中国、越境証券業務の取り締まり強化-富途含む3社を処分へ
- China to Penalize Tiger, Futu in Cross-Border Flow Crackdown
中国証券監督管理委員会(証監会)を含む8つの政府部門は、中国本土の投資家に向けて無許可で海外投資サービスを提供していた「富途控股(フツ・ホールディングス)」、「老虎証券(タイガー・ブローカーズ)」、「長橋証券(ロングブリッジ)」の3社に対し、国内外の関連法人による違法所得をすべて没収し、厳しい制裁を科す方針を固めました。
これに伴い、国務院の承認のもとで「2年間の集中整治(是正)期間」が設けられ、既存の違法な越境証券・先物・基金業務を市場から完全に排除するための包括的な実施方案が始動しました。
資本流出への法的包囲網の強化
今回の措置は、国内の個人投資家が国の厳格な資本規制を回避し、オンラインプラットフォームを通じて米国株や香港株といった海外資産に資金を移動させるルートを遮断するためのものです。
証監会、公安部、中国人民銀行(中央銀行)など8部門が共同で発表した方針に基づき、ライセンスを持たない海外の金融機関が、中国本土内で顧客を勧誘することや、アプリ、ウェブサイトを介して口座開設、取引処理、資金移動の手配を支援することが全面的に禁止されます。
銀行などの国内金融機関や、広告・カスタマーサポートを提供する仲介業者に対しても、外貨管理局の規制や資金洗浄(マネーロンダリング)防止の観点から監視の目が大幅に強化されます。
既存顧客への制限と2年間のカウントダウン
すでに口座を保有している既存の本土投資家(存量投資家)に対しては、資産の安全を考慮した段階的な措置として、2年間の猶予期間が適用されます。
この期間中、対象となる海外証券会社の口座では、追加の資金入金や新しい金融商品の「買い注文」が一切禁止されます。
認められるのは、既存保有資産の「売却」と「資金の引き出し(転出)」という一方向の取引のみとなり、実質的に既存口座のクローズに向けたカウントダウンが始まります。
2年間の集中整治期間が終了した後は、本土向けのウェブサイトや取引アプリ、サーバーが全面的に閉鎖され、国内からのアクセスや取引サービスは完全に停止されます。
巨額の罰金通告と市場への衝撃
証監会の前通知によると、各社には違法所得の没収に加えて巨額の制裁金が科される見通しです。
富途控股に対しては約18億5000万人民元(約2億7100万米ドル)の罰金、および創業者兼CEOの李華氏個人への125万人民元の罰金が計画されています。
老虎証券については、約1億300万人民元の違法所得没収に加え、3億800万人民元の罰金、そしてCEOのウー・ティエンフア氏への125万人民元の罰金処分が提示されています。
この報道を受け、米国市場に上場している富途控股(FUTU)や、老虎証券の親会社であるアップ・フィンテック・ホールディング(TIGR)の株価は、一時40%近く急落しました。
正規ルートへの集約と市場への影響
当局は、本土の投資家が海外市場へアクセスする際は、違法なグレープラットフォームではなく、国が公認している正規のチャネルを利用するよう指導しています。
具体的には、本土と香港の市場を相互につなぐ「ストレージ・コネクト(股通)」や「ウェルス・マネジメント・コネクト(跨境理財通)」、あるいは「適格国内機関投資家(QDII)」制度を介した投資のみが合法的な手段として残されます。
これらの国が認めた仕組みは投資対象や投資枠に厳格な上限があるため、個人の自由な海外資産運用の自由度は大幅に制限されることになります。
中国経済が停滞。「資本流出の阻止」と「財政難の穴埋め」
中国政府が経済停滞期に入ってから富途控股や老虎証券などのオンライン証券を摘発し、巨額の資金を没収して国庫に入れる動きについて、その背景には「資本流出の阻止」と「財政難の穴埋め」という二つの現実的な側面が存在します。
長年放置されていたグレーゾーンの背景
富途控股(FUTU)や老虎証券(TIGR)などは、数百万人の中国本土住民に対して、実質的に無許可で米国株や香港株への投資サービスを提供し続けてきました。
これまで当局がこれらを黙認していたのは、経済が右肩上がりで成長していた時期には、個人の余剰資金が海外で運用されて利益を生むことが、必ずしも国の不利益にはならなかったためです。
また、これらのプラットフォームの多くには、テンセント(騰訊)やシャオミ(小米)といった中国の主要テック企業が出資しており、業界の成長やイノベーションを阻害したくないという配慮も働いていました。
経済停滞による「逃避資金」の急増
状況が急変したのは、中国の国内経済が停滞し、不動産市場の不況や人民元安が進んだためです。
国内での運用リターンが期待できなくなった本土の投資家は、資産を守るために競って資金を海外、特にドル建ての米国株市場へ逃避させようとしました。
中国政府にとって、国内の金融システムや人民元の価値を維持するためには、この急激な「資本流出(キャピタル・フライト)」を何としてでも止めなければならない局面に陥ったのが最大の理由です。
「一石二鳥」の国庫資金確保
地方政府の債務問題や税収の減少などにより、現在の中国は国全体の財政的な余裕が失われつつあります。
このタイミングでの摘発は、資本流出のルートを完全に遮断するという本来の目的に加え、これまでグレーゾーンで巨額の利益を上げてきた新興金融企業から違法所得を没収し、高額な罰金を科すことで、ダイレクトに国庫の足しにできるという「実利」を伴っています。
今回の処分で数億ドル規模の資金が国庫に還流する見通しであり、経済停滞期における政府の資金確保と市場統制の一石二鳥を狙った強権的な措置と言えます。
富途控股が「ひびき証券」を買収してmoomoo証券に
富途控股(FutuHoldingsLimited)が香港を拠点とするフィンテック企業で、2022年に大阪拠点の老舗証券会社「ひびき証券」(大正9年/1920年設立)を買収して日本市場に参入し、商号をmoomoo証券株式会社に変更しました。
主な経緯
- 2022年:FutuHoldingsがひびき証券を100%買収→9月20日付で商号変更(ひびき証券→moomoo証券)。
- 2022年10月:moomooアプリの日本配信開始。
- 2023年9月:米国株取引サービス開始。
- 2024年3月:日本株取引サービス開始(現在は日本株手数料無料など積極展開)。
親会社のFutuHoldingsはNASDAQ上場企業(FUTU)で、テンセントなどが出資しています。
moomooは海外ではグローバルブランドとして米国・シンガポール・オーストラリアなどでも展開しています。日本では金融庁登録の金融商品取引業者として、顧客資産を分別管理+投資者保護基金で守っています。
コメント