日本の農業は補助金で保護されている?
日本の農業は補助金や各種の政策によって保護されています。主な保護の仕組みは以下の通りです。
補助金・助成金による保護
- 日本では農業者に対して多様な補助金や助成金が用意されており、新規就農者向けの資金(農業次世代人材投資資金)、経営発展支援、設備導入支援、環境保全型農業への直接支払交付金など、幅広い支援策が実施されています。
- 2025年度の農林水産予算は2兆6389億円と大規模であり、スマート農業の導入や農地改良、地域振興など多岐にわたる分野で補助金が活用されています。
- 水田活用の直接支払交付金や、経営安定化のための保護策も継続されており、農家の所得安定や生産性向上を目的とした支援が行われています。
関税や価格支持による保護
- 日本の農業保護は補助金だけでなく、高い関税による輸入制限も特徴です。たとえばコメの関税率は約280%と非常に高く、外国産農産物の流入を抑え、国内農家を守っています。
- 農産物の価格が下がった場合には、政府が市場から買い上げて価格を維持したり、所得補償や保険制度で農家を支援する仕組みもあります。
国際比較
- OECDの指標によると、2020年時点で日本の農家収入に占める農業保護(PSE)の割合は40.9%と、アメリカ(11.0%)、EU(19.3%)よりも高い水準です。
- ただし、日本の農業保護は消費者が負担する部分(高価格での購入)が多く、欧米のように直接補助金で支える仕組みとはやや異なります。
まとめ
日本の農業は、補助金・助成金、直接支払い、高関税、価格支持など多様な政策によって強く保護されています。特に新規就農や経営安定、スマート農業導入など、時代の変化に合わせた支援策が拡充されているのが特徴です。
日本以外で補助金で農業を保護している国
日本以外で補助金によって農業を保護している国は多数存在し、特に欧米や韓国、スイスなどがその代表例です。以下に主な国とその特徴をまとめます。
主な農業補助金による保護国
スイス
- 農業所得に対する公的助成の割合が非常に高く、2013年には農家所得の約100%が補助金で賄われていました。
- 山岳地帯が多く農業に適した土地が少ないため、景観維持や動物愛護など多面的な機能も重視し、補助金政策が充実しています。
フランス・イギリス(EU諸国)
- フランスでは農業所得の約95%、イギリスでは91%が補助金でカバーされており、EU共通農業政策(CAP)を通じて農家の所得補償や農村振興が行われています。
- EU全体としても農業保護が強く、価格・所得政策と地域格差是正のための政策が二本柱です。
アメリカ
- 農業所得に占める補助金の割合は約40%(2006年時点)で、市場価格が生産コストを下回った場合に差額を政府が補填する仕組みがあります。
- 価格支持融資や収入補償など、さまざまな農業保護策が用意されています。
韓国
- 農業の多面的機能を憲法に明記し、特定品目(例:ニンニク、白菜など)に高関税や補助金を投入して保護しています。
- 輸出促進にも補助金を活用し、食料安全保障の観点からも積極的な保護政策を展開しています。
カナダ
- 穀物生産には補助金をほとんど出していませんが、酪農や畜産分野では徹底した保護政策を実施しています。
- 政府が生産コストに見合う価格を設定し、過剰生産時には買い上げも行われます。
オーストラリア・ニュージーランド
- 表向きは自由競争を重視していますが、「隠れた輸出補助金」などの手法で農業保護を続けています。
その他
- ブラジルは農業金融や価格支持、農業保険を柱とし、特定品目(コーヒーなど)では輸入規制を通じた保護も行っています。
まとめ
欧米諸国や韓国、スイスなどは、日本以上に補助金や関税など多様な方法で農業を強力に保護しています。特にEU諸国やスイスは農家所得の大部分が補助金で賄われており、アメリカも市場価格と生産コストの差額補填などで農家を支援しています。これらの国々は、食料安全保障や農村振興、多面的機能の維持を理由に、農業保護政策を積極的に展開しています。