2000年代に見た画像には「80歳だと払った以上に年金を受け取る。若い世代は払った金額に満たない年金しかもらえないから払い損」と表示されていた。あれは事実?

若い世代は払った金額に満たない年金しかもらえないから払い損?

2000年代当時に出回っていた「80歳で払い得、若者は払い損」という言説は、当時の「世代間損益」を計算した試算データとしては存在していたため、その数値や表が提示されていたこと自体は事実(実際に公表・報道されていたデータ)です。

ただし、現在の年金制度の仕組みや実際の給付実態から見ると、すべてをそのまま事実(現実の損得)として捉えることはできません。

2000年代にその画像が存在した理由

2000年代前半、内閣府の年閣試算や多くの経済学者・メディアが「世代別の負担と受給の損益分岐点」を計算した試算(損得計算)を盛んに発表していました。

当時の試算結果

主に1940年代~1950年代生まれ(当時の高齢者層)は、平均寿命まで生きれば支払った保険料以上の年金を受け取れる(プラス)一方、1980年代以降生まれ(当時の若者層)は、支払った額を下回る(マイナス)という計算結果が出されていました。

画像の正体

テレビの解説画面や週刊誌、インターネットの掲示板などで、この「何歳まで生きれば損得の境界(80歳など)」を示したグラフや表が画像として広く拡散されていました。

なぜ「単純な損得」だけでは語れないのか

当時の試算値がそのまま現実の「払い損」を意味しない理由には、以下の3つの要素があります。

インフレ(物価上昇)・賃金上昇の影響

過去の高齢者が支払った保険料の額面と、現在・将来の若者が支払う保険料の額面を単純比較することはできません。年金制度は「金銭の貯金」ではなく「現役世代の仕送りを高齢者に回す(再分配)」仕組みであり、物価や賃金の上昇に応じて給付額も調整されます。

国庫負担(税金)の投入

基礎年金(国民年金)の半分は、国(税金)から支払われています。保険料として支払った額だけでなく、税金からも年金給付に充てられているため、個人が「支払った保険料」だけで計算すると実態を見誤ることになります。

制度改正(2004年年金制度改革)

2004年に大規模な制度改革が行われ、「保険料の上限固定」と「マクロ経済スライド(現役世代の減少や寿命の伸びに合わせて給付水準を自動調整する仕組み)」が導入されました。これにより、制度全体の長期的な持続可能性が高められました。

現状の捉え方

世代間での不均衡(少子高齢化に伴う受給倍率の変化)が存在すること自体は構造的な事実ですが、「若い世代は100%払い損になる」というわけではありません。また、公的年金には長生きリスクに対する「終身保障」や、障害・死亡時に支給される「障害年金」「遺族年金」といった保険機能(リスクヘッジ)が含まれている点も考慮する必要があります。

 

 

現時点での最新情報で、各年代(世代)ごとの支払額と受給額を知りたい

厚生労働省の公表データ(財政検証に基づく「給付と負担の倍率」試算)によると、生まれ年(世代)が若いほど支払った保険料に対して受け取る給付の倍率が下がる傾向にあります。

厚生年金の標準的なモデル(会社員の夫と専業主婦の妻が65歳から平均余命まで受給する場合)における世代ごとの試算結果は以下のとおりです。

世代ごとの支払額と受給額(倍率)の試算例

厚生労働省が公表している「給付と負担の関係」の推計データによるモデルケースの比較です。

生まれ年(世代) 主な年代 生涯の支払額(負担) 生涯の受給額(給付) 給付/負担 倍率
1940年生まれ 86歳 約1,000万円 約5,200万円 約5.2倍
1955年生まれ 71歳 約2,400万円 約7,400万円 約3.1倍
1970年生まれ 56歳 約4,100万円 約9,400万円 約2.3倍
1985年生まれ 41歳 約5,000万円 約1億1,000万円 約2.2倍
2000年生まれ 26歳 約5,700万円 約1億3,000万円 約2.3倍

※数値は厚生労働省の財政検証における標準モデル(物価・賃金上昇率を反映した将来の公称額ベース)をもとにした推計例です。

※支払額には本人負担分だけでなく、事業者(会社)負担分や税金分も加味した試算が含まれます。

試算数値を見る際の注意点

若年世代の金額が大きい理由(名目額の影響)

将来の受給額や支払額の金額自体は、長期的な物価上昇や賃金上昇を見込んでいるため、若い世代ほど見た目の金額(額面)が非常に大きくなります。

倍率が頭打ち・安定する理由

1940年生まれなどの高い倍率は、制度創設初期に十分な保険料率が設定されていなかったことや、過去の高度経済成長の影響によるものです。2004年の制度改革(保険料率の上限設定とマクロ経済スライドの導入)以降は、1970年代以降生まれの世代で倍率が概ね2倍台前半で安定する設計となっています。

自己負担のみで見た場合

厚生年金の場合、保険料の半分は会社が負担しています(労使折半)。また、基礎年金の給付財源の50%には国庫負担(税金)が投入されているため、「本人が直接支払った保険料のみ」と比較した場合は、どの世代においても受給総額が支払額を上回る計算になります。

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