ウクライナの汚職体質は旧ソ連時代から 親ロシア派の高官や治安機関幹部が影響力 汚職の温床 ロシアはウクライナ国内の汚職や腐敗をプロパガンダや情報戦の材料として利用

ウクライナの汚職の特徴

歴史的背景と構造的特徴

  • ウクライナの汚職は、1991年の独立直後から深刻な社会問題となってきた。特に、政府高官と新興財閥(オリガルヒ)との癒着が長年にわたり国家の私物化を招き、政治・経済の両面で大きな影響を及ぼしてきた。
  • オリガルヒはソ連崩壊後の国有資産の私有化過程で台頭し、政治権力と結びつきながら巨大な富と影響力を持つに至った。

汚職の主な形態と分野

  • 官僚機構、警察、教育、医療、軍需品調達など、ほぼ全ての公共セクターで賄賂や不正が横行していた。
  • 例として、警察の取り締まりや公務員試験、大学の学位・授業料などでの賄賂、軍向け食料や装備品の調達価格の水増し、行政サービス(パスポートや許認可証の発行)での金銭授受が挙げられる。
  • 戦時下でも徴兵逃れのための賄賂や、戦闘地域からの住民避難用車両の私物化など、汚職は続いている。

汚職対策と近年の変化

  • 2014年以降、EU加盟や国際支援の条件として汚職対策が強く求められ、電子資産申告制度や独立した捜査・検察・裁判所(NABU、SAP、HACC)など「汚職対策インフラ」の整備が進んだ。
  • 2015年には政府調達の透明性を高める「プロゾロ」デジタルプラットフォームが導入され、数千億円規模の公的資金節約に貢献した。
  • 近年は政府高官や裁判所長官の逮捕、行政サービス分野での汚職撲滅、警察や教育改革など、目に見える成果も出ている。

社会的要因と圧力

  • 汚職根絶の推進力は、国内世論の高い関心と市民社会・メディアの監視、さらにEUやG7など支援国からの圧力の「サンドイッチ型」の外圧・内圧にある。
  • 汚職スキャンダルが発覚するたびに制度や人事が刷新され、社会全体の透明性向上につながっている。

現状と課題

  • 依然として欧州内で最も汚職が深刻な国の一つだが、腐敗認識指数(CPI)は改善傾向にあり、戦争下でもスコアを落とすことはなかった。
  • 今後の課題は、税務・税関分野での汚職根絶、財政監督の強化、オリガルヒの政治・経済への影響排除などである。

まとめ

ウクライナの汚職は、オリガルヒと政治権力の癒着、行政・公共サービス全般に広がる賄賂、戦時下でも続く不正など、構造的かつ多層的な特徴を持つ。一方で、近年は国際社会の圧力と国内世論の高まりを受け、制度改革と摘発が進み、一定の改善も見られる。

ウクライナの汚職とロシアの関与

ウクライナの汚職の現状

  • ウクライナは独立以降、政府機関や公的部門における汚職が深刻な社会問題となってきました。特に、政府高官と新興財閥(オリガルヒ)との癒着や、行政サービス、教育、警察、軍需品調達など多岐にわたる分野で賄賂や横領が横行してきました。
  • 近年は欧州連合(EU)加盟や西側諸国からの支援を受ける条件として、汚職対策の強化が求められ、電子資産申告制度や独立した反汚職機関の設立、特化した裁判所による資産没収など、制度的な「汚職対策インフラ」が整備されてきました。また、ゼレンスキー大統領の就任以降、汚職撲滅を公約に掲げ、政府高官の摘発や解任、組織の刷新が進められています。
  • 腐敗認識指数(CPI)でも、ウクライナは2012年の26点から2022年には33点へと改善傾向にあり、順位も180カ国中105位と過去最高を記録しています。しかし、依然として国防省や徴兵関連、医療・社会保障分野などで大規模な汚職事件が摘発されており、課題は根強く残っています。

ロシアの関与と影響

  • ウクライナの汚職問題とロシアの関与には、いくつかの側面があります。

歴史的背景と親ロシア勢力

  • ウクライナの汚職体質の背景には、旧ソ連時代からの官僚主義や、親ロシア派政権(特にヤヌコビッチ政権)時代の統治スタイルが影響しています。親ロシア派の高官や治安機関幹部が政権内で影響力を持ち、汚職の温床となってきました。
  • 現在も一部の高官(例:大統領府副長官オレフ・タターロフ)は、親ロシア派時代の経歴を持ち、野党や反汚職団体から「汚職の元凶」として糾弾されています。

安全保障への影響

  • 2014年のクリミア併合時、ウクライナ軍がロシアの進攻を阻止できなかった理由の一つとして、軍需品調達をめぐる汚職が指摘されています。賄賂や不正が蔓延し、軍の装備や士気の低下を招き、安全保障の基盤を損なっていました。

ロシアの情報戦・分断工作

  • ロシアはウクライナ国内の汚職や腐敗をプロパガンダや情報戦の材料として利用し、ウクライナ政府や西側支援への信頼を損なう戦略を展開しています。これにより、ウクライナ国内の分断や西側諸国の支援疲れを誘発しようとしています(この点は明確な証拠が示されているわけではありませんが、ロシアの情報戦の一環として多くの専門家が指摘しています)。

ロシアとの戦争と汚職対策の加速

  • ロシアの侵攻以降、ウクライナは「外なる戦い」(対ロシア戦争)と「内なる戦い」(汚職対策)を同時に進める必要に迫られています。西側諸国からの支援を維持するためにも、汚職撲滅が国家存亡の鍵と位置付けられています。

まとめ

  • ウクライナの汚職は歴史的に深刻な問題であり、近年は制度改革や摘発が進んでいるものの、依然として大きな課題です。
  • 親ロシア派時代の遺産や、ロシアによる情報戦・分断工作が汚職問題と複雑に絡み合っています。
  • ロシアの侵攻はウクライナの汚職対策を加速させる契機となっており、国際社会の圧力と国内世論の高まりが、今後の改革の成否を左右します。

ウクライナの元親ロ派政治家アンドリー・ポルトノウ氏、マドリードで射殺

事件の概要

  • ウクライナの親ロシア派で、かつてヤヌコビッチ元大統領の側近を務めた元政治家アンドリー・ポルトノウ氏(51)が、スペイン・マドリード西郊の高級住宅地ポスエロ・デ・アララコンで射殺されました。事件は現地時間の午前9時15分ごろ、アメリカンスクールの外で発生。ポルトノウ氏が車に乗り込もうとした際、複数の襲撃犯が背中と頭部を銃撃し、犯人らは森林地帯に逃走したと伝えられています。

事件現場と影響

  • 現場は米国やスペイン、その他数十カ国から1000人以上の生徒が通うアメリカンスクールの外で、警察は周辺への立ち入りを制限しました。

ポルトノウ氏の背景

  • ヤヌコビッチ政権下で側近を務めた親ロシア派の政治家。
  • 2021年、マグニツキー法に基づき米国から汚職や贈収賄の疑いで制裁対象に指定されていました。米財務省は「ウクライナの裁判所へのアクセスや判決を買収し、改革を妨害した疑いがある」と指摘しています。
  • ウクライナ保安局は、ポルトノウ氏がロシアによるクリミア併合に関与した可能性についても捜査していましたが、後に捜査は打ち切られました。
  • ロシアのウクライナ全面侵攻が始まった2022年2月から数カ月後、ウクライナから脱出。当時、徴兵対象年齢の男性は出国を許されていませんでした。

国際的な文脈

  • マグニツキー法は2012年12月に成立した米国の法律で、人権侵害や汚職に関与したロシアや親ロシア派の政府関係者・実業家の米国入国を阻止し、資産を凍結する内容です。

まとめ

今回の事件は、ウクライナ情勢やロシアとの関係、そして国際的な制裁の影響が複雑に絡み合う中で発生したものであり、今後の捜査や国際社会の反応が注目されています。

アンドリー・ポルトノウとは

アンドリー・ポルトノウ(Andriy Portnov)は、ウクライナの元政治家であり、親ロシア派のヴィクトル・ヤヌコビッチ元大統領の側近として知られていました。ヤヌコビッチ政権時代には大統領府の副長官や第一副長官を務め、ウクライナ最高会議(国会)議員にも2期にわたり選出された経歴を持ちます。

経歴と活動

  • ヤヌコビッチ政権下で大統領府副長官・第一副長官を歴任
  • ウクライナ最高会議(国会)議員を2期務めた
  • 2014年の「マイダン革命」でヤヌコビッチ政権が崩壊した後、親ロシア派の政治家として知られるようになった

汚職疑惑と制裁

  • アンドリー・ポルトノウ氏は、ウクライナの裁判所の判決に贈収賄などを通じて影響力を行使し、司法改革を妨害した疑いが持たれていました。このため、2021年にはアメリカから資産凍結や入国禁止などの制裁を受けています。

亡命と最期

  • 2022年、ロシアのウクライナ全面侵攻が始まった数カ月後、ウクライナから国外に脱出
  • 2025年5月21日、スペイン・マドリード西郊の高級住宅地ポスエロ・デ・アララコンで、子どもを学校に送った直後、複数の襲撃犯に背中や頭部を銃撃され死亡
  • 犯人は現場から逃走しており、スペイン警察が捜査中

その他の情報

  • かつてウクライナ保安局(SBU)は、ポルトノウ氏がロシアによるクリミア併合に関与した可能性について捜査していたが、後に打ち切られた
  • マグニツキー法による制裁対象者であり、米国への入国禁止および資産凍結措置が取られていた

まとめ

アンドリー・ポルトノウは、ウクライナの親ロシア派政権で重要な役職を歴任した元政治家であり、汚職疑惑や米国による制裁の対象となっていました。2025年5月、スペイン・マドリードで射殺されるという事件により、その波乱の人生を終えました。

ウクライナ 汚職

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コラプション:なぜ汚職は起こるのか
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『コラプション:なぜ汚職は起こるのか』の概要

レイ・フィスマンとミリアム・A・ゴールデンによる『コラプション:なぜ汚職は起こるのか』は、世界各国で蔓延する汚職(腐敗)の構造を、経済学と政治学の視点から多角的に解説する書籍です。両分野の第一人者が協力し、実証データや分析ツールを駆使して、汚職の発生メカニズムや持続する理由、撲滅の難しさに迫っています。

なぜ汚職は起こるのか

  1. 構造的な問題としての汚職・・・汚職は個人の「悪」や倫理観だけでなく、社会や制度の構造的な問題として発生します。法律や制度だけで完全に防ぐことはできず、民主主義体制でも汚職はなくなりません。
  2. 経済的・社会的均衡の視点・・・著者は経済学の「均衡」概念を用い、汚職が社会的な期待や規範によって維持される現象であると説明します。多くの人が「皆が汚職をしている」と思えば、それに従うことが合理的な選択となり、汚職が蔓延する均衡が成立します。
  3. 貧困や制度の未整備が誘発要因・・・貧しい国や制度が未発達な国ほど汚職が多い傾向にあります。例えば、公務員の給与が低い場合、生活のために賄賂を受け取るインセンティブが強まります。ただし、豊かな国でも汚職が根絶されているわけではなく、監視や報道、司法の機能も重要な役割を果たします。
  4. 権威と権力の格差・・・公共部門の汚職は、政治家や高官が役人の任命や昇進、配置に不当な影響力を持つことで生じやすくなります。政治家と役人が癒着し、体制維持のために汚職が温存されることも多いです。

汚職の定義と種類

  • 汚職の定義には、(1)公共の利益、(2)世論、(3)法の基準という三つの観点があり、これらに反する行為が汚職とみなされます。
  • 汚職の形態には、末端の公務員による賄賂から、閣僚や議員が絡む大規模なものまで幅広く存在します。

汚職をなくすためのカギ

  • 汚職をなくすには、個人の倫理だけでなく、社会全体の期待や規範を変えることが重要です。
  • 監視システムや法執行機関の強化、報道の独立性も不可欠ですが、それだけでは不十分で、社会全体の意識改革と持続的な努力が求められます。

本書の特徴

  • 世界各国の実例やデータを豊富に紹介し、汚職の実態とその影響を具体的に示しています。
  • 「汚職はなぜ起きるのか」「どうすれば減らせるのか」という問いに、理論と実証の両面からアプローチしています。

まとめ

『コラプション:なぜ汚職は起こるのか』は、汚職を単なる個人のモラルの問題ではなく、社会的・制度的な構造、経済的インセンティブ、社会的均衡の問題として捉え、その複雑なメカニズムを明らかにしています。汚職をなくすためには、社会全体の期待や規範の転換と、制度的な改革が不可欠であると強調しています。