地政学的リスクやインフレ懸念、米国の関税政策などによる世界経済への不安
各国の中央銀行の金保有量が5月に20トン増加、国別最多購入量はカザフスタン
2025年5月、各国の中央銀行による金保有量は合計で20トン増加しました。国別で最も多く金を購入したのはカザフスタン国立銀行で、7トンを買い増し、年初からの累計購入量は15トン、現在の保有量は299トンです。次いで多かったのはトルコとポーランドで、それぞれ6トンを購入しました。ポーランドは年初以降67トン購入しており、累積で最大の増加量となっています。中国とチェコは5月にそれぞれ2トンを購入しました。他にもキルギス、カンボジア、フィリピン、ガーナが各1トンずつ購入しています。
一方、最も多く金を売却したのはシンガポールで、5トンを売却しました。続いてウズベキスタンとドイツがそれぞれ1トンを売却しています。年初からの累計売却量ではウズベキスタンが27トンで最多、シンガポールが10トンで2位です。
この背景には地政学的リスクやインフレ懸念、米国の関税政策などによる世界経済への不安があり、各国中央銀行が準備資産のリスク分散や価値保全のために金の保有を強化していることが挙げられます。
ワールドゴールドカウンシル(WGC)の調査によれば、今後1年間で中央銀行の金準備が増加すると予想する回答者は95%に達し、過去最高となっています。また、今後5年間で総準備資産に占める金の割合が「やや」または「大幅に」増加すると考える中央銀行も76%に上っています。
2024年の中央銀行による金の年間購入量は過去10年平均の2倍となる1000トン超に達しており、今後もこの傾向が続く見通しです。
- アメリカの財政破綻がもはやトランプやイーロン・マスクのような人物でも止められない段階にあり、ドル基軸通貨体制の終焉が近づいていると論じています。その結果、金(ゴールド)の価格は今後もさらに上昇するという見解を示しています。
主な内容のポイントは以下の通りです。
- アメリカ財政の行き詰まり:トランプ政権でもアメリカの財政破綻は避けられず、ドルの価値は減少していく。
- ドル覇権体制の崩壊:ニクソン・ショックやプラザ合意の再来とも言える状況で、ドル基軸通貨体制が終わりつつある。
- 金価格の高騰:地政学的リスク(例:中東の緊張)もあり、「有事の金」として金価格が高騰している現状を指摘し、今後も金は「まだまだ上がる」と予測。
- トランプ大統領の関税戦争:トランプの政策でもアメリカの財政問題やドルの地位低下は止められないと強調。
この書籍は、アメリカ経済や国際金融の構造変化を背景に、今後の資産防衛や投資戦略として金の重要性を説いています。
アメリカの財政は破綻しそう?
アメリカの財政は深刻な悪化傾向にあり、破綻の懸念が高まっています。
- 債務残高の増加とGDP比の悪化:2025年時点でアメリカの債務残高はGDPの約100%に達しており、2035年には約130%にまで膨れ上がる見込みです。利払い費用も2021年の歳入の9%から2035年には30%に達すると予測されています。
- 信用格付けの引き下げ:ムーディーズは2025年5月に米国債の長期信用格付けを最高の「AAA」から「Aa1」へ一段階引き下げました。これは財政赤字の拡大と返済能力への懸念が理由で、今後も財政赤字が拡大し続ける見通しが示されています。
- 債務上限問題と追加国債発行:2025年には債務上限問題が議会で解決されたものの、最大1兆ドル規模の国債追加発行が見込まれており、財政赤字は今後10年でさらに2兆8000億ドル上積みされる可能性があります。
- 経済成長の鈍化と負債の増大:米国経済は実質的な成長が乏しく、負債の増加が成長を上回っているため、長期的には財政の持続可能性に疑問符がついています。著名投資家も「成長の幻想」と警鐘を鳴らしています。
これらの状況を踏まえると、アメリカの財政は現時点で「破綻」とまではいかないものの、非常に厳しい財政環境にあり、今後の債務管理や経済政策の成否が大きな課題となっています。破綻リスクは高まっているものの、政府の債務返済能力が完全に失われたわけではなく、引き続き注視が必要です。