アメリカの内陸部や地方都市が居住地として避けられる理由

住宅の買いやすさ(手頃さ)は世界的な課題である

  • Housing Affordability Is A Global Issue

世界の住宅価格所得倍率(年収に対する住宅価格の比率)を比較したデータによると、世界平均は11.2倍で、国によって購入のしやすさに大きな差があります。

サウジアラビアやUAE、アメリカなどは年収に対して住宅価格が比較的安く買いやすい傾向にあります。一方、シリアやスリランカ、中国、アジア諸国では倍率が非常に高く、住宅の購入が困難な状況です。

日本の住宅価格所得倍率は10.3倍で、世界第109位となっています。世界平均(11.2倍)よりは若干低いものの、アメリカ(4.5倍)などの買いやすい国と比べると年収に対して住宅負担が大きい状況です。

住宅の購入しやすさは、国の経済規模や豊かさそのものよりも、住宅価格が個人の収入水準とどれだけ連動しているかによって決まります。

 

 

アメリカは住宅が購入しづらいと聞いている。4.5なのは安すぎない?

アメリカの住宅価格所得倍率が「4.5倍」と低く算出されているのは、全米の平均値(中央値)を使っているためです。

アメリカではニューヨークやサンフランシスコなどの大都市圏で住宅価格が極端に高騰している一方、地方や中西部には格安の物件が多数存在します。これらが全米平均の数値を引き下げています。

さらに、このデータには住宅ローンの金利が含まれていません。現在のアメリカは歴史的な高金利となっており、価格そのものよりも毎月のローン返支負担が重くなっていることが「購入しづらい」と感じる主な原因です。

全米平均のデータと、実際の体感(買いづらさ)にズレが生じる主な理由は次の3点です。

地域による極端な差

都市部と地方の価格差が非常に激しいのがアメリカの特徴です。人気の沿岸部(カリフォルニア州やニューヨーク州など)では倍率が8〜10倍を超えることも珍しくありませんが、内陸部や地方都市では2〜3倍程度の地域も多く存在します。全米の中央値をとると、これらの安い地域が全体を押し下げる結果となります。

高金利による毎月の返済負担

この指標(住宅価格÷年収)は「物件の価格そのもの」だけを比較しており、住宅ローンの金利コストが考慮されていません。現在のアメリカでは住宅ローン金利が7%前後に達しており、購入時の金利負担が以前の2倍以上に膨らんでいます。物件価格が年収の4.5倍であっても、実際の毎月の支払いは非常に重くなっています。

住宅供給の偏りと在庫不足

大都市圏では需要に対して家数が圧倒的に不足しており、手頃な価格帯の住宅が市場に出てきません。そのため、実際に家を探している層にとっては「買える価格の家が存在しない」という状況が起きています。

  • このように、全米一括の統計上の数値(4.5倍)と、多くの人が直面している大都市部や高金利下での実感が大きく食い違っています。

 

 

アメリカの内陸部や地方都市が居住地として避けられる理由

アメリカの内陸部や地方都市が居住地として避けられる主な理由は、雇用の選択肢の乏しさ、公共インフラや生活利便性の低さ、保守的な地域社会への馴染みにくさ、そして自然災害や治安のリスクにあります。

住宅価格が安くても、収入や暮らしの質、将来性の面でリスクが存在するため、多くの人が都市部を選び続ける傾向があります。

好条件の雇用機会が少ない

大都市圏(沿岸部など)にはIT、金融、医療、専門サービスなどの高給職種が集積しています。一方、内陸部や地方都市の主要産業は製造業、農業、エネルギー産業、あるいは低賃金のサービス業が中心です。キャリアアップの選択肢や転職の機会が限られます。

公共インフラと利便性の低さ

車社会が前提となっており、公共交通機関がほぼ存在しない地域が多くあります。また、高度な医療を提供する総合病院、質の高い教育機関、多様な商業施設までの距離が遠く、日常の移動負担が大きくなります。

保守的な風土と閉鎖的なコミュニティ

内陸部や地方は政治的・宗教的に非常に保守的な地域が多く見られます。外部からの移住者や異なる価値観、多様な文化背景を持つ人々にとって、地域社会に溶け込むのが難しい場合があります。

気候変動と自然災害のリスク

中西部や南部では、ハリケーン、竜巻(トルネード)、激しい寒波、あるいは乾燥による大規模な山火事など、厳しい気象条件や自然災害の発生率が高いエリアが多く存在します。これに伴い、住宅保険料が急騰する問題も起きています。

衰退リスクと治安・社会問題

いわゆるラストベルト(錆びついた工業地帯)などに代表される地方都市では、人口減少や産業の衰退に伴い、自治体の税収が不足しています。その結果、警察機能の低下による治安の悪化や、薬物(オピオイド)問題の深刻化などが顕著なエリアもあります。

 

 

アメリカで退職者が住みやすい都市。物価は高すぎず、公共交通機関が整っているなど

アメリカで「物価が抑えめ」かつ「公共交通機関が比較的充実している」という条件を満たし、退職者に人気のある都市には、主に中東部や中西部の歴史ある都市が挙げられます。

アメリカの車社会において、公共交通網が整備されている都市はニューヨークなどの超高物価地域に集中しがちです。しかし、旧産業都市(ラストベルト周辺など)や古くから発展した都市では、中心部の生活コストを抑えつつバスや路面電車を活用できる環境が整っています。

ピッツバーグ(ペンシルベニア州)

元々は鉄鋼業で栄えた都市ですが、現在は医療・教育都市へと転換しています。世界的な医療機関であるピッツバーグ大学医学センター(UPMC)があり、高齢者向けの医療環境が非常に充実しています。

  • 物価・住宅費が全米平均より低く抑えられている。
  • バスやライトレール(T)などの公共交通網網が整備されている。
  • ペンシルベニア州の制度により、65歳以上の高齢者は州内の公共交通機関が無料で使用可能。

フィラデルフィア(ペンシルベニア州)

東海岸の主要都市の中では生活費が比較的手頃で、全米でもトップクラスの徒歩移動・公共交通の利便性を誇ります。

  • 地下鉄、バス、路面電車、郊外電車(SEPTA)が網羅されている。
  • 65歳以上の高齢者は主要な公共交通機関を無料で利用できる。
  • 大規模な医療機関が多く、車を持たずに都市生活を送ることができる。

ミネアポリス(ミネソタ州)

冬の寒さは厳しいものの、都市計画や福祉の充実度で常に上位にランクインする都市です。

  • ライトレールや路線バス網が発達しており、自転車道や歩行者用通路(ビル群をつなぐ屋内歩道スカイウェイ)も整備されている。
  • 65歳以上を対象とした割引運賃(Honored Citizen Pass)が用意されている。
  • 全米トップクラスの医療機関(メイヨー・クリニックの本部も同州内)へのアクセスが良い。

クリーブランド(オハイオ州)

エリー湖の南岸に位置する都市で、非常に安い住宅コストと高度な医療インフラが魅力です。

  • 全米屈指の病院である「クリーブランド・クリニック」が存在する。
  • 地下鉄やバス(RTA)が運行しており、高齢者向けの運賃割引や移動支援プログラムがある。
  • 不動産価格が全米平均を大きく下回っており、居住コストを削減しやすい。

 

 

加えて気候が比較的温暖、住宅価格が高すぎない所

アメリカで「温暖な気候」「抑えめな住宅価格・物価」「公共交通機関の利便性」をすべて兼ね備えた都市は非常に限られます。アメリカの温暖な都市(サンベルト)の多くは車社会であり、公共交通機関が非常に乏しいためです。

その中でも、バス路線やBRT(バス高速輸送システム)が整備されていたり、都市構造がコンパクトで暮らしやすい都市として、ツーソン、アルバカーキ、サバンナ、フィラデルフィア、ピッツバーグなどが挙げられます。

ツーソン(アリゾナ州)

年間を通して温暖で乾燥した気候であり、全米の退職者に高い人気を誇る都市です。フェニックスなどの大都市と比べて住宅価格や生活費が割安に抑えられています。

  • 路線バス「Sun Tran」や路面電車「Sun Link」が運行しており、中心部や大学周辺の移動に便利です。
  • 医療機関が充実しており、高齢者向けのコミュニティやアクティビティが豊富です。
  • 冬場は非常に快適ですが、夏の連日の猛暑には注意が必要です。

アルバカーキ(ニューメキシコ州)

標高が高いため夏でも比較的過ごしやすく、年間を通して晴天が多い穏やかな気候が特徴です。住居費や日常の物価が全米平均より低く設定されています。

  • BRT(バス高速輸送システム)「ART」が市内主要ルートを走っており、車なしでの移動選択肢が存在します。
  • 文化施設や自然が多く、穏やかなペースで生活を楽しむことができます。
  • 一部の地域で治安に注意が必要なため、住むエリアの厳選が求められます。

サバンナ(ジョージア州)

歴史的で美しく街並みがコンパクトにまとまった南部沿岸の都市です。冬でも温暖で過ごしやすく、ゆったりとした時間が流れています。

  • 歴史地区(ダウンタウン)周辺は徒歩移動が容易で、無料のシャトルバスやフェリー(DOT)も利用できます。
  • 住宅価格や税金面で退職者に優しい環境が整っています。
  • 夏場は湿度が高く蒸し暑くなる時期があります。

フィラデルフィア(ペンシルベニア州)

東海岸の大都市の中では住宅価格が非常に手頃で、全米トップクラスに公共交通機関が発達している都市です。

  • 電車・地下鉄・バス・路面電車(SEPTA)網が網羅されており、車なしでの生活が完結します。
  • 医療水準が全米最高峰であり、シニア層にとって大きな安心要素となります。
  • 四季がはっきりしており、南部ほどの温暖さはありません(冬に降雪あり)。

ピッツバーグ(ペンシルベニア州)

かつての工業都市から医療・テクノロジー都市へと脱皮した街で、住宅価格の安さと生活費の低さが際立っています。

  • バスやライトレール(T)などの公共交通機関がしっかりと機能しています。
  • 世界的な医療機関(UPMC)が集積しており、高齢者医療の環境が優れています。
  • 冬は寒く雪が降るため、温暖さを最優先する場合には検討が必要です。

 

 

Home Price-to-Income Ratio

Rank Country Ratio
1 🇸🇦 Saudi Arabia 3.0
2 🇦🇪 UAE 3.0
3 🇿🇦 South Africa 3.4
4 🇰🇵 North Korea 3.5
5 🇴🇲 Oman 3.6
6 🇳🇷 Nauru 4.0
7 🇺🇸 U.S. 4.5
8 🇹🇻 Tuvalu 5.0
9 🇳🇦 Namibia 5.2
10 🇹🇱 Timor-Leste 5.2
11 🇵🇲 Saint Pierre and Miquelon 5.2
12 🇶🇦 Qatar 5.3
13 🇧🇹 Bhutan 5.5
14 🇧🇿 Belize 5.5
15 🇸🇧 Solomon Islands 5.5
16 🇵🇼 Palau 5.5
17 🇹🇴 Tonga 5.5
18 🇵🇸 State of Palestine 5.6
19 🇱🇦 Laos 5.7
20 🇩🇲 Dominica 5.7
21 🇳🇮 Nicaragua 5.8
22 🇻🇺 Vanuatu 5.8
23 🇬🇩 Grenada 5.9
24 🇫🇯 Fiji 6.0
25 🇵🇬 Papua New Guinea 6.0
26 🇼🇸 Samoa 6.0
27 🇹🇹 Trinidad and Tobago 6.1
28 🇲🇺 Mauritius 6.2
29 🇷🇪 Réunion 6.2
30 🇯🇲 Jamaica 6.2
31 🇱🇨 Saint Lucia 6.2
32 🇾🇹 Mayotte 6.5
33 🇸🇭 Saint Helena 6.5
34 🇧🇪 Belgium 6.5
35 🇰🇮 Kiribati 6.5
36 🇸🇨 Seychelles 6.6
37 🇩🇰 Denmark 6.6
38 🇵🇾 Paraguay 6.7
39 🇫🇲 Micronesia 6.7
40 🇨🇻 Cabo Verde 6.8
41 🇨🇾 Cyprus 6.8
42 🇮🇸 Iceland 7.0
43 🇰🇳 Saint Kitts and Nevis 7.0
44 🇲🇭 Marshall Islands 7.0
45 🇱🇾 Libya 7.2
46 🇸🇿 Eswatini 7.2
47 🇲🇻 Maldives 7.2
48 🇳🇱 Netherlands 7.2
49 🇧🇧 Barbados 7.2
50 🇮🇪 Ireland 7.3
51 🇱🇸 Lesotho 7.4
52 🇯🇴 Jordan 7.4
53 🇦🇺 Australia 7.5
54 🇰🇲 Comoros 7.6
55 🇩🇯 Djibouti 7.8
56 🇫🇮 Finland 7.8
57 🇪🇸 Spain 7.8
58 🇨🇮 Côte d’Ivoire 8.0
59 🇸🇳 Senegal 8.0
60 🇲🇲 Myanmar 8.0
61 🇧🇯 Benin 8.1
62 🇹🇬 Togo 8.1
63 🇲🇾 Malaysia 8.1
64 🇮🇶 Iraq 8.1
65 🇱🇻 Latvia 8.1
66 🇳🇴 Norway 8.1
67 🇷🇼 Rwanda 8.2
68 🇬🇦 Gabon 8.2
69 🇸🇹 Sao Tome and Principe 8.2
70 🇲🇬 Madagascar 8.3
71 🇨🇲 Cameroon 8.3
72 🇨🇬 Congo 8.3
73 🇬🇲 Gambia 8.3
74 🇬🇧 UK 8.3
75 🇿🇲 Zambia 8.4
76 🇲🇽 Mexico 8.4
77 🇸🇲 San Marino 8.5
78 🇪🇭 Western Sahara 8.6
79 🇧🇫 Burkina Faso 8.6
80 🇲🇷 Mauritania 8.6
81 🇧🇭 Bahrain 8.6
82 🇲🇼 Malawi 8.8
83 🇲🇱 Mali 8.9
84 🇧🇸 Bahamas 8.9
85 🇭🇳 Honduras 8.9
86 🇸🇱 Sierra Leone 9.0
87 🇳🇿 New Zealand 9.0
88 🇪🇷 Eritrea 9.1
89 🇸🇩 Sudan 9.2
90 🇬🇼 Guinea-Bissau 9.2
91 🇱🇷 Liberia 9.2
92 🇮🇳 India 9.2
93 🇧🇬 Bulgaria 9.2
94 🇨🇦 Canada 9.4
95 🇧🇮 Burundi 9.5
96 🇦🇩 Andorra 9.5
97 🇱🇮 Liechtenstein 9.5
98 🇨🇷 Costa Rica 9.5
99 🇧🇲 Bermuda 9.5
100 🇸🇸 South Sudan 9.6
101 🇳🇪 Niger 9.6
102 🇮🇹 Italy 9.7
103 🇨🇭 Switzerland 9.7
104 🇬🇳 Guinea 9.8
105 🇸🇪 Sweden 9.9
106 🇸🇴 Somalia 10.2
107 🇬🇶 Equatorial Guinea 10.2
108 🇵🇦 Panama 10.2
109 🇯🇵 Japan 10.3
110 🇦🇹 Austria 10.3
111 🇹🇩 Chad 10.4
112 🇧🇴 Bolivia 10.5
113 🇨e Congo 10.6
114 🇩🇪 Germany 10.7
115 🇰🇿 Kazakhstan 10.9
116 🇷🇴 Romania 10.9
117 🇨🇫 Central African Republic 11.1
118 🇪🇨 Ecuador 11.1
119 🇦🇴 Angola 11.2
120 🇧🇦 Bosnia and Herzegovina 11.4
121 🇰🇼 Kuwait 11.5
122 🇬🇷 Greece 11.5
123 🇱🇺 Luxembourg 11.5
124 🇪🇪 Estonia 11.8
125 🇫🇷 France 11.8
126 🇹🇳 Tunisia 11.9
127 🇬🇹 Guatemala 11.9
128 🇪🇬 Egypt 12.0
129 🇲🇩 Moldova 12.1
130 🇲🇹 Malta 12.1
131 🇸🇮 Slovenia 12.1
132 🇺🇦 Ukraine 12.2
133 🇧🇩 Bangladesh 12.6
134 🇹🇷 Türkiye 12.6
135 🇵🇹 Portugal 12.6
136 🇱🇹 Lithuania 12.7
137 🇲🇪 Montenegro 13.1
138 🇸🇰 Slovakia 13.2
139 🇭🇷 Croatia 13.2
140 🇬🇪 Georgia 13.3
141 🇵🇱 Poland 13.3
142 🇲🇰 North Macedonia 13.3
143 🇺🇾 Uruguay 13.7
144 🇧🇾 Belarus 13.8
145 🇵🇰 Pakistan 13.9
146 🇦🇫 Afghanistan 14.1
147 🇮🇱 Israel 14.1
148 🇲🇦 Morocco 14.2
149 🇰🇬 Kyrgyzstan 14.3
150 🇦🇿 Azerbaijan 14.5
151 🇭🇺 Hungary 14.6
152 🇨🇿 Czechia 14.9
153 🇺🇿 Uzbekistan 15.3
154 🇸🇬 Singapore 15.5
155 🇨🇱 Chile 15.6
156 🇦🇱 Albania 15.7
157 🇩🇴 Dominican Republic 15.8
158 🇷🇸 Serbia 15.9
159 🇰🇪 Kenya 16.0
160 🇩🇿 Algeria 16.0
161 🇦🇲 Armenia 17.2
162 🇨🇴 Colombia 17.5
163 🇲🇳 Mongolia 17.6
164 🇱🇧 Lebanon 18.3
165 🇧🇷 Brazil 18.3
166 🇮🇩 Indonesia 18.5
167 🇻🇪 Venezuela 18.9
168 🇵🇪 Peru 19.0
169 🇦🇷 Argentina 22.7
170 🇻🇳 Vietnam 23.5
171 🇹🇭 Thailand 24.0
172 🇲🇨 Monaco 25.0
173 🇮🇷 Iran 25.1
174 🇰🇷 South Korea 26.0
175 🇳🇬 Nigeria 28.2
176 🇵🇭 Philippines 30.1
177 🇰🇭 Cambodia 32.5
178 🇳🇵 Nepal 32.8
179 🇨🇳 China 34.6
180 🇱🇰 Sri Lanka 40.8
181 🇸🇾 Syrian Arab Republic 86.7

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