4日の日経平均株価は5日続伸し、前日比166円高の1万7887円と連日で年初来高値を更新した。この日、投資家心理を明るくさせたのが、朝刊各紙の「総選挙で自民圧勝」の観測報道だ。日本株の先高観が強い中、数少ない懸念材料が総選挙の行方が読み切れないことだった。ただ、午前中に日経平均が高値を付け、午後にかけて伸び悩むという最近の傾向は4日にもみえた。株価指標面で日本株の割高感は拭えず、短期的な調整リスクが無視できなくなってきたからだ。どうやら自民は勝ちそうだが、浮かれてばかりもいられないと投資家は身構え始めたようだ。
この日の高値は午前9時15分に付けた1万7912円(前日比192円高)。総選挙で自民が圧勝すれば「来年以降もアベノミクスが続き、円安・株高が一段と進む」(マネックス証券の金山敏之シニア・マーケット・アナリスト)とのシナリオを描いたからだ。
だが、買い一巡後は伸び悩み、午前11時前には92円高まで上げ幅を縮める場面があった。来年まで見据えれば株高シナリオは揺るぎにくいが、短期的な値動きとなると別だ。実際、投資家の高値警戒感をいやがうえでも高める指標が出ている。
その一つが予想PER(株価収益率)。東証1部上場銘柄の平均では4日時点で17.6倍程度に上昇した。米国のS&P500種株価指数の17.5倍を上回り、主要国の株式市場で日本より高いのはインド(17.7倍)くらいしか見当たらない。「適正水準を大幅に超えており、日本企業の実力からみて高すぎる」(生保系シンクタンクのエコノミスト)との声が出ている。
チャート上でも高値警戒シグナルが点灯している。東証1部の騰落レシオ(25日移動平均)は前日比6.78ポイント高い141.97%で、過熱水準とされる120%を12日連続で上回った。5日の米雇用統計発表の結果を見極めたいとのムードも漂った。これまで急ピッチで円安が進んできただけに、結果次第では円高方向に揺り戻しが起きる可能性も無視できないからだ。
株式市場では「解散(相場)は買い」との言葉がある。新政権への期待感から、解散日から選挙当日までの株価は上げやすいという経験則がある。ただ今回は「観測報道で総選挙がらみの材料はほぼ出尽くした」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長)との声が聞かれる。日銀の追加緩和後、日経平均は1万6000円台をわずか6日で通過したが、1万7000円台に乗せて16日がたった。この先、上値が重くなるようなら1万8000円の節目は近いようで遠いのかもしれない。
日本株、自民圧勝観測で上昇もにじむ高値警戒感 スクランブル・フラッシュマーケット日本経済新聞