目立つ米国企業 薄まる日本の存在感 中国・供給網博
中国国際サプライチェーン(供給網)促進博覧会では、首脳会談により貿易拡大を目指す米国企業の存在感が大きく高まっています。
一方で、政治的な関係悪化が響いた日本企業の存在感は低下しており、出展規模の縮小や席次の低下などが見られます。
しかし、経済界を中心に日中関係を正常化しようとする動きや、関係改善に向けたわずかな兆しも現れています。
米国企業の存在感向上
米中首脳会談で貿易拡大の方針が確認されたことを追い風に、米国企業は活発な動きを見せています。
エヌビディアやクアルコムなどの半導体大手が大型ブースを構え、出展規模は外国勢でトップを維持しています。
政府の後押しを期待する声もあり、中国事業の拡大に対して前向きな姿勢が目立ちます。
日本企業の存在感低下と背景
高市首相の台湾有事発言に対する中国側の反発以降、日中関係が冷え込んでいることが影響しています。
日本企業の間では、出展の見送りや規模の縮小、イベントへの招待見送りが相次いでいます。
開幕式での席次が前年より下がるなど、現場の日本企業幹部からは「嵐が過ぎるのを待つしかない」という声も上がっています。
関係改善への動き
厳しい状況の中、関西経済連合会の松本会長などの経済界関係者は、民間主導で両国関係を正常化させていく意欲を示しています。
中国側からも、一部の日本企業関係者を招待するなど、関係改善に向けた微細なシグナルが出始めています。
日本は産業構造を戦略的に「装置産業・素材」に転換したため目立たない
日本は産業を根底から支える「装置・素材(BtoB)」へシフトした
日本の存在感が薄れているように見える背景には、目に見えやすい最終製品(BtoC)から、産業を根底から支える「装置・素材(BtoB)」へと産業構造が戦略的にシフトしたという構造的な要因があります。
先端半導体製造装置や高性能化学素材などの分野では、日本企業が世界的なシェアを握っており、サプライチェーンにおいて不可欠な存在となっています。
展示会などの表舞台で派手に目立つことはなくても、産業のインフラとして戦略的な重要性を維持する「持続可能なポジショニング」を確立しています。
装置・素材産業へのシフトと「目立たない」理由
日本企業は、かつての家電やスマートフォンといった最終製品(BtoC)の市場から、製造装置や先端素材(BtoB)の市場へと注力分野を大きく転換してきました。
これらの製品は一般消費者の目に触れにくく、完成品を誇示するような博覧会や展示会では、エヌビディアのようなAIチップや、EV(電気自動車)などの完成品メーカーと比べて華やかに目立つことはありません。
しかし、これらの装置や素材がなければ、最先端のハイテク製品を1つも製造することができないため、実質的な影響力は非常に高いまま維持されています。
チョークポイントとしての戦略的優位性
半導体や電子部品の製造プロセスにおいて、日本企業は代替が極めて困難な「チョークポイント(ボトルネック)」となる技術を多数保有しています。
具体例として、以下の分野で世界市場を牽引しています。
- 半導体製造装置:
洗浄装置(スクリーンホールディングス)、コータ・デベロッパー(東京エレクトロン)など、特定の工程で世界シェアの大部分を占める企業が健在です。 - 高機能素材:
極端紫外線(EUV)用フォトレジスト(感光材)や、フッ化水素、シリコンウェーハ(信越化学工業、SUMCO)など、半導体製造に不可欠な化学材料で圧倒的なシェアを持っています。
こうした構造があるため、表面的な出展規模や政治的な席次が下がったとしても、製造業の基盤そのものを日本に依存せざるを得ないという強い競争力が保たれています。
実利重視のビジネス展開
米国企業が巨大な市場とブランド力で前面に出て存在感を放つのに対し、日本の装置・素材産業は「黒衣(くろご)」として確実に実利を取る戦略をとっています。
今回の博覧会で日本企業の露出が減っているように見えるのは、政治的な冷え込みへの配慮だけでなく、すでに強固な顧客関係を築いているBtoB企業が、あえて公の場で目立つ必要性を認めていないという側面もあります。
激しい変化を伴う最終製品の競争から一歩引き、サプライチェーンの上流を制することで、長期的な安定と戦略的不可欠性を確保する構造になっています。

コメント