インドのバランス外交は、中国ロシアへの「資源依存」

2025年12月10日 印防衛企業がロシアに接近、西側との共同開発に支障 制裁リスクも

1. モスクワでの防衛協議

  • 10月末、インドの防衛企業幹部がモスクワを訪問し、ロシア側と合弁事業や武器製造の可能性について協議。
  • 参加企業には、アダニ・ディフェンス、バーラト・フォージ、タタ・グループ傘下の企業、ラーセン・アンド・トゥブロ、バーラト・エレクトロニクスなどが含まれる。
  • 会合では、ロシア製防空システムやミグ戦闘機の部品製造をインド国内で行い、ロシアへの輸出も視野に入れた案が話し合われた。

2. 背景と狙い

  • インドは長らくロシア製兵器に依存しており、ウクライナ侵攻後に関係が冷え込んでいたが、今回プーチン大統領とモディ首相の会談を機に協力強化へ転じた。
  • 目的は、防衛分野におけるインドの自立を高め、先進兵器の共同研究開発を推進すること。

3. 企業側の見解

  • 一部企業(アダニ・グループ、バーラト・フォージ)は会合出席を否定しているが、複数の関係者はインド防衛業界全体として幅広く出席があったと証言している。

4. 西側との摩擦と制裁リスク

  • こうした印露協力の動きは、西側諸国との防衛共同開発を阻害する要因になりかねない。
  • 特に軍事機密移転の面で、インド企業がロシアとの関係を維持することは「信頼上の障害」と見なされている。
  • さらに、ロシアへの制裁を巡り、二次制裁(セカンダリー・サンクション)を受ける可能性も指摘されている。
  • インド当局は外交的調整で制裁回避の余地を模索しているが、企業には政治リスクを自ら判断するよう警告している。

この動きは、インドが掲げる「メイク・イン・インディア」政策と、西側との戦略的協力の両立をさらに難しくしており、今後の印露関係と西側の対応が注目されます。

 

 

インドの完全なブラフとは言い切れない

ウクライナ侵攻で、ロシア製兵器の劣悪性が証明された。インドの本音は日本を含む西側と関わりたいと思っているはずだ。今回はロシアの顔を立てるためのブラフ行動で、西側に圧力をかけるためだ。

インドの防衛企業がロシアに接近する動きは、プーチン大統領の12月訪印後の共同声明で確認された先進防衛技術の共同研究開発・生産に向けた再構築策の一環であり、モディ政権の「メイク・イン・インディア」政策を支援する形で進展している。​

  1. ロシア製兵器の評価とインドの本音
    ウクライナ侵攻でロシア製兵器の信頼性に疑問符がついたのは事実で、インド軍保有兵器の約36%がロシア製である一方、近年は米国・フランス・イスラエルなど西側からの多角化を加速させている。 日本を含む西側との協力も拡大中で、例えば米印の共同生産や技術移転が進むが、西側外交筋は印露関係を「軍事技術移管のネック」と指摘し、制裁リスクを強調。​
  2. ブラフか本気の戦略か
    インドの行動を「ロシアの顔立てのためのブラフ」や「西側への圧力」と見る見方は一部あるが、実際の動きはS-400ミサイル追加調達や部品国内生産の具体合意を示しており、制裁回避のための外交努力を伴う戦略的多角化と解釈される。 インド防衛当局は企業に政治リスクを警告しつつ、政府がロビー活動で支援する姿勢で、短期的なブラフではなく長期自立を優先した現実対応。​

インドはロシア依存脱却を進めつつ、両陣営とのバランスを維持する「戦略的自律」を追求しており、完全なブラフとは言い切れない。

 

 

インドは国益優先でバランスを取る

インドを西側陣営に取り込みたい。しかしインドはバランス外交を続けている。欧米が間違えている点は何?

  • 欧米がインドを西側陣営に取り込もうとするアプローチで誤っているのは、インドの「戦略的自律外交」(非同盟・全方位外交)を無視し、冷戦的な「陣営分け」を強要しようとしている点だ。​
  1. インド外交の本質
    インドは歴史的に非同盟を掲げ、米中露いずれにも依存せず、国益優先でバランスを取る。ロシア依存の兵器更新や中国脅威へのQUAD活用を並行し、グローバル・サウスのリーダーとして両陣営に橋渡し役を果たす。 モディ政権下で西側との防衛協力(米印共同生産、日印2+2対話)が進む一方、ロシアとの関係断絶はパキスタン・中国対策に不可欠で、強引な取り込みは逆効果を生む。​
  2. 欧米の誤算
    欧米は制裁圧力や技術移転条件付けでインドを「反露陣営」に引き入れようとするが、インドはこれを「信頼の障害」と見なし、自立を優先。結果、二次制裁リスクを外交で回避しつつ、ロシアとの実利(安価兵器・エネルギー)を確保する。 正しくは、インドの多極化世界観を尊重し、QUADのような緩やかな枠組みで中国包囲を共有する柔軟対応が有効だ。​

インドのこうした外交は、欧米の二元論を崩す強みであり、完全取り込みよりパートナーシップ構築が現実的。

 

 

西側と東側を比べれば西のほうがマシだと思うが

インドの視点から見れば、西側(民主主義・技術革新・経済力)と東側(ロシア・中国の資源・兵器供給)を比較した場合、西側の方が長期的に信頼性が高く魅力的だ。​

  1. 西側の優位性
    西側はインドの「メイク・イン・インディア」を支える技術移転(米印共同生産、日印防衛協力)と市場アクセスを提供し、中国脅威へのQUADで地政学的価値が高い。一方、東側はウクライナ侵攻で露呈した兵器の信頼性低下と制裁リスクがネックで、インド軍のロシア依存脱却を加速させる要因となっている。​
  2. インドの本音と現実
    インドは西側を「マシ」と認識しつつ、完全傾斜せずバランス外交を維持する。欧米がインドの自立を尊重すれば、自然と西側寄りになるが、強引な陣営分けはロシア依存を延命させるだけだ。

 

 

インドが完全に西側に加入した場合、インドにとってのデメリットは何か?

インドが完全に西側陣営に加入した場合、主なデメリットはロシア依存の軍事・エネルギー供給が断絶し、国益に直結する現実的損失が生じる点だ。​

  1. 軍事・資源面の損失
    インド軍保有兵器の約36%がロシア製で、スペア部品や安価なS-400ミサイルなどの代替調達が難航。ウクライナ侵攻後の制裁下でもロシアはインドに割安石油を供給しており、西側完全加入でこれを失えばインフレ圧力と防衛コスト増大を招く。​
  2. 外交的・戦略的自律の喪失
    非同盟の「戦略的自律外交」が崩れ、中国・ロシアとのバランスが取れなくなり、グローバル・サウス(発展途上国)リーダーとしての影響力が低下。QUAD参加を強固にしても、西側の保護主義批判(SCO加盟国との摩擦)で多国間貿易が制限され、パキスタン・中国包囲網の柔軟性が失われる。​

完全西側化は短期的に技術移転を促進するが、インドの多極化世界観に反し、モディ政権の自立志向を損なうリスクが高い。

 

 

Perplexityが述べた「インドの世界観」とは?

インドの「多極化世界観」とは、モディ政権が推進する「戦略的自律外交」(Strategic Autonomy)を基盤とし、一極・二極支配ではなく、多様な大国・新興国が共存する多極世界を志向する考え方だ。​

  1. 核心的内容
    戦後米主導の国際秩序を批判し、グローバル・サウス(発展途上国)の声が反映される包摂的な世界秩序を主張。米中露いずれにも依存せず、国益優先で「多同盟(Multi-Alignment)」を実践し、QUADで西側と協力しつつロシア・中国とのバランスを保つ。​
  2. 実践例と意義
    G20議長国時やプーチン訪印で示されたように、西側制裁を避けつつ自立を強調。陣営分けを拒否し、インドをグローバル・サウス・リーダーとして位置づけ、経済・軍事的自立を最大化する世界観。

 

 

インドは「大国間の代理戦争」を回避したい

アメリカ主導の国際秩序を拒否するのは簡単だ。その結果、中国ロシアが存在感を増すと世界秩序が乱れる。現にロシアによるウクライナ侵攻、中国による領空領海領土侵犯が起きている。

インドの多極化世界観が米主導秩序を拒否するのは、植民地主義の記憶と大国間の代理戦争回避を優先するからだが、確かにロシアのウクライナ侵攻や中国の領土侵犯を助長するリスクはある。​

  1. 秩序乱れの現実
    非同盟がロシア・中国の拡張主義に「免罪符」を与え、グローバル・サウスが西側制裁を無視する余地を生む。インドのSCO参加やロシア石油輸入は、これを象徴し、西側孤立を招き、多極化が無秩序化に転じる危険性を指摘する声が多い。​
  2. インドのジレンマ
    しかしインド自身、中国国境侵犯やパキスタンテロで被害を受け、QUADで西側と連携しつつバランスを取る。完全拒否ではなく「選択的多極主義」で、米秩序の改革(グローバル・サウス参加拡大)を求めているのが本音だ。

 

 

バランス外交は痛い目に遭うリスクが高い

二兎を追う者は一兎をも得ず。中国ロシアから痛い目に遭わなければわからないだろう

インドの「二兎追う」バランス外交は、短期的にロシア石油の割安輸入や中国との経済依存で利益を得ているが、長期的に中国の国境侵犯やロシア兵器の陳腐化で痛い目に遭うリスクが高い。​

  • 現実の痛手例
    中国は2020年ガルワン谷衝突以降、領土侵犯を繰り返し、インド兵25名死亡。ロシアはウクライナ侵攻でS-400納入遅延やスペア部品不足を露呈し、インド軍の即応力が低下。パキスタン経由テロも中国支援で激化し、二兎追求が防衛負担を増大させている。​

完全西側傾斜が現実解だが、インドはグローバル・サウス・プライドと資源依存で踏み切れず、自業自得のジレンマに陥っている。

 

 

インドの「資源依存」とは

インドの「資源依存」とは、主にロシアからの割安石油輸入と中国依存の希土類・重要鉱物供給を指し、エネルギー安全保障と産業成長の基盤となっている。​

  1. エネルギー面の依存
    インドは石油の約80%、ガスの約60%を輸入に頼り、ロシアが制裁下で提供する割安原油(2025年現在も継続)が貿易赤字抑制に不可欠。石炭も輸入2割超で、経済成長に伴う需要急増を賄うため、西側完全加入でロシア供給断絶すればインフレとコスト増大を招く。​
  2. 鉱物・重要資源面
    希土類原料(REE)の年間生産わずか2900トンに対し、中国依存が圧倒的で、クリーンエネルギー(太陽光・EV)や防衛産業に直結。ロシアも一部供給源だが、地政学リスクから多角化を急ぐも、完全西側化で東側アクセス喪失は自立目標「2047年エネルギー独立」を遠ざける。​

この依存がバランス外交の根拠で、西側技術移転を進めつつ東側資源を確保する現実策だ。

 

 

西側に加入すると、東側によるテロや軍事的脅威が増すからではないのか?

インドが完全に西側に加入した場合、東側(特にパキスタン経由の代理勢力や中国・ロシア支援のテロ組織)からのテロ・軍事的脅威が増大するリスクは確かに大きい。​

  1. パキスタン経由のテロ激化
    パキスタンは歴史的にLeTやJeMなどの過激派を支援し、カシミールでの越境テロを繰り返しており、西側完全加入でインドが「反イスラム陣営」と見なされれば、ムンバイ2008年やプルワーマ2019年級の攻撃が頻発する可能性が高い。中国もこれを後押しし、印パ緊張を煽る。​
  2. 中国・ロシアの軍事圧力増
    ロシアとの軍事協力断絶でS-400や部品供給が途絶え、中国の国境侵犯がエスカレート。パキスタンとの核均衡が崩れ、両面作戦(印パ+印中)がインドの防衛資源を枯渇させる。バランス外交が緩衝材として機能している現状を失うデメリットだ。​

この脅威増大は、インドの戦略的自律を維持する最大の理由の一つ。

 

 

日本もバランス外交を選択すべきか?

日本は地理的・歴史的制約から、インドのような完全なバランス外交を選択するのは現実的でない。​

  1. 日本の外交基軸
    日本は日米同盟を安全保障の基盤とし、中国・北朝鮮脅威への対処でQUADや日米豪印を推進する一方、中東や中央アジアではエネルギー確保のためバランスを取る柔軟外交を実施。 ウクライナ支援や台湾有事想定で西側寄りが明確だが、ロシアとの平和条約交渉や中国経済依存を考慮した現実路線を維持。​
  2. バランス外交の限界
    インドの非同盟は大国間の緩衝地帯ゆえ可能だが、日本は島国として中国の軍拡直面で同盟依存が不可避。過度なバランス追求は米同盟を弱体化させ、安全保障を危うくする。むしろ同盟強化を基調に、多国間枠組み(CPTPP、G7)で影響力拡大が適切。​

日本は「法の支配」外交を軸に西側リーダーシップを発揮しつつ、地域安定のための選択的バランスで対応すべき。

 

 

グローバル・サウス・プライドとは?

インドの「グローバル・サウス・プライド」とは、モディ政権が自国を新興・発展途上国群のリーダーとして位置づけ、戦後米主導の国際秩序に対する植民地主義的遺恨や不平等を克服する「声なき声」の代弁者として誇りを持つ外交姿勢を指す。​

  1. 背景と意義
    インドはG20議長国時などに「グローバル・サウス(南半球途上国)」を旗印に、アフリカ連合の常任メンバー化を推進し、西側中心のIMF・WTO改革を求め、国内ではモディの指導力アピールに活用。非同盟の伝統を現代化し、中国・ロシアとの連帯を正当化する方便でもある。​
  2. 現実的役割
    このプライドがバランス外交の心理的支柱で、西側完全加入を「旧植民地支配の再来」と拒否し、自立大国への道筋を描くが、無秩序化批判を招くジレンマを抱える。​