反出生主義

反出生主義とは

反出生主義(はんしゅっしょうしゅぎ)またはアンチナタリズムは、生殖を非倫理的と見なす思想です。この立場は、一般的に「人間は生まれてこない方が良い」とする考え方に基づいています。反出生主義者は、出生によってもたらされる苦痛や不幸を考慮し、子供を持つことを否定する立場を取ります。

反出生主義の基本的な考え方

反出生主義は、以下のような基本的な考え方を持っています:

  • 苦痛の回避: 反出生主義者は、人生には多くの苦痛や困難が伴うため、そもそも生まれない方が良いと主張します。
  • 倫理的責任: 子供を持つことは、その子供に苦痛を与える可能性があるため、倫理的に避けるべきだと考えます。
  • 人間の存在の否定: 反出生主義は、人間の存在そのものを否定することが多く、特に「生まれてこない方が良かった」という視点が強調されます12。

反出生主義の影響

近年、反出生主義は特に若い世代の間で注目を集めています。社会的な問題や環境問題、経済的な不安などが影響し、子供を持たない選択をする人々が増えています。反出生主義に共感する人々は、自己の幸福や社会の未来を考慮し、出産を避ける傾向があります58。

反出生主義に対する批判

反出生主義には批判も多く、以下のような点が挙げられます:

  • 人生の価値: 反出生主義者の考え方は、人生の価値を否定するものであり、幸福や喜びを経験する機会を奪うと主張する人もいます。
  • 社会的責任: 子供を持つことは、次世代を育てる責任でもあり、社会の持続可能性に寄与するという意見もあります46。

このように、反出生主義は多様な視点から議論されており、現代社会における重要なテーマの一つとなっています。

反出生主義には、さまざまな哲学者や思想家が関与しており、彼らの見解は多岐にわたります。特に、アルトゥル・ショーペンハウアーやデイヴィッド・ベネターの思想が有名です。

ショーペンハウアーは、人生は苦しみが多いとし、子供を生み出さないことが最も合理的な選択であると主張しました。彼の哲学では、世界は生きる意志によって支配されており、その意志は常に満たされることがないため、存在は苦しみに満ちているとされます。

一方、デイヴィッド・ベネターは「誕生害悪論」を提唱し、誕生は生まれてくる人にとって常に害であるとし、人類は生殖をやめて段階的に絶滅するべきだと主張しました。彼は、快と苦痛の価値が非対称であるとし、苦痛の不在は善であるが、快の不在は悪くないと論じています。このため、倫理的には生殖を控える選択が優位であるとされます。

また、反出生主義は日本でも注目を集めており、特にネットコミュニティでの議論が活発化しています。日本における反出生主義は、特に「誕生否定」に焦点を当てる傾向があり、社会的な問題や個人の幸福を考慮した上での出産の選択が議論されています。これにより、反出生主義は単なる哲学的な議論にとどまらず、実際の社会問題としても認識されるようになっています。

わたしが「わたし」を助けに行こう ―自分を救う心理学―
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