アメリカはベトナムに対し中国依存の縮小と迂回輸出の阻止を強く要求 アジア全体で中国製品の「抜け道」封じ込めが加速

米ベトナム貿易協定、狙いは中国製品の迂回輸入阻止

  • 中国製品がベトナムを経由して米国の高関税を回避するのを防ぐ狙い

この協定の主な内容は以下の通りです。

  • ベトナムから米国への通常の輸入品には20%の関税を課す。
  • ベトナムで積み替えられた第三国(主に中国)製品には40%の懲罰的関税を課す。
  • ベトナムはアメリカからの輸入品すべてに対して関税をゼロにすることでも合意しています。

この40%の関税は、ベトナムを経由して米国に輸出される中国製品などが、米国の対中高関税を回避する「迂回輸出」を防ぐための措置です。トランプ大統領は中国を名指しはしていませんが、アナリストらはこの措置が中国からの迂回輸出対策であると指摘しています。

なお、迂回輸出とは、中国製品がベトナムに一度輸入され、実質的な付加価値が加えられないままベトナム製と偽って米国に再輸出されることで、高関税を回避する手法を指します。

また、今回の協定により、ベトナムはアメリカの航空機大手ボーイングの航空機50機を購入することでも合意する見込みです。

まとめると、米ベトナム貿易協定の最大の狙いは、中国製品の迂回輸入を阻止し、米国の対中関税政策の抜け道を塞ぐことにあります。

トランプ大統領 アフリカ5か国首脳とサミット開催

経済・安全保障・貿易政策を協議

現状:アフリカ諸国を含む高率関税の導入方針

  • 2025年4月、トランプ政権は「対等な貿易(Reciprocal Tariffs)」政策を発表し、アフリカ諸国を含む幅広い国からの輸入品に対して高率関税を課す方針を示しました。具体的には、ケニア・ガーナ・エチオピアからの輸入品に10%、南アフリカに30%、レソトに最大50%など、国ごとに異なる高い関税率が設定されています。
  • この新関税政策は、アフリカ成長機会法(AGOA)でこれまで優遇措置を受けていた国も対象となり、アフリカ諸国側では強い懸念が広がっています。
  • 現時点では90日間の猶予措置が設けられており、関税発動の最終判断はサミットや各国との交渉の行方に委ねられています。

今後の見通し:サミットと各国交渉が焦点

  • 2025年7月9日、トランプ大統領はアフリカ5か国(ガボン、ギニアビサウ、リベリア、モーリタニア、セネガル)の首脳をホワイトハウスに招き、経済協力・安全保障・貿易政策を議題にサミットを開催します。
  • サミットでは、アフリカ側が関税の延期や免除を強く求める構えであり、今後の関税措置の具体的な運用や例外設定が協議される見込みです。
  • トランプ大統領は他国にも関税率を明記した書簡を送付する方針を示しており、今後数日で各国に通知が開始される予定です。

背景と影響

  • トランプ政権は「米国第一主義」に基づき、貿易赤字削減と国内産業保護を重視しており、関税政策はその柱と位置付けられています。
  • アフリカ諸国への高関税は、米国の貿易赤字への寄与が小さい国にも及んでおり、経済的な打撃やAGOAの意義の揺らぎが指摘されています。

まとめ

  • トランプ関税は2025年も強硬姿勢を維持しており、アフリカ諸国を含む多くの国が高率関税の対象となっています。
  • ただし、今後のサミットや各国との協議次第で、個別の関税免除や緩和措置が決まる可能性も残されています。

中国越境EC 関税逃れに産地偽装 各国が規制強化で包囲網

中国の越境EC業者による関税逃れのための産地偽装が国際的な問題となっています。主な手口は、中国から直接アメリカなどに輸出するのではなく、一度ベトナム、マレーシア、メキシコ、韓国など第三国に商品を送付し、その国の製品と偽って再度アメリカなどに輸出するというものです。これにより、中国製品であるにもかかわらず、高関税を回避できる仕組みとなっていました。

こうした「原産地偽装」は業界内で公然の秘密となっていましたが、近年、各国政府が監視と規制を強化しており、従来のような抜け道は使いにくくなっています。アメリカはもちろん、欧州や日本でも中国発の越境EC商品に対する課税強化や免税措置の見直しが進んでいます。例えば、米国では800ドル以下の小口貨物の免税措置が撤廃され、欧州や英国でも低価格輸入品への関税制度の見直しが検討されています。

また、韓国など他国も米国やEUの動向を注視しつつ、中国製低価格商品の大量流入による国内産業への影響を懸念しています。

このように、中国越境EC業者による関税逃れや産地偽装への包囲網は年々強化されており、国際的な取り締まりが進んでいる状況です。

トランプ政権による世界貿易の再編 中共が焦燥する理由

トランプ政権による関税政策(いわゆる「トランプ関税」)は、2025年7月現在、世界貿易の枠組みを大きく揺るがす局面を迎えています。主なポイントは以下の通りです。

  • 相互関税の猶予期限が7月9日に迫る中、各国はアメリカとの交渉を急いでいます。トランプ大統領は、貿易相手国に対し「合意」しなければ関税を引き上げると強い圧力をかけており、日本やEU、インドなどが難しい判断を迫られています。
  • 中国共産党(中共)は、アメリカ主導の「中国排除」型サプライチェーン構築に強い危機感を抱いています。アメリカと他国の貿易協定が相次ぐことで、中国は国際社会での孤立と影響力低下を懸念し、強硬な警告や対抗措置を繰り返しています。
  • トランプ政権は2025年1月の2期目就任以降、鉄鋼・アルミ、自動車・部品などに対する追加関税を次々と発表・強化しています。例えば、アルミ製品への追加関税は10%から25%、さらに50%へと引き上げられ、国別の適用除外も撤廃されました。
  • 関税政策は調整局面も迎えています。4月以降、一部の追加関税の累積停止や、自動車部品への相殺制度導入など、影響緩和策も打ち出されています。
  • ベトナムとの間では、輸入品に20%、第三国からの積み替え品には40%の関税を課すことで合意。米国製品はベトナムで無関税となる見通しです。
  • 今後、アメリカは中国製部品を多く含む製品により高率の関税を課す方針を明確にしており、他国も新たな制度への対応を迫られる状況です。これはUSMCA(米・メキシコ・カナダ協定)の条項を参考にした制度設計とされています。

「中共が最も懸念しているのは、アメリカ主導による『中共排除型』のサプライチェーン構築が、単なる対中輸出規制にとどまらず、『信頼できる』貿易パートナーによる新たな国際秩序の形成へと発展し、中共体制下の中国が世界貿易の枠組みから次第に排除されていくという構図である」

まとめると、トランプ関税は2025年夏、各国との合意期限を目前にして、世界のサプライチェーン再編と中国排除の動きを加速させており、国際経済に大きな不確実性と緊張をもたらしています。

米越関税交渉 中国の迂回輸出阻止へ

概要

  • 米国はベトナムとの関税交渉において、ベトナムが中国依存を縮小し、中国製品の「迂回輸出」拠点とならないよう強く求めている。これは中国が米国の高関税を回避するためにベトナムを経由地として利用する動きを防ぐためであり、米国はベトナムに対し、中国由来の原材料や部品の使用抑制や対中投資依存の削減も要求している。

背景と交渉の経緯

  • トランプ大統領は4月にベトナムへの46%関税を発表し、米越間で2度の関税交渉が行われた。
  • 米国はベトナムが中国製品の関税逃れの「迂回拠点」となっていると繰り返し批判しており、一部の「ベトナム製」表示製品が実際には中国で生産されたものだと指摘している。
  • こうした動きはベトナム経済にとって大きな課題となる可能性があり、ベトナムの製造業は中国の供給網に強く依存している。

米国の要求と広がる圧力

  • 米国はベトナムだけでなく、他の交渉国にも中国の孤立化に参加するよう求めており、関税軽減の条件として中国経済からのデカップリング(分断)を迫っている。
  • これには中国製品の購入抑制や、相手国を経由した中国製品の米国輸出防止などが含まれる。
  • アジア各国でも中国製品の「違法な迂回輸出」阻止に向けて、原産地証明の強化などの対策が進められている。

今後の見通し

  • ベトナムが米国の要求に応じ中国依存を実質的に削減すれば、製造業や経済全体に深刻な影響が及ぶ可能性がある。
  • また、この方針は長年維持してきた中国との友好政策や、南シナ海の安全保障問題にも波及する可能性がある。

まとめ

  • 米越関税交渉は、米中貿易摩擦の延長線上で、中国の関税逃れを防ぐための重要な局面となっている。米国はベトナムに対し、中国依存の縮小と迂回輸出の阻止を強く要求しており、アジア全体で中国製品の「抜け道」封じ込めが加速している。

知らないと恥をかく世界の大問題16 トランプの“首領モンロー主義時代”
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概要

  • 池上彰による人気時事解説シリーズ「知らないと恥をかく世界の大問題」の最新第16弾『トランプの“首領モンロー主義時代”』は、2025年6月10日発売予定の新書です。本書では、アメリカの「第2期トランプ政権」がもたらした世界の大転換を中心に、歴史的背景を交えながら、現代の国際情勢をわかりやすく解説しています。

主な内容とテーマ

  • 古典的帝国主義の再来・・・トランプ政権が古典的帝国主義の復活を決定づけ、アメリカ、ロシア、中国といった強権国家による熾烈な縄張り争いが激化。世界が「弱肉強食の時代」へと回帰しつつある現状を分析。
  • 現代の大問題と日本の対応・・・予測不能なトランプの行動が国際社会に混乱をもたらす中、日本はどのように対応すべきか、世界と日本が直面する課題を解説。
  • 歴史的背景と最新情勢の解説・・・歴史の流れを踏まえつつ、現代の国際政治や経済、社会の動向を池上彰が平易な言葉で説明しています。

目次構成

  1. 弱肉強食のジャングルに戻る世界
  2. 福音派とテクノ・リバタリアンの“ハイブリッド国家”へ
  3. EUの試練
  4. 変わる中東のパワーバランス
  5. 転機を迎えた中国
  6. 核軍縮と逆行する世界
  7. 内憂外患の日本
  8. 「真理はわれらを自由にする」
  9. おわりに

特徴

  • 世界の大きな構造変化を俯瞰しながら、各地域・各国の動向と日本への影響を具体的に解説。
  • 歴史的な視点と最新の国際ニュースを組み合わせて、複雑な問題を読み解く。
  • 時事問題に関心がある人や、国際情勢を基礎から理解したい人にとって必読の一冊。