世界史とつなげて学ぶ 中国全史 [岡本 隆司]

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世界史とつなげて学ぶ 中国全史
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  • 約3000年にわたる中国の歴史を、世界史の流れと結びつけながら広く捉える入門書です。中華文明の誕生から現代の中華人民共和国の成立まで、歴史の大きな流れや地政学的背景、多民族国家としての複雑さをわかりやすく解説しています。

内容のポイントは以下の通りです。

  • 中国史を単独でなく、ユーラシア大陸の広い歴史的文脈の中で理解する視点を重視。
  • 黄河文明の起源や中華思想の生まれた背景、民族移動や気候変動の影響を描く。
  • 隋・唐・宋など王朝の興亡や交易、文化の交流、多民族国家としての中国の構造を詳細に紐解く。
  • モンゴル帝国の時代をユーラシア世界の変動として捉え、明・清の時代の地域分立や官民の乖離を考察。
  • 20世紀の革命と国民国家形成、現代中国の政治経済体制の成立過程も解説。
  • 地理や文明の生態史観的な視点も交え、中国の歴史のマクロ的理解を促進。

特に、日本や西洋の標準的な国民国家モデルとは異なる、中国の多民族かつ連邦的な歴史構造を深く掘り下げている点が評価されています。また、中国と世界の接点や相互作用を意識することで、現代中国の理解に役立つ知識が多く得られる本です。

著者の岡本隆司氏は京都府立大学教授で東洋史の専門家。複雑な中国史をシステマティックに世界史の中で捉えることを目指しており、この本は中国史のマクロな見方を学ぶのに適しています。

 

 

中国は多民族国家

漢民族を中心に55の少数民族が存在しています。漢民族は中国人口の約91〜92%を占め、残りの少数民族は全人口の約8〜9%にあたります。少数民族は主に西南部や西北部、北部などの辺境地域に集中して居住しており、民族自治区も設けられています。中国政府は多民族共生と少数民族の保護を政策として掲げ、民族平等を憲法で保障し、民族語の教育や自治権の尊重を進めています。中国の多民族構成は長い歴史を経て形成され、民族間の交流と融合を推進しながら統一国家を維持しています。

具体的には、新疆ウイグル自治区や広西チワン族自治区、チベット自治区など5つの民族自治区があり、少数民族の自治地方は中国の総面積の64%以上を占めています。民族区域自治制度は中国が民族問題を解決する基本政策として機能し、少数民族の言語・文化の保護と経済発展に寄与しています。

簡単にまとめると、中国の「多民族国家」は漢民族の圧倒的多数派を背景としながらも、多様な55の少数民族が共存し、国家の統一と民族自治のバランスをとっている体制といえます。

 

 

日本は多民族国家

日本は一般に「単一民族国家」と言われることが多いですが、実際は単一民族で構成されているわけではなく、多民族的な側面をもつ社会といえます。

OECDの定義では、特定の民族が95%以上を占める国を単一民族国家としています。日本の大和民族は約96%を占めており、この定義には合致しますが、北海道のアイヌ民族や沖縄の琉球民族など独自の文化を持つ民族も存在しています。また、外国籍の在留者や日本国籍を取得した多様な民族的・文化的背景を持つ人々が増加しているため、厳密に単一民族国家とは言い切れない状況です。

さらに、法的・統計的にも「日本人=単一民族」とする根拠はなく、外国にルーツを持つ人々(移民)が約400万人おり、すでに多民族社会であるとの指摘もあります。国籍と民族は異なるため、日本国籍を持つ人でも多様な民族的背景を持つことが多いです。

歴史的にも日本は多民族の流入と交流の場所であり、「多民族共生国家」という観点から日本をとらえ直す動きもあります。

まとめると、

  • 日本は大和民族が多数を占めるが、アイヌ民族、琉球民族などの少数民族が存在し、
  • 在留外国人やその子ども、日本国籍を取得した多様な民族的背景の人々も多数いるため、
  • 厳密には「単一民族国家」ではなく多民族的な社会となっている、
    というのが現代の日本の実情です。

したがって、「日本は多民族国家」と言っても一定の根拠があり、単一民族国家という単純な言葉では現代の多様な日本社会を説明しきれない状況にあります。

 

 

 

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