【図解】中国、変わる成長モデル=インフラ投資が縮小
2025年中国固定資産投資の概要
2026年1月19日に発表された中国の2025年通年の都市部固定資産投資は、前年比で3.8%減少しました。
この減少は、天安門事件の影響を受けた1989年以来、36年ぶりのマイナス成長となります。
中国政府が長年続けてきた、インフラ整備によって景気を下支えする経済成長モデルが、大きな転換点を迎えていることを示しています。
投資減少の主な内訳
投資全体を押し下げた主な要因は、不動産開発投資の大幅な落ち込みと、インフラ投資のマイナス転換です。
不動産開発投資 前年比17.2%減と、引き続き深刻な低迷が続いています。
インフラ投資 前年比2.2%減となり、これまでのプラス成長から減少に転じました。
製造業投資 前年比0.6%増と、わずかながら増加を維持しました。
成長モデルの変化と背景
今回の統計結果は、中国経済が「古い成長エンジン」から「新しい成長エンジン」への構造転換を余儀なくされている現状を浮き彫りにしています。
地方政府の債務問題により、従来のインフラプロジェクトが限界に達している一方で、ハイテク分野などの新産業へのシフトが進められています。
具体的には、情報サービスへの投資が28.4%増、航空宇宙・設備製造が16.9%増となるなど、新興セクターへの集中投資が見られます。
今後の展望
2025年の実質GDP成長率は5.0%となり、政府目標の「5%前後」は達成されました。
しかし、足元の10月から12月期の成長率は4.5%まで鈍化しており、内需の弱さが懸念されています。
2026年に向けては、ハイテク産業の育成や設備更新の支援を通じて、いかにして不動産やインフラに頼らない自律的な成長軌道を描けるかが焦点となります。
やる事、やれる事がなくなった
構造的な投資余力の限界
中国経済において「やる事、やれる事がなくなった」という感覚は、統計データからも裏付けられています。
これまで中国は、道路、鉄道、橋、空港といった巨大なインフラを建設することで、強制的に需要を生み出してきました。
しかし、主要都市の整備が一通り完了し、地方都市でも過剰なハコモノが溢れたことで、追加投資をしてもそれに見合う経済効果が得られない段階に達しています。
資金調達の壁
地方政府が投資を続けたくても「やれない」最大の理由は、債務問題にあります。
これまでのインフラ投資は、地方政府の傘下にある投資プラットフォーム(融資平台)による多額の借り入れで支えられてきました。
不動産不況によって、その返済原資となる土地使用権の売却収入が激減したため、新しいプロジェクトに着手する資金的な余裕が失われています。
次の投資先としてのハイテク分野
伝統的な土木・建設分野で「やる事」がなくなった結果、中国政府は投資の矛先を先端技術へと切り替えています。
航空宇宙および設備製造 前年比で16.9%増加しており、国家主導での技術自給率向上を急いでいます。
情報サービス 28.4%という高い伸び率を示しており、デジタル経済への完全な移行を狙っています。
設備更新の促進 新しいものを作るのではなく、既存の工場設備を最新のAIや自動化技術に置き換える「買い替え需要」の創出に注力しています。
消費主導型への難路
投資による経済成長が限界を迎えた今、本来であれば個人消費が経済を牽引する必要があります。
しかし、資産の多くを占める不動産価格の下落や、将来への不安から、国民の消費意欲は停滞したままです。
「作るものがない」というハードウェアの限界と、「お金を使わない」というマインドの限界が同時に訪れているのが現在の中国の難局と言えます。
先進国が中国の野望を危険視した。「次の投資先としてのハイテク分野」は、先回りして脱中国をはじめている。西側 vs 東側の攻防。先行きがとても気になる
先回りして脱中国をはじめている西側諸国
先進国による「先回り」と中国の対抗
先進国、特にG7諸国は、中国がハイテク分野を次の成長エンジンに据える動きに対し、かつての鉄鋼やソーラーパネルのような「過剰生産と安値攻勢(チャイナ・ショック2.0)」が再来することを強く警戒しています。
このため、先進国側は「脱中国(デカップリング)」や「リスク低減(デリスキング)」を加速させており、2026年現在は以下のような攻防が繰り広げられています。
西側諸国の包囲網:重要技術の遮断
米国を中心に、西側諸国は中国のハイテク成長の「芽」を摘むために、物理的なサプライチェーンの切り離しを強めています。
- 先端半導体の輸出規制 AIや軍事技術に直結する高性能チップ、およびその製造装置の対中輸出を厳格に制限しています。これにより、中国が自前で最先端のハイテク製品を作るための「道具」を奪う戦略です。
- 投資制限の強化 中国のハイテク企業に対する自国からの投資を禁止、または厳格な審査対象としています。資金とノウハウが中国に流出するのを防ぐのが狙いです。
- 関税による防波堤 中国製の電気自動車(EV)やリチウムイオン電池に対し、米国や欧州は100%近い高関税を課すなど、中国の「新しい成長エンジン」が自国市場を席巻するのを力ずくで阻止しています。
中国の対抗策:自力更生と資源の武器化
これに対し、中国は「科学技術の自立自強」を掲げ、西側に依存しない独自の経済圏を構築しようとしています。
- 資源輸出の管理 半導体やEVに不可欠なガリウム、ゲルマニウム、グラファイト、レアアースなどの輸出制限を強化しています。西側のハイテク産業に対し、原料供給を絞ることで揺さぶりをかけています。
- 独自サプライチェーンの構築 「一帯一路」諸国やグローバル・サウス(新興・途上国)との連携を深め、欧米市場以外でのシェア拡大を図っています。
- 巨大な国内市場の活用 自国の巨大な市場を背景に、国内企業への補助金を投入し、他国が追随できないスピードで技術開発と社会実装を進めています。
2026年以降の先行きの焦点
今後の攻防で注目すべきは、この「分断」が世界経済にどのような歪みを生むかという点です。
- 技術の二極化 西側の規格と中国の規格に世界が二分され、互換性のないテクノロジーが並行して存在する「並行世界」のような状況が強まると予想されます。
- インフレ圧力 安価な中国製品を排除し、自国や友邦国(フレンド・ショアリング)で生産を行うことで、世界的に製品価格が上昇するコスト増の時代が続く可能性があります。
- 経済安全保障の優先 もはや「自由貿易」よりも「国家安全保障」が優先される時代となっており、企業の投資判断は純粋な利益よりも政治的リスクに左右されるようになります。
西側と東側の溝が深まる中、中国がハイテクへのシフトを成功させ、かつての成長を取り戻せるのか、あるいは孤立によって失速するのか、まさに正念場を迎えています。
「肥え太らせた中国という豚」を「調理して食べる」段階は終わった。西側は徐々に確実に離れていくだろう
西側諸国は徐々に確実に離れていく
経済的「収穫」から「分離」への移行
西側諸国にとって、安価な労働力と巨大な市場を提供してきた中国は、かつては「成長の果実」を分かち合うパートナーでした。
しかし、2026年現在の状況は、あなたが表現された通り、肥え太った中国が牙を剥く前に、西側がその供給網から自らを切り離す「脱中国」の最終段階に入っています。
もはや中国を「調理して食べる(利益を享受する)」対象ではなく、自国の経済と安全保障を脅かす「リスク」と見なす動きが決定定的になっています。
西側が構築する「中国なきサプライチェーン」
西側諸国は、単なる貿易制限を超えて、中国を経済システムから段階的に排除する「デリスキング(リスク低減)」を具体化させています。
- フレンド・ショアリングの定着 価値観を共有する同盟国(ベトナム、インド、メキシコなど)へ製造拠点を移す動きが加速しています。2025年には、Appleなどの主要企業がサプライチェーンの「中国+1」から、さらに踏み込んだ脱中国化を進めました。
- 相互関税の応酬 2026年には、米国による対中関税がさらに強化される見通しです。これに対し中国も報復関税やレアアースの輸出制限で対抗しており、かつての自由貿易体制は完全に崩壊しました。
- 投資資金の逆流 これまで中国のハイテク成長を支えてきた欧米のベンチャーキャピタルや機関投資家が、厳しい審査や制裁リスクを恐れて資金を引き揚げています。
中国の焦りと「自力更生」の壁
西側から離れられることに対し、中国側は強い危機感を抱いています。
- ハイテク孤立化への恐怖 先端半導体などの「急所」を握られている中国は、2026年度予算でも「科学技術の自立」に巨額を投じていますが、数十年かけて築かれた西側の技術エコシステムを短期間で代替するのは極めて困難です。
- グローバル・サウスへの傾倒 欧米市場を失いつつある中国は、東南アジアや中東、アフリカといった「東側・南側」の経済圏を固めることで生き残りを図っています。しかし、これらの市場の購買力は、欧米市場を補うにはまだ不十分です。
先行きのシナリオ:ブロック経済の再来
今後は、世界が「米国を中心とした西側経済圏」と「中国を中心とした東側経済圏」に完全に分断されるブロック経済化が進むと考えられます。
- 西側の決別 「短期的な利益」よりも「長期的な安全保障」を優先し、コストが高くなっても中国を排除した独自の供給網を完成させるでしょう。
- 中国の停滞 外資と技術の流入が止まることで、成長率はさらに鈍化し、国内の過剰生産分をどこに売るかという問題が深刻化します。
かつての「世界の工場」としての中国の黄金時代は終わり、現在は、西側がいかにして返り血を浴びずに中国という巨大な存在から手を引くかという、静かな、しかし冷徹な「撤退戦」の真っ最中であると言えます。

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