南アフリカの「白人虐殺(White Genocide)」主張の現状
概要
南アフリカにおける「白人虐殺」(White Genocide)という主張は、近年一部の政治家や著名人によって繰り返し取り上げられていますが、現地政府や司法、国際メディアの報道はこの主張を否定しています。
主張の発端と拡大
- アメリカのトランプ元大統領や実業家イーロン・マスク氏は、南アフリカで白人(特に農民)が組織的に殺害されている、あるいは土地を不当に奪われていると主張し、難民受け入れや制裁などの対応を求めてきました。
- こうした主張は、SNSや一部の保守系メディアで拡散され、「White Genocide」という言葉が国際的にも注目されるようになりました。
事実関係と現地の状況
- 南アフリカでは、白人農民を狙った殺害事件が発生しており、2017年には72人の白人農民が殺害されたと報道されています。
- ただし、南アフリカ国内の犯罪率は全体的に非常に高く、農場襲撃や殺人事件は白人に限らず多発しているため、白人だけが標的となっているわけではありません。
- アフリカーナー(オランダ系白人)のロビー団体や一部の白人コミュニティは、こうした事件を「ジェノサイド」として抗議活動を行っています。
政府・司法・国際機関の見解
- 南アフリカ政府は「白人虐殺」や人種差別的な政策の存在を否定しています。
- 2025年2月、南アフリカの裁判所は「白人ジェノサイドが現実に起きているとの主張は明らかに想像上のものであり、事実ではない」と公式に判断しました。
- この裁判では、白人至上主義団体への寄付をめぐる訴訟の中で、「白人虐殺」説がネット上の誤情報や既存の人種差別的な見解によって助長されていると指摘されています。
国際的な反応と論争
- トランプ政権は2025年、南アフリカの白人59人を難民として受け入れましたが、これに対してアメリカ国内外で「特別扱い」「証拠に基づかない政治的決定」との批判が起きています。
- BBCやNHKなどの国際メディアも、南アフリカで白人が組織的に虐殺されているという証拠はなく、裁判所の判断を支持する報道を行っています。
まとめ
- 南アフリカで白人農民が殺害される事件は確かに存在しますが、これを「ジェノサイド(集団虐殺)」と呼ぶ根拠は現地政府や司法、国際的な調査では認められていません。
- 「White Genocide」という主張は、主に政治的・イデオロギー的な文脈で拡散されているものであり、現実の犯罪状況や統計、司法判断とは一致しません。
- 南アフリカの犯罪や土地政策をめぐる議論は続いていますが、「白人虐殺」という表現は事実に基づくものではないとされています。