アメリカによるによる中国包囲網の一環
- メキシコ下院が承認した中国などアジア諸国からの輸入品に対する最大50%関税は、米国の対中包囲網の一環として位置づけられる。
背景と米国の圧力
- トランプ政権は2025年就任後、カナダ・メキシコに25%、中国に10%以上の追加関税を次々に導入。中国企業がメキシコを輸出拠点として利用し、関税回避を図っているとの指摘が米通商代表部(USTR)から相次いだ。メキシコのこの措置は、USMCA再交渉を控え、米国の不満を和らげ、鉄鋼・アルミ関税の引き下げを引き出す狙いがある。
戦略的意図
- シェインバウム政権は国内製造業保護を名目に掲げるが、実質的には米国のサプライチェーン再編に協力。自動車部品など中国依存を減らし、約37億ドルの関税収入で財政改善も図る。これにより、メキシコは米中貿易戦争の「中継地」から脱却を迫られている。
影響とリスク
- 自動車業界は部品調達難を警告しており、インフレや生産停滞の懸念が生じる。一方、世界貿易の緊張が高まり、日本企業もアジア経由のメキシコ輸出に影響を受ける可能性が高い。米国の対中政策が同盟国に波及する典型例だ。
2025年12月11日 メキシコ下院、中国などに来年最大50%の輸入関税承認 自動車など対象
この記事は、メキシコ議会下院が12月10日に承認した「アジア諸国からの輸入品に対する最大50%の関税措置」に関するロイターの報道です。以下に要点をまとめます。
メキシコ下院は、中国を含む複数のアジア諸国(インド、韓国、タイ、インドネシアなど)からの輸入品に対して、来年から最大50%の関税を課す法案を可決した。今後は上院に送付され、承認を経て成立する見通し。
対象となる品目は、自動車、自動車部品、繊維・衣料品、プラスチック、鉄鋼など。これらはメキシコ製造業が競合する主要分野であり、政府は国内産業の保護と貿易不均衡の是正を意図している。
シェインバウム政権はこの措置によって
- 中国との不均衡な貿易構造を見直す
- 約37億6000万ドルの関税収入で財政赤字を削減する
という目的を掲げている。
一方で、米国の意向にも配慮した側面があるとみられる。アナリストによれば、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)再交渉を控え、バイデン政権の対中政策に歩調を合わせる狙いがあると指摘されている。
米通商代表部(USTR)のグリア代表は、中国やベトナム企業がカナダやメキシコを経由して関税を回避していると警告していた。
国内業界からは懸念の声もあり、特に自動車業界はデジタル部品など必要な輸入資材の入手が難しくなる可能性を指摘している。
この動きは、
- 米国の「対中サプライチェーン再編」圧力への配慮、
- メキシコの財政再建方針、
- 中国製品の流入への懸念、
といった複数の思惑が交錯した措置と考えられます。
国内製造業の保護・強化という目的は掲げられているものの、輸入コスト上昇によってインフレ圧力や製造業の部品調達難につながるリスクもあります。
