固有種の保護と生物多様性の維持を図るため
オーストラリアにおけるネコの駆除は、生態系保護を目的とした国家規模の対策で、特に野良ネコが在来種の動物に与える甚大な被害を防ぐために行われています。年間で野良ネコにより15億匹もの哺乳類や鳥類、爬虫類などが殺されており、多くの絶滅危惧種に深刻な脅威となっているため、政府は約58億円の予算を投じて駆除事業に取り組んでいます。
駆除の方法としては、AI技術を使って在来種と野良ネコを区別し、捕獲用の罠を設置するほか、射殺プログラムや捕獲後の安楽死も実施しています。さらに飼い猫に対しても夜間外出禁止や飼育数制限、猫のいない区域の設定などの厳しい管理措置が検討されています。
こうした対策は、固有種の保護と生物多様性の維持を図るために不可欠とされており、野良ネコ駆除はオーストラリア政府が「ネコとの戦争」と宣言するほどの国家的プロジェクトとなっています。
ただし、動物愛護の観点からは、駆除手法の残酷さや倫理面で批判もあり、議論を呼んでいます。
以上のことから、オーストラリアのネコ駆除政策は、外来種が生態系に与える深刻な影響への対処として、科学技術を活用しつつ大規模かつ厳格に行われているものです。
ヨーロッパからの移民が持ち込んだネコ
オーストラリアにおけるネコは外来種であり、その歴史は約200年前、ヨーロッパからの移民が初めて到着した時期にさかのぼります。この時、イギリス人が愛玩動物として持ち込んだイエネコが野生化し、ノネコ(野良ネコ)となって繁殖を広げました。
オーストラリア大陸にはもともとネコは存在せず、在来の動物は大型肉食獣がほとんどいないため防御力が弱く、外来のノネコによる捕食が生態系に甚大な影響を与えています。結果として、多数の哺乳類や鳥類、爬虫類が絶滅し、現在も多くの在来種が減少の危機に瀕しています。
この歴史的経緯が背景にあり、オーストラリア政府が外来種駆除の重点対象としてネコの駆除を行い、大規模な対策を講じているわけです。
まとめると、オーストラリアのネコは18世紀末から19世紀初頭にかけてヨーロッパ人の移民によって持ち込まれた外来種であり、その野生化が現在の生態系破壊の主要原因の一つとなっています。
