2025年09月03日 「反自衛隊」色強める市民運動 コンサート会場前でも抗議 隊員への社会的攻撃に懸念も
沖縄で反自衛隊運動が激しさを増している。
発端は8月6日、宮古島駐屯地司令の比嘉隼人1等陸佐と市民団体との防災訓練会場を巡る口論で、市民団体側は「威圧的恫喝」と主張し謝罪を要求。その後も抗議は収束せず、法的措置も視野に入れている。防衛省は処分を見送り、旅団長が口頭指導を行ったのみである。
その後、8月31日には宜野湾市の沖縄コンベンションセンターで行われた陸自第15音楽隊と米海兵隊音楽隊によるジョイントコンサートでも抗議が展開された。市民団体は「自衛隊は沖縄から出ていけ」「ミサイルを持ち帰れ」「日米合同音楽会は戦争訓練ののろし」と掲げ、天皇制批判ののぼりまで見られた。来場者との口論も発生している。
背景には、これまで米軍基地への抗議が中心だった沖縄の市民運動が、近年は自衛隊を直接標的にする方向へシフトしていることがある。専門家は、自衛隊員への社会的圧力や地域住民との亀裂を深め、日本の安全保障体制の基盤を揺るがす可能性があると警鐘を鳴らしている。
まとめ
- 発端は宮古島駐屯地での市民団体と司令の口論。
- 防衛省は司令を処分せず、市民側は強硬姿勢を継続。
- 文化的行事(日米音楽隊コンサート)にまで抗議が拡大。
- 米軍基地中心だった運動が「反自衛隊」へシフト。
- 専門家は、自衛隊員への社会的攻撃や地域分断を懸念。
反自衛隊運動の背景と特徴
- 2025年5月15日の祖国復帰53年の節目に、沖縄各地で「反自衛隊」や「反基地」のデモや集会が開催された。スローガンは「日米安保=戦争同盟粉砕」「中国侵略戦争阻止」など過激で、市民団体の多くは極左団体が主導しているとされる。参加者の主張は「軍隊は住民を守らない」「自衛隊は沖縄を侵略戦争に巻き込む」といったものである。
- 以前は主に米軍基地に対する反対運動が中心だったが、自衛隊の南西地域へのシフト配備に伴い、自衛隊に対する直接的な反発が強まっている。特に宮古島では司令官と市民団体の口論や抗議が激化し、司令官の威圧的な言動に対する反発が大きい。
- 沖縄県の政治状況も影響しており、県政が辺野古新基地建設などに反対姿勢を強める中、反基地イデオロギーが強く、これが安全保障面でリスクとなっている。2025年の県議会では野党勢力が多数を占め、県政の方針と国の安全保障政策との軋轢が続いている。
- 一方で、沖縄の若い世代では自衛隊への理解や賛成の意見も増えつつあり、全体の意識には変化も見られる。中国の軍事的脅威を意識し、自衛隊の存在を容認する層も拡大している。
以上から、沖縄の反自衛隊運動は、歴史的な戦争体験や米軍基地問題の文脈に加えて、近年の自衛隊の南西シフト配備、県政の反基地姿勢、そして極左団体の影響が絡み合って激化しているといえる。安全保障にとって地元の理解や連携は重要であり、亀裂が深まることで地域社会や防衛体制に影響を及ぼす可能性が指摘されている。
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著者の岡本隆司氏は京都府立大学教授で東洋史の専門家。複雑な中国史をシステマティックに世界史の中で捉えることを目指しており、この本は中国史のマクロな見方を学ぶのに適しています。
中国は多民族国家
漢民族を中心に55の少数民族が存在しています。漢民族は中国人口の約91〜92%を占め、残りの少数民族は全人口の約8〜9%にあたります。少数民族は主に西南部や西北部、北部などの辺境地域に集中して居住しており、民族自治区も設けられています。中国政府は多民族共生と少数民族の保護を政策として掲げ、民族平等を憲法で保障し、民族語の教育や自治権の尊重を進めています。中国の多民族構成は長い歴史を経て形成され、民族間の交流と融合を推進しながら統一国家を維持しています。
具体的には、新疆ウイグル自治区や広西チワン族自治区、チベット自治区など5つの民族自治区があり、少数民族の自治地方は中国の総面積の64%以上を占めています。民族区域自治制度は中国が民族問題を解決する基本政策として機能し、少数民族の言語・文化の保護と経済発展に寄与しています。
簡単にまとめると、中国の「多民族国家」は漢民族の圧倒的多数派を背景としながらも、多様な55の少数民族が共存し、国家の統一と民族自治のバランスをとっている体制といえます。
日本は多民族国家
日本は一般に「単一民族国家」と言われることが多いですが、実際は単一民族で構成されているわけではなく、多民族的な側面をもつ社会といえます。
OECDの定義では、特定の民族が95%以上を占める国を単一民族国家としています。日本の大和民族は約96%を占めており、この定義には合致しますが、北海道のアイヌ民族や沖縄の琉球民族など独自の文化を持つ民族も存在しています。また、外国籍の在留者や日本国籍を取得した多様な民族的・文化的背景を持つ人々が増加しているため、厳密に単一民族国家とは言い切れない状況です。
さらに、法的・統計的にも「日本人=単一民族」とする根拠はなく、外国にルーツを持つ人々(移民)が約400万人おり、すでに多民族社会であるとの指摘もあります。国籍と民族は異なるため、日本国籍を持つ人でも多様な民族的背景を持つことが多いです。
歴史的にも日本は多民族の流入と交流の場所であり、「多民族共生国家」という観点から日本をとらえ直す動きもあります。
まとめると、
- 日本は大和民族が多数を占めるが、アイヌ民族、琉球民族などの少数民族が存在し、
- 在留外国人やその子ども、日本国籍を取得した多様な民族的背景の人々も多数いるため、
- 厳密には「単一民族国家」ではなく多民族的な社会となっている、
というのが現代の日本の実情です。
したがって、「日本は多民族国家」と言っても一定の根拠があり、単一民族国家という単純な言葉では現代の多様な日本社会を説明しきれない状況にあります。
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