きで承認を勧告し、財務大臣もこれに同意した。​

背景と懸念

  • オースタルはAUKUS協定で重要で、米豪軍向け艦船を製造し、2030年代には日本三菱重工のモガミ級フリゲート建造も予定。日本は韓国との複雑な関係から技術流出を懸念したが、オーストラリアが知財保護を保証し外交調整で解決。​
    ハンワは以前の完全買収提案を断られ、米CFIUSからも承認を得ていた。​

影響

  • オースタルの西オーストラリア州ヘンダーソン造船所の能力強化が期待され、国内製造とサプライチェーン向上に寄与。中国海軍拡大への対抗策として同盟国間の造船協力が進む。​