先進国の国別薬物依存・使用経験率
いくつかの代表的な国の大麻や覚醒剤など主要薬物の生涯経験率(%)の例は以下の通りです。
国別薬物生涯経験率(%)
- アメリカ(2014年):大麻44.2、覚醒剤4.9、MDMA6.6、コカイン14.8、ヘロイン1.8
- カナダ(2012年):大麻41.5、覚醒剤4.8、MDMA4.4、コカイン7.3、ヘロイン0.5
- フランス(2014年):大麻40.9、覚醒剤2.2、MDMA5.4、コカイン4.2、ヘロイン―
- イギリス(2014年):大麻29.2、覚醒剤10.3、MDMA9.2、コカイン9.8、ヘロイン―
- ドイツ(2012年):大麻23.1、覚醒剤3.1、MDMA2.7、コカイン3.4、ヘロイン―
- 日本(2017年):大麻1.4、覚醒剤0.5、MDMA0.2、コカイン0.3、ヘロイン―
これらは15〜64歳など調査対象年齢は国によって異なりますが、アメリカ、カナダ、フランス、イギリスなど欧米先進国では大麻の生涯経験率が約20〜45%と高い一方、日本は非常に低い水準です。覚醒剤やMDMA、コカインの経験率も先進国間で違いがありますが、日本はやはり低いです。
薬物使用障害(依存症)の具体的な国別比率は見つけられませんが、薬物生涯経験率の高さが依存リスクの高さにつながると考えられています。米国などでは薬物使用による社会問題や死亡例が増えていることも確認されています。
アメリカ人がフェンタニルに依存する主な理由
まず、フェンタニルは非常に強力な合成オピオイドであり、本来はがん患者などの重度な痛みを緩和する医療用鎮痛剤として使われています。しかし、その強力な効果と速効性から依存性が極めて高い薬物です。致死量がわずか2ミリグラムと非常に少ないため、誤用や乱用のリスクが大きいことも依存を招いています。
また、アメリカでは、価格が安く手に入りやすいことも依存拡大の要因です。ヘロインや従来の処方薬よりも安価で効果が強いため、薬物依存者がより安価なフェンタニルに移行しています。さらに違法製造されたフェンタニルは、他の薬物に混入されることも多く、利用者が知らずに摂取してしまう例もあります。
依存者の中には、例えば注射薬の使用をやめたくてフェンタニルを吸引し始めるケースもあり、フェンタニルの「ハイ」な感覚が強く、一度依存すると禁断症状が激しく耐え難いため、連続使用を余儀なくされます。こうした中毒の深刻さから、依存から抜け出すことが非常に困難な状況が広がっています。
特に、オキシコンチンなどの処方薬規制が強化された2000年代以降、代替薬としての違法フェンタニルの使用が増え、薬物依存者がより危険な薬物に手を伸ばす傾向が強まっています。
以上の点から、医療用由来の強い鎮痛効果、価格の安さ、違法薬物の混入と広がり、禁断症状の重さが、アメリカ人がフェンタニルに依存する主な理由とされています。
アメリカ人がフェンタニルを使い始める一番大きな理由
最初は痛みの緩和を目的にした場合が多いです。例えば、スポーツやケガによる筋肉や体の痛みを和らげるために処方薬として使い始めるケースが多く、合法的な鎮痛剤としての使用がきっかけで依存症になることが多いです。
しかし、フェンタニルは非常に強力な薬で高揚感(いわゆる「ハイ」な感覚)ももたらすため、その快感を得たいという理由で乱用に至ることもあります。路上生活者の証言では、「痛みを止める効果があるだけでなく、高揚感も得られ、とても強くてハイになれる」という理由から使用し続けてしまうとのことです。
また、一度依存すると薬を切らすと不快な離脱症状(体の痛みや震え)が起きるため、麻痺感や気持ちよさを求めるというよりは、体が薬を必要とする状態になり、ただ普通に生活するために薬を使い続けるという厳しい状況になることが多いと報告されています。
つまり、初めは痛みの緩和が目的であっても、その強烈な効果による高揚感に魅かれたこと、そして依存による禁断症状を避けるために使い続けざるを得ない事情が重なってフェンタニル使用が拡大しています。
2025年09月03日 米軍の艦艇8隻がベネズエラに集結 トランプ政権 麻薬取締りで圧力強化
米軍の軍艦7隻と原子力潜水艦1隻が、計4500人以上の海兵隊員や水兵を乗せて、南カリブ海およびベネズエラ近海に集結している。これはトランプ政権がラテンアメリカの麻薬組織への取締りを強化している中での動きであり、今後1週間以内に更に艦艇が追加される見通しである。ベネズエラ政府はこれに対抗し、1万5千人の兵士を国境に派遣するよう命じている。
ドローン映像では米海軍のミサイル駆逐艦がパナマ運河入口付近に停泊しており、ベネズエラへ向けている模様だ。ホワイトハウスはトランプ大統領の方針として、麻薬流入阻止のために全力を尽くし、関与した者を法の下で裁く意向を示している。米連邦政府は麻薬王マドゥロの逮捕に対する懸賞金を5000万ドルに引き上げたが、武力攻撃の可能性は明言していない。
ベネズエラのマドゥロ大統領は米軍が攻撃を仕掛けると主張し、徴兵や武力準備を呼びかけているが、反対派は入隊者は少数と指摘。一部分析ではマドゥロと中国共産党との関係が、トランプ政権が迅速に軍事行動に出た一因とされている。
2025年09月03日 米下院 中国フェンタニル阻止法案を可決 合成オピオイド対策強化
アメリカ連邦議会下院は2025年9月2日、「中国のフェンタニル阻止法案(Stop Chinese Fentanyl Act)」を賛成407票、反対4票で可決しました。この法案は、中国からアメリカへの違法フェンタニルおよびその前駆体化学物質の流入阻止を目的とし、制裁と法執行を強化します。具体的には、中国の個人や団体でフェンタニル関連の生産、販売、資金調達、輸送に関与する者に対し、米政府が制裁を科す権限を与え、麻薬取締活動に協力しない組織には責任追及も可能とします。
また、大統領が「国家非常事態」を宣言した場合、法案は定期的に議会に評価報告を義務付け、制裁や法執行の効果検証も行われます。議会は中国共産党の関与を強く批判しており、法案は超党派の支持を得て成立しています。
背景には、2023年度にアメリカ税関・国境取締局が2万ポンド以上の違法フェンタニルを押収し、その多くがメキシコ経由で密輸されている現状があります。中国は公式にフェンタニルの直接輸出を2019年に禁止しましたが、依然として中国企業が前駆体化学物質の主要供給源とされているため、アメリカは供給源を断つ強力な対応を進めています。
アメリカ政府はハイテク検査装置の配備やメキシコ・カナダとの国境協力強化、2023年に設立された「グローバル合成薬物脅威対策連合」など、国際的な連携を強化して薬物密売ネットワークと戦っていますが、米中の政治的緊張もあり成果は限定的です。
フェンタニルはモルヒネの約50倍、ヘロインの約100倍の効力を持ち、わずか2ミリグラムで致死量に達する最も致命的な合成オピオイドの一つで、2023年には米国での薬物過剰摂取死の約69%がフェンタニルなどによるものでした。
この法案はケンタッキー州選出の共和党アンディ・バール議員が提出し、「中共当局はフェンタニル危機のあらゆる段階で中心的役割を果たしている」と指摘し、強力な対策を呼びかけています。ノースカロライナ州のグレッグ・マーフィー議員は中国製フェンタニルのメキシコ経由の流入に警鐘を鳴らし、アイオワ州のザック・ヌーン議員はフェンタニルが若年層から中年層の最大の死因であることを強調し、国境警備と供給源責任追及の強化を求めています。
コメント