ハイパーインフレと株式投資
ハイパーインフレの状況下でも、株式投資は価値の目減りを防ぐ有効な手段とされています。インフレで物価が急激に上昇すると現金の価値は減少しますが、企業は価格転嫁により収益が増加しやすく、それに伴って株価も上昇する傾向があるためです。特に原材料メーカーなど「上流」に位置する企業は強い収益力を維持しやすく、株価上昇が期待されます。また、過去の高インフレ国(トルコやアルゼンチン)の株価がインフレ率を上回って上昇した事例もあります。したがって、ハイパーインフレ時にも株式投資はインフレ対策や資産防衛として有効視されており、適切な銘柄選択や分散投資が重要です。
ただし、すべての企業がインフレに強いわけではなく、物価上昇分を価格に転嫁できず業績悪化する企業もあるため、投資にあたっては業種や企業の収益構造をよく見極めることが必要です。また、ハイパーインフレは経済の不安定要因でもあるため、リスク分散の観点から外貨資産や不動産など他の資産を組み合わせることも推奨されています。
総じて、ハイパーインフレのような激しい物価上昇環境においても、株式投資は名目経済成長に連動して価値を保持・増加させる可能性が高い資産運用手段とされています。
トルコやアルゼンチンの株価がインフレ率を上回って上昇した。具体的なセクターは?
トルコやアルゼンチンの株価上昇で具体的に注目されているセクターは次の通りです。
アルゼンチンでは、JPモルガンの分析によると、金融セクターとエネルギーセクターが推奨されています。これは資本規制撤廃やインフレ鈍化を背景に投資家が注目しているためです。
トルコでは、食品小売業(例えばBIMビルレシッキ・マーザラル、ミグロス)に加えて、銀行(アクバンク)や航空(ターキッシュ・エアラインズ)も推奨されています。インフレ率の鈍化と利下げ局面が株価全体を押し上げている状況です。
以上のように、アルゼンチンは金融とエネルギー、トルコは食品小売、銀行、航空産業が特に株価の上昇を牽引しているセクターとなっています。
ネイピア氏: ハイパーインフレで経済がリセットすれば若者が勝者となり老人が敗者となる
ラッセル・ネイピア氏は、インフレやハイパーインフレが社会構造に与える影響について、歴史的な事例を元に論じています。
まず、日本やアメリカなど先進国は長年にわたって膨大な政府債務を積み重ねてきました。ゼロ金利政策のもとでは問題視されませんでしたが、インフレが進行し金利が上昇すると国債の利払いが財政を圧迫するようになり、根本的な解決策としては「紙幣価値の大幅な下落=インフレによる債務の実質的な帳消し」しかないという見方を示しています。
歴史的な視点から、1929年の世界恐慌や第二次世界大戦後の金融抑圧政策では、富の集中と格差が大きく修正されました。恐慌やインフレの時代には富裕層の資産価値が大きく減少し、逆に庶民や若者の環境は相対的に改善しました。特にデフレ下の金融緩和が資産家を利したのに対し、インフレ時には資産家や高齢者、預金者など資産を多く持つ人々が大きなダメージを受けます。高インフレ環境下では株式のパフォーマンスも悪化する傾向があり、預金も株も持たない若者ほど影響が軽微になります。
また、若者はもともと資産が少なく、インフレで失うものも少ない一方で、賃金上昇のチャンスや出世の伸びしろがあるため、インフレによる経済「リセット」の恩恵を受けやすいと指摘されています。賃金がインフレに追従すれば、実質的な生活水準への悪影響も限定的です。これに対し、年金暮らしで収入が固定されている高齢者層などはインフレのダメージを受けやすくなります。
ネイピア氏はこうした構造を「若者の復讐」とも表現しています。インフレはこれまでの経済政策や資産偏重の社会構造で利益を得てきた高齢世代や資産家への逆風であり、逆に若者世代の逆転の契機となり得る、という見立てです。今回の参院選における若者の行動や支持の転換も、こうした社会構造の変動と無関係ではないとしています。
ハイパーインフレで資産家は損をし、若者は得をする
ハイパーインフレ下では、現金の価値が急激に下がるため、現金資産に多く依存する資産家は実質的に損をします。一方、若者などで借金をしている人は、借金の実質負担が減ることで得をする可能性があります。
具体的には、ハイパーインフレが起きると貨幣の価値が大幅に下がるため、現金や預貯金の価値は目減りします。一方で、不動産や株式など物や投資による資産はインフレに強いため、現金資産だけの資産家は損をしやすいとされています。また、借金をしている人は物価や通貨価値の下落により実質負債額が減るため、得をする側になることがあります。これにより、固定金利で借金をしている若者や勤労世代がハイパーインフレによって相対的に有利になることも考えられます。
ただし、すべての資産家が損をするわけではなく、インフレ率以上の利回りで資産を運用できる人や不動産などインフレに強い資産を持っている場合は資産価値を維持または増加させることも可能です。
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