『城好き気象予報士とめぐる名城37 天気が変えた戦国・近世の城』の概要
『城好き気象予報士とめぐる名城37 天気が変えた戦国・近世の城』は、気象予報士・久保井朝美氏が著した、天気と日本の城をテーマにした新しい視点の書籍です。著者自身の体験をもとに、日本各地37の名城を「天気×城」という切り口で紹介し、城めぐりをより深く、楽しく味わうためのヒントを提供しています。
本書の特徴と構成
新しい視点:天気と城の関係
- 気象予報士ならではの視点で、城の屋根や壁、石垣などの構造やデザインが、地域ごとの気候や天候への備えであることを解説。
- たとえば「寒冷地の屋根には赤や緑など特徴的な色が多い」「美しい壁は台風への備えかもしれない」といった具体的な観察から、城の工夫や背景を読み解きます。
戦国・近世の合戦と天気
- 歴史的な合戦において、天気が勝敗を左右した事例を紹介。徳川家康の関ヶ原の戦い、毛利元就の厳島の戦い、豊臣秀吉の備中高松城の戦い、伊達政宗の摺上原の戦い、織田信長の桶狭間・長篠の戦いなど、名将たちが天気をどう活かしたかを解説しています。
絶景や自然現象と城の魅力
- 霧に包まれる「天空の城」や、月見、絶壁に建つ城、青石を使った城など、天気や自然現象とともに楽しむ城の絶景も多数掲載。
- 雨や雪、風といった気象条件ごとに、訪れるべき城やその見どころも提案しています。
章構成
- 気象と築城技術(雪・雨・風・その他の気象条件に対応した城の工夫)
- 美しきかな!城で楽しむ絶景(雲海、月見、絶壁、青石など)
- 天気を読んだ名将(歴史上の合戦で天気を活用した武将たち)
- 対談:千田嘉博×久保井朝美「天気」が分かれば、城あるきはもっと面白い!
著者について
- 久保井朝美氏は、NHK「サタデーウォッチ9」などで活躍する気象キャスターであり、防災士でもあります。生まれも育ちも城下町で、幼少期からお城に親しみ、日本100名城スタンプラリーなどを通じて全国の城を巡ってきた経験を持ちます。
読者へのメッセージと魅力
- 「お城めぐりに大事なのは“知識”ではなく“視点”」という著者の思いが込められ、天気という身近なテーマから歴史や城に興味を持てる構成。
- 写真やイラストも豊富で、初心者から城好きまで幅広く楽しめる内容。
- 「雨の日にこそ行きたいお城」「風の日を体感したいお城」など、天気によって異なる城の表情を楽しむ提案もあり、旅行や城めぐりの新たな楽しみ方を教えてくれます。
収録されている主な城とテーマ
気象テーマ | 代表的な城 |
雪 | 会津若松城、丸岡城、金沢城 |
雨 | 高知城、飫肥城 |
風 | 唐津城、鹿児島城、人吉城 |
雲海(秋の霧) | 竹田城、備中松山城、越前大野城 |
雲海(春の霧) | 今治城 |
月見 | 松本城 |
絶壁 | 知覧城、都於郡城、小田原城、九戸城 |
青石 | 和歌山城、徳島城 |
まとめ
『城好き気象予報士とめぐる名城37 天気が変えた戦国・近世の城』は、天気という新しい切り口で日本の城と歴史を読み解く一冊です。城の構造や合戦の裏にあった天気の影響、そして自然とともに楽しむお城の魅力を、気象予報士ならではの視点でわかりやすく解説しています。城めぐりの新たな楽しみ方や、歴史への新しいアプローチを求める人におすすめです。
城好き気象予報士とめぐる名城37 天気が変えた戦国・近世の城
寒冷地の屋根瓦に赤や緑が多い理由
**寒冷地の屋根瓦には赤色が多い**という指摘は、主に日本の山陰地方や日本海沿岸などの寒冷地でよく見られる現象です。特に「石州瓦」と呼ばれる島根県石見地方産の赤褐色の瓦が有名で、これらは耐寒性・耐久性に優れているため、雪深い地域や寒冷地で広く使われてきました。
赤瓦が多い理由
地域の土の色と釉薬によるもの
- 石州瓦の赤色は、現地で採れる赤褐色の粘土や、来待石(きまちいし)という鉱石を原料とした釉薬から生まれます。
耐寒性・耐凍害性
- 石州瓦は約1,200℃の高温で焼成されるため、吸水率が低く、凍結による割れに強いという特徴があります。これが寒冷地での普及につながっています。
景観との調和
- 雪や自然の緑、白壁とのコントラストが美しいため、赤瓦の景観が地域の特徴として定着しています。
緑色の瓦について
- 緑色の瓦も存在しますが、寒冷地で特に多いという明確な根拠は見当たりませんでした。日本の瓦の色は黒、銀、赤、青、緑など多様ですが、寒冷地で目立つのは圧倒的に赤(石州瓦)です。
- 緑色の瓦は、施釉による色付けで作られることが多く、地域の伝統や景観デザインに合わせて選ばれる場合がありますが、寒冷地特有の現象とは言えません。
まとめ
- **寒冷地の屋根瓦には赤色(特に石州瓦)が多い**のは事実で、その理由は耐寒性・耐凍害性・地域資源・景観性によるものです。
- **緑色の瓦が寒冷地に多い**という根拠は見当たりませんでした。緑瓦は存在しますが、寒冷地特有の色ではありません。
補足
「石州瓦は、火事の多い地域と、日本海の凍てつく寒冷地に耐える材が必要とされる地域性から、来待石を原料とした釉薬を用い、現在の陶器瓦として誕生しました。…耐火性と、日本海の凍てつく寒冷地に耐えうる耐凍害性と防水性を兼ね備えています。」
結論:寒冷地の屋根瓦には赤が多いが、緑が多いとは言えない。赤瓦は耐寒性・耐凍害性に優れ、地域の自然や景観と調和するため広く使われている。
青石を使った城の代表例
青石(特に緑色片岩や緑泥片岩)を使った城は、日本各地に存在しますが、特に有名なのは以下の城です。
徳島城(阿波青石)
- 徳島城は、地元特産の「阿波青石」(緑泥片岩)をふんだんに用いた石垣が特徴的です。
- 石垣だけでなく、旧徳島城表御殿庭園にも巨石の青石が使われており、10mを超える橋などが見どころです。
- 阿波青石は加工しやすく、独特の青緑色が雨に濡れると一層鮮やかに映えます。
和歌山城(紀州青石)
- 和歌山城では「紀州青石」と呼ばれる緑色片岩が石垣に使われています。
- 天守台の石垣は和歌山産の緑色片岩による野面積みで、雨の日にはブルーグリーンが美しく映えます。
丸岡城(越前青石/笏谷石)
- 福井県の丸岡城は、天守の瓦に「越前青石」とも呼ばれる笏谷石(しゃくだにいし)が使われています。
- 笏谷石は火山礫凝灰岩で、雨に濡れると鮮やかな青緑色になります。寒冷地のため、土製の瓦ではなく石製の瓦を採用しています。
その他
- 岸和田城(大阪府)でも青石が使われている例がありますが、徳島城や和歌山城ほど石垣全体に使われているわけではありません。
- 埼玉県の秩父青石など、地域によっては青石が採取され、用途は異なりますが、城や庭園などに使われています。
青石を使う理由と特徴
- 青石(緑色片岩・緑泥片岩)は、板状に割れやすく加工しやすいことから、築城の際にスピーディーな施工が可能でした。
- 地元で産出されるため運搬コストが低く、地域色を出すことができました。
- 雨に濡れると色が美しく映えるため、景観的な価値も高いとされています。
まとめ
青石を使った代表的な城は、徳島城(阿波青石)、和歌山城(紀州青石)、**丸岡城(越前青石/笏谷石)**などです。それぞれ地域特産の青石を活かし、石垣や瓦に独特の美しさと機能性を持たせています。