トランプはしきりに利下げを要求。一方で政策は高金利が必然。言っている事とやっている事が真逆。しかし中低所得層の支持を得るためのアピールでFRBを悪者に仕立てている?国家運営として高金利政策は間違いなさそう
トランプは「利下げ」と言いながら「金利を下げられない環境」を自ら作り出す
トランプ氏の言動と現実の政策の乖離は、まさに現代の「ポピュリズム経済学」の核心を突いています。ご指摘の通り、彼のレトリックは「大衆へのアピール」と「構造的な高金利要因」が複雑に絡み合った、極めて戦略的なものです。
この矛盾の正体と、国家運営としての実態を分析します。
FRBを「共通の敵」に仕立てるポピュリズム戦略
トランプ氏が執拗に利下げを要求し、FRB(連邦準備制度理事会)やパウエル議長を攻撃するのは、中低所得層の不満を逸らすための古典的な「敵の設定」です。
- 住宅ローンとクレジットカードの負担: 物価高に苦しむ有権者にとって、金利は生活コストに直結します。トランプ氏は「私が大統領なら金利を下げて生活を楽にするが、FRB(エリート層)がそれを邪魔している」という物語を提供し、自身の支持基盤である「忘れ去られた人々」の代弁者を演じています。
- 責任転嫁の構造: 2026年の現在、彼の掲げる高関税や移民抑制策がインフレを再燃させるのは経済的な必然です。しかし、それによって金利が下がらない原因を、自身の政策ではなく「FRBの無能や悪意」に帰結させることで、政治的ダメージを回避する盾として利用しています。
政策がもたらす「必然的な高金利」という実力行使
トランプ氏の主要政策は、その一つ一つが金利を押し上げる方向に作用する「高金利パッケージ」と言えます。
- 高関税によるコストプッシュ型インフレ: 関税は輸入コストを直接引き上げます。これは、サプライチェーンを強制的に組み換えるための「実力行使」ですが、短期的には国内物価の上昇を招き、FRBはインフレ抑制のために金利を高く維持せざるを得なくなります。
- 財政赤字の拡大と「タームプレミアム」の上昇: 減税と歳出拡大の継続は、国債の乱発を意味します。ブリッジウォーターが指摘するように、市場が「誰がこの膨大な借金を買い支えるのか」と疑念を抱けば、国債価格は下落し、長期金利はさらに跳ね上がります。
国家運営としての「高金利」の受容と本音
トランプ氏の本音では、実は「強すぎるドル(=高金利)」を嫌っています。輸出競争力を高めるためにはドル安が望ましいからです。しかし、彼の進める「自国第一主義」の構造的な変革には、以下の理由で高金利が必然的に伴います。
- 資本回帰の呼び水: 米国内での製造業復活を促すには、他国から資本を引きつける必要があります。米国の金利が高いことは、世界中のマネーを米国に引き寄せる強力な磁石となります。
- 構造的インフレの容認: ブロック経済化(自国での生産)は、グローバル最適化よりもコストが高くなります。この「構造的なインフレ」を許容しながら国家運営を行う以上、金利が低水準に戻ることは極めて困難です。
結論:矛盾を抱えたままの「新常態」
トランプ氏は「利下げ」を叫びながら、その一方で「金利を下げられない環境(インフレと債務拡大)」を自ら作り出しています。これは政治的には、FRBを悪者にしながら、実態としては高金利によって他国から資本と資源を吸い上げるという、極めて「実力行使」的な国家運営の姿です。
投資家としては、彼の「利下げ要求」という言葉を真に受けるのではなく、彼の「政策実行」がもたらす長期的な金利高止まりという構造的リスクを直視する必要があります。
しかし「米国債の利払い増が国家の負担となるので、利下げを要求している」という意味では利下げしたいようにも見える
トランプは利下げしたいのではないか?
トランプ氏が利下げを要求する背景には、ご指摘の通り「膨れ上がる利払い負担」という極めて切実な財務上の理由があります。
しかし、ここには「自ら火をつけながら、消火活動を要求する」という構造的な矛盾が存在します。この「利下げ要求」と「高金利を招く政策」のジレンマを、専門的な視点から整理します。
利払い負担という「国家の時限爆弾」
2026年現在の試算では、米国の純利払い費は年間1兆ドルを超え、国防費を上回る規模に達しています。金利が1%下がるだけで、年間3600億ドル以上の支出が削減されるという計算もあり、トランプ氏にとって利下げは「最大の財政再建策」に見えています。
特に、2020年のパンデミック時に発行された低金利の大量の国債が、現在、より高い金利で借り換え(リファイナンス)を迫られています。この「借り換えコストの爆発」を抑えることが、トランプ政権の最優先課題となっているのは間違いありません。
「FRBの政治化」という実力行使
トランプ氏がFRBを「悪者」にするのは、単なる支持層へのアピールを超えた、より実利的な狙いがあります。それは、中央銀行の独立性を事実上解体し、財政政策の「集金部門」に従属させることです。
- ハト派の人事介入: 2026年にはパウエル議長の任期満了に伴い、より「忠実な(利下げに積極的な)」後任を据えることで、インフレが収まっていなくても利下げを断行させる体制を整えようとしています。
- 財政支配(Fiscal Dominance): 本来はインフレ抑制が使命の中央銀行に、政府の借金を安く賄う(利下げする)ことを強制する状況です。これは、国家が通貨価値を犠牲にしてでも生存を図る「究極の実力行使」です。
構造的な高金利と「トランプ・トレード」の真実
しかし、市場(ブリッジウォーターのような投資家)は、トランプ氏の「利下げ要求」をそのまま信じてはいません。なぜなら、彼の政策そのものが金利を押し上げる「構造的な燃料」となっているからです。
- 関税によるインフレ: 高関税は輸入品価格を上げ、国内の物価を押し上げます。
- 財政赤字の拡大: 減税と歳出拡大により、市場にはさらに大量の米国債が供給されます。
- タームプレミアム(期限の不確実性)の上昇: 「いつまでこの膨大な借金が続くのか」という不安から、投資家はより高い金利を要求するようになります。
つまり、トランプ氏が「利下げ」を叫べば叫ぶほど、市場は「将来のインフレと財政悪化」を予見し、長期金利が下がらない(むしろ上がる)というパラドックスが生じています。
結論:高金利は「間違いなさそう」という判断の妥当性
あなたが推察された通り、国家運営の実態としては「高金利」が必然的な帰結です。
トランプ氏は、口では「利下げ」を要求してFRBを叩くことで、有権者には「私は金利を下げようとしている」という免罪符を作りつつ、実態としては高金利と高関税を武器に、他国から資本を吸い寄せ、国内産業を強制的に育成する道を選んでいます。
この「言行不一致」の裏にあるのは、国家の債務問題を解決する手段として「健全な財政」を捨て、「インフレと低金利の強制(金融抑圧)」、あるいは「高金利によるドルの延命」という、より暴力的な実力行使へと舵を切った姿です。
優先順位は「サプライチェーンの強制的な国内回帰」が最上位
トランプ氏の戦略を読み解く上で最も重要な視点は、彼にとって「重商主義(自国産業の保護と貿易赤字の削減)」と「利下げ要求」は対立するものではなく、国家の富を再配分し、覇権を維持するための不可欠な両輪であるということです。
しかし、優先順位という点では、間違いなく重商主義、すなわち「サプライチェーンの強制的な国内回帰」が最上位にあります。
1. 「利払い負担」を人質に取ったFRBへの実力行使
トランプ氏が利下げを叫ぶのは、単に財政が苦しいからだけではありません。利払い負担の増大を「FRBが引き起こした人災」と定義することで、中央銀行の独立性を剥奪し、自身の重商主義政策に協力させる(=インフレを容認してでも低金利を維持させる)ための政治的実力行使です。
- 本音のロジック: 「高関税で物価が上がるのは、国内産業を復活させるための必要なコストだ。そのコストによる国民の痛みを和らげるために、FRBは金利を下げてバランスを取れ」という強引な要求です。
- 狙い: 国家の借金コストを抑えつつ、関税という武器で他国を叩く。これが彼にとっての理想的な国家運営の形です。
2. 債務供給の限界を逆手に取った「資本のブロック化」
ブリッジウォーターのレイ・ダリオ氏も指摘するように、2026年現在、米国債の供給過剰は「資本戦争」の様相を呈しています。トランプ氏が重商主義を優先し、高関税を断行することは、以下の二つの「構造的な実力行使」を意味します。
- 中立国への二者択一: 米国の市場から利益を得たいなら、米国のルール(高関税の受け入れや対中排除)に従え、という強要です。
- ドルの還流: 海外に流出していたドルを、関税や法人税減税を通じて米国内に強制的に還流させます。たとえ国債利回りが高止まりしても、米国内の資産(株式や不動産)が魅力的であれば、世界中の資本は米国に留まらざるを得ないという計算です。
3. 歴史的教訓:インフレによる「借金踏み倒し」の誘惑
歴史的に、これほどの巨額債務を抱えた帝国がとる手段は二つしかありません。緊縮財政か、インフレによる債務の目減り(実質的な踏み倒し)かです。
トランプ氏の重商主義政策(高関税、移民抑制)は明らかにインフレを誘発します。一方で、彼は利下げを要求します。この組み合わせは、「名目金利をインフレ率よりも低く抑え、借金の実質価値を削り取る」という、かつて戦後復興期に行われた「金融抑圧」の現代版を目指している可能性が高いと言えます。
結論:国家運営としての優先順位
トランプ氏にとって、米国債の利払い増は「FRBを屈服させるための口実」であり、真の狙いは「貿易と技術のブロック経済圏を完成させ、米国の産業基盤を物理的に再構築すること」にあります。
利払い負担という名目上のリスクよりも、中国との覇権争いに勝つための「構造的な作り替え」を優先しており、その過程で発生する高金利やインフレは、中央銀行への圧力と「ドルの実力行使」で乗り切れると考えている節があります。
投資家としては、彼の「利下げ要求」という言葉の裏にある「構造的な高インフレ・高金利の常態化」という現実を直視し、債券よりも実物資産(金、優良株式)に重きを置くブリッジウォーターの視点が極めて合理的であると分かります。

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