格差がなぜ生まれるのか
- 格差は、所得や資産、教育、雇用、地域など、さまざまな側面で社会の中に生まれる「差」のことです。その主な原因は多岐にわたりますが、以下のような要素が複雑に絡み合っています。
主な原因
- 市場メカニズムの働き
市場経済では、競争力の違いや需要と供給のバランスによって、所得や富の分配に差が生じます。市場メカニズム自体が格差を拡大する性質を持ち、勝者と敗者を生み出しやすい構造になっています。 - 産業構造の変化と技術革新
デジタル化やIT産業の発展など、産業構造の変化により、高度なスキルや知識を持つ人とそうでない人の間で賃金や雇用機会に差が生まれやすくなっています。 - 雇用形態の多様化
非正規雇用の増加は、正規雇用と比べて賃金や待遇が低く、社会保障も不十分な場合が多いため、所得格差の拡大につながっています。 - 教育格差
親の所得や学歴によって子どもの教育機会に差が生じ、それが将来的な職業や所得に影響し、格差が固定化されやすくなります。 - 人口動態の変化
少子高齢化やひとり親世帯の増加など、人口構造の変化も格差拡大の要因です。高齢者や単身世帯は所得が低くなりやすく、社会保障費の負担増も低所得層を圧迫します。 - 制度や政策の影響
市場の自由化や規制緩和、社会保障制度の不備、不公平な取引メカニズムなど、制度的な要因も格差を助長します。 - 地域格差・グローバル化
都市部と地方、先進国と途上国など、地域や国による経済発展の違いも格差の一因です。
まとめ
- 格差は「市場の原理」や「社会構造」「制度」「人口・家庭環境」など複数の要素が連鎖的に作用することで生まれます。特に現代では、産業や雇用の変化、教育機会の不平等、人口動態の変化が格差拡大の大きな要因となっています。
格差の答え 農業の発明と「余剰」の誕生
- ヤニス・バルファキスによれば、現代の「格差」は人類が農業を発明した約1万2千年前にその起源があるとされています。
1. 農業の発明と「余剰」の誕生
- 狩猟採集社会では、人々はその日暮らしで、食料や資源を分け合って生きていました。
- しかし、農業の発明によって、人類は自分たちが消費する以上の作物(=余剰)を生み出せるようになりました。
- この「余剰」が、社会の中で分配や管理の必要性を生み、やがて「所有」「蓄積」「取引」といった概念が発達します。
2. 余剰が生んだ新たな社会構造
- 余剰を管理・支配する人(支配者)と、それを生産する人(農民など)の間に分業と階層が生まれました。
- 余剰を守るための軍隊や警官、分配を管理する官僚、支配を正当化する宗教や聖職者など、国家や制度も余剰の存在とともに発達しました。
- このようにして、富や権力の集中と分配の偏りが進み、社会の中に「格差」が固定化されていったのです。
3. 地域・グローバルな格差へ
- 農耕が発達した地域では余剰が生まれ、国家や文明が発展しましたが、自然の恵みだけで十分に暮らせる地域では農耕が発達せず、格差の起点となりました。
- こうした歴史的経緯が、現代のグローバルな格差や社会内部の格差につながっているとバルファキスは指摘します。
まとめ
- 格差の根本的な起源は、農業の発明によって生まれた「余剰」の存在にあります。余剰を管理・分配する仕組みや制度が発達する中で、富や権力の集中が進み、格差が生まれ、固定化されていったのです。
父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。
- 『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』は、元ギリシャ財務大臣で経済学者のヤニス・バルファキスが、十代の娘の素朴な疑問「なぜ、世の中にはこんなに格差があるの?」に答える形で執筆した経済入門書です。
特徴と魅力
専門用語を極力使わず、地に足のついた言葉で語る
- 経済の仕組みや資本主義の歴史、金融の役割などを、難解な専門用語を避け、日常的な言葉や例え話、小説やSF映画、ギリシャ神話などを交えて、誰にでもわかるように解説しています。
資本主義という言葉を使わず「市場社会」として説明
- 「資本主義」という言葉が持つイデオロギー的な先入観を避けるため、バルファキスは「市場社会」という用語を選び、経済の本質に迫っています。
格差や金融危機の本質に迫る
- 格差がなぜ生まれるのか、富はどのようにして生まれるのか、金融の仕組みや借金の役割、自動化の矛盾、仮想通貨やAI革命まで、現代社会の根本的な問いに対して、歴史を1万年以上さかのぼりながら本質的な解説を行っています。
民主主義と経済リテラシーの重要性を強調
- 「誰もが経済についてしっかりと意見を言えること」が真の民主主義の前提であり、経済を専門家だけに任せることの危うさを指摘しています。
評判・受賞歴
- 世界25カ国以上で刊行され、ベストセラーとなっています。
- NHK-Eテレ「100分de名著 for ティーンズ」でも取り上げられ、若者から大人まで幅広く支持されています。
- 経済書でありながら「一気読みできる」「小説のように面白い」と評されている点も特徴です。
著者について
ヤニス・バルファキスは1961年アテネ生まれ。2015年、ギリシャの財務大臣として経済危機対応にあたり、EUとの交渉で世界的に注目を集めました。長年イギリス、オーストラリア、アメリカで経済学を教え、現在はアテネ大学教授です。
まとめ
『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』は、経済の本質や格差の問題、現代社会の仕組みを、専門用語を極力使わず、物語のようにわかりやすく解説した一冊です。経済を自分の問題として考え、主体的に生きるための知識と視点を与えてくれる、現代を生きるすべての人におすすめの本です。
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