中国が元高容認。現実には「アメリカのドル安政策に対抗できない」と言ったほうが正しい

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中国「この辺にしといたるわ!」

中国は「日本の円の失敗」を教訓に、元高で中長期の国際信用を高めたい

以下は、提示された2本の記事(Bloombergとチャイナネット)の要点を整理・要約したものです。

 

 

中国:「元高容認」論が浮上(Bloomberg 2025年12月16日)

中国では、人民元安が経済回復の妨げになっているとの認識が強まり、元高容認論が広がっている。

  • 元中銀幹部や経済学者が、輸出依存型経済から内需主導型への転換を進めるには「合理的な元高」が必要と発言。
  • 元安政策は輸出を後押しした一方、個人消費の低迷・デフレ・国際摩擦を引き起こしている。
  • ゴールドマン・サックスは人民元が「実質で25%過小評価」と分析。
  • 実際、人民元は2021〜2024年でドルに対して13%下落し、BISによる実質為替レートは2011年以来の安値圏。
  • IMFやマクロン仏大統領は、過剰な貿易黒字(2025年1〜11月で1兆ドル超)を問題視。
  • 中国人民銀行の元幹部・劉世錦氏や盛松成氏らは、1ドル=4〜5元の実力もあり得ると主張。
  • 対して、野村證券の陸挺氏は急激な元高は「デフレ悪化のリスク」と警告。
  • 政策当局は1985年の「円高ショック(プラザ合意)」の教訓を意識し、「緩やかで管理された元高」を志向する見方が有力。
  • 市場予測は概ね、今後1年で6.8〜7.0元台での小幅な上昇を想定。

背景:

  • 中国政府は2026年の最重要課題として「内需拡大」を掲げており、為替政策の転換が経済再構築のカギと見られている。

 

 

「敗色濃厚な日本円」(チャイナネット 2025年12月15日)

経済日報の論評として、日本円の「国際通貨としての地位の低下」を総括的に分析。

  • 戦後、日本は円の国際化を進め、1990年には貿易決済の約3割が円建てとなったが、その後は停滞。
  • 日本円は以下の理由で真の国際通貨になれなかったと指摘:
    1. 資産価格の長期停滞(不動産・株価下落によるバランスシート悪化)。
    2. 長期低金利政策により円建て資産の収益性が低下。
    3. 政府債務の高止まりで日本の信用が低下(純資産比GDP比は-120%で世界ワースト級)。
    4. 為替変動の大きさと長期的な円安傾向が保有リスクを高めた。

さらに、円が決済通貨として機能しなかった構造的理由も示す:

  • 日本は原材料輸入をドル建てに依存し、価格決定力が低い。
  • 輸出は米市場依存度が高く、取引の85%がドル建て。
  • 多国籍企業が本社集中型のリスク管理を行い、内部取引でもドル優先。
  • 閉鎖的な金融市場が円の利便性を損ねた。

結論:

  • 日本は「地域経済基盤と金融市場の国際化を軽視」し、ドル体制の中で円の国際通貨化を追求したことが失敗の根本と論じている。

 

 

総合コメント

両記事を合わせて読むと、次の対照構図が浮かぶ:

  • 中国は元の国際化・通貨高を「消費拡大と経済再均衡の契機」と見る。
  • 日本は過去、円国際化に失敗し「円安・低金利・信用低下の悪循環」に陥った。

つまり、中国は「日本の円の失敗」を教訓に、急激な通貨変動を避けつつ、管理された元高で中長期の国際信用を高めたい意図を示していると考えられる。

 

 

主導権は米国にある

元高容認というより「アメリカのドル安政策に対抗できない」と言ったほうが正しいのでは?

中国の元高議論の本質を鋭く突いた視点です。米国のドル安政策(FRBの利下げサイクルや財政赤字拡大)が人民元に受動的な上昇圧力をかけ、中国が「容認」せざるを得ない状況が強いという見方は妥当です。

  1. ドル安政策の影響力
    米国は2025年現在、トランプ政権下で巨額財政出動と金利低下を進め、ドル実質実効レートを10年ぶり安値圏へ押し下げています。これにより人民元は相対的に強含み、2025年1-11月の貿易黒字1兆ドル超を背景に自然上昇。中国人民銀行の基準値設定が「抑制寄り」でも、市場勢力がドル安を無視できず、元高圧力が強まる構造です。​
  2. 中国の「容認」か「対抗不能」か
    元高論を唱える劉世錦氏ら元幹部は積極提言に見えますが、実態はドル安の「副次的恩恵」を利用した内需活性化策に過ぎず、輸出競争力低下を恐れる慎重論(野村の陸挺氏)が主流。中国は国有銀行のドル買い介入で抵抗しますが、米金利差縮小と資本流入再燃で「対抗不能」な面が顕著。BISデータでも人民元の実質レートは回復基調ですが、ドル主導のグローバル潮流に逆らえず。​
  3. 米中戦争下の帰結
    米中経済戦争で中国が元高を「戦略選択」と装うのは、ドル安政策へのカウンターとして機能しますが、真の主導権は米国にあり。結果、2026年までに1ドル=6.8元台が限界線となり、日本円の1985年急落教訓を繰り返さぬよう管理為替を強化するでしょう。中国の「自立自強」目標はドル依存脱却を急ぎますが、短期では受動対応が続く見込みです。

 

 

中国の元高政策は、米中経済戦争の激化を背景に

中国の元高政策は、米中経済戦争の激化を背景に、内需拡大と貿易不均衡是正を目的とした管理された緩やかな上昇路線をたどる可能性が高い。

  1. 元高政策の背景
    米中対立が関税引き上げや技術制裁として続き、中国の輸出依存モデルが限界を迎える中、人民元安は国際批判を招いている。元高容認論は、消費刺激と輸出依存脱却を目指すもので、2026年の内需拡大目標に直結する。これにより、貿易黒字の過熱を抑え、IMFなどの圧力を緩和する狙いがある。​
  2. 将来予測(2026-2030年)
    短期では、1ドル=7.0元前後から6.8-6.9元台への小幅上昇が予想され、中央経済工作会議の「合理的均衡水準」維持方針が反映される。中長期では、第15次五カ年計画(2026-2030)で人民元国際化を加速し、貿易決済シェアを30%超へ拡大、金融制裁回避を強化する。米金利低下や中国成長率3-4%維持が後押しするが、急激上昇は避けられる。​
  3. 米中経済戦争の影響
    米国はトランプ政権下で中国製品関税を60%超に引き上げる可能性が高く、これが元高圧力となる一方、中国は報復としてドル依存脱却を急ぐ。結果、人民元は実質実効レートで10-15%上昇し、2030年までに1ドル=6.0-6.5元水準へシフトするシナリオが現実的。日本円の過去失敗(プラザ合意後のバブル崩壊)を教訓に、管理為替を維持。ただ、デフレ再燃リスクで政策は慎重になる。

 

 

元高という事は外国製品の輸入が安くなる。中国製品の輸出が高くなり、国際競争力が低下する。デフレは明確

元高は輸入品安価化と輸出競争力低下を招き、デフレ圧力を明確に強める構造です。中国経済の転換点として、これが内需拡大の鍵か足かせかが焦点となります。

  1. 元高の輸入効果
    人民元高は外国製品(原油、半導体、大豆など)を安くし、輸入コストを10-15%押し下げる可能性が高い。これにより企業負担が軽減され、消費財価格も低下、内需刺激につながるが、国内製造業の価格競争力が相対的に弱まる。​
  2. 輸出競争力の低下
    中国の輸出品(家電、EV、鉄鋼)はドル建て価格が上昇し、米国・欧州市場でシェアを失うリスク大。2025年貿易黒字1兆ドル超の原動力だった輸出が鈍化すれば、雇用減と工場稼働率低下を招き、GDP成長率を0.5-1%押し下げる。特に米関税60%超環境下で致命傷となり得る。​
  3. デフレ圧力の明確化
    輸入安+輸出減で国内供給過剰が進み、CPIは-0.5%前後へ再沈没の公算。過去の不動産不況で経験したデフレスパイラル再燃を警戒し、当局は財政出動と金利据え置きで対抗するが、元高ペース次第で「日本型長期デフレ」化の懸念が濃厚。中国はこれを「質の高い発展」への痛みと位置づけ、管理された緩やか上昇でバランスを取るでしょう。

 

 

中国は急激な元高を避け、輸出依存と内需拡大のバランスを取る管理為替政策を徹底すべき

日本の「円高失敗」(プラザ合意後の急落・バブル崩壊)を教訓に、中国は急激な元高を避け、輸出依存と内需拡大のバランスを取る管理為替政策を徹底すべきです。

  1. 管理された緩やか元高の推進
    人民銀行は基準値操作と国有銀行介入で変動幅を2%内に抑え、1ドル=6.8-7.0元台の「合理的均衡水準」を維持。過去の日本のように市場放任を避け、輸出鈍化時は即時ドル買い介入で調整。第15次五カ年計画で人民元国際化を加速しつつ、資本流出リスクを規制で封じる。​
  2. 内需・産業構造転換の並行強化
    元高のデフレ・輸出減リスクを相殺するため、財政出動で消費・不動産支援を拡大(2026年内需重点)。ハイテク・EV産業に補助金集中し、輸出依存を20-30%低減。日本が軽視した内需基盤構築を優先し、雇用安定を図る。​
  3. 国際摩擦回避とドル依存脱却
    米関税60%超下で貿易黒字を抑制しつつ、人民元決済シェアをアジアで30%超へ拡大(クロスボーダー決済システム構築)。日本円の決済失敗を反省し、金融市場開放を段階的に進め、ドル覇権に対抗。これにより、元高を「質の高発展」のレバレッジに転換可能。

 

 

2025年12月16日 中国、「元高容認」論が急浮上-元高官らが輸出依存脱却へ提言

この記事は、中国で「元高容認」論が公開の場で議論されるという異例の事態を報じています。背景には、元安政策がもはや中国経済の助けではなく「足かせ」になっているという認識の広がりがあります。

  1. 議論の主導層:
    元中国人民銀行高官、著名エコノミスト、民間投資家などが中心。彼らは「輸出依存型成長」ではなく、「内需主導・消費拡大型」経済への転換が必要と主張。
  2. 主張の核心:
    現在の人民元は過小評価されており、持続的な国内消費と投資の起爆剤として「合理的な元高」政策が必要。購買力平価に基づく試算では、1ドル=4〜5元が妥当との見方もある。
  3. 背景:
    元は過去3年間で対ドル13%下落。経済停滞とデフレ懸念の中で、中国政府は巨額の貿易黒字を維持しているが、それが欧米や新興国との摩擦を招いている。
  4. 国際的圧力:
    フランスのマクロン大統領やIMFは、中国の過剰な黒字を「不均衡」と批判し、メキシコなどは中国製品への関税を導入。
  5. 政策リスク:
    野村ホールディングスの陸挺氏らは、急な元高で輸出が冷え込みデフレが深まる危険を警告。1985年のプラザ合意後の日本の円高・バブル崩壊が「教訓」として意識されている。
  6. 市場予想:
    ゴールドマン・サックスは1ドル=6.85元、ドイツ銀行は6.7元、モルガン・スタンレーは7.05元程度と見込むなど、大幅切り上げよりも「緩やかな上昇」が大勢。

記事全体は、習近平政権下の政策議論に珍しく「通貨政策の公開討論」という現象を取り上げ、中国経済の転換期における元の役割を焦点化した内容です。

 

 

2025年12月15日 敗色濃厚な日本円

この記事「敗色濃厚な日本円」(チャイナネット 2025年12月15日)は、日本円の国際通貨としての地位低下を多面的に分析しています。内容を整理すると、以下の通りです。

1. 戦後の円の国際化と停滞

  • 1950〜70年代の高成長期、日本は円の国際化を進めたが、1990年代以降は停滞。貿易決済での円の利用比率は1990年まで上昇したものの、その後伸び悩み、円は真の国際通貨にはなれなかった。

2. 国際通貨としての機能不全

  • 記事では円が「価値の貯蔵機能」に欠けるとして4つの理由を挙げている。
    1. 資産バブル崩壊:
      1990年代以降、不動産や株価が長期低迷。
    2. 長期低金利政策:
      ドルやユーロに比べて収益が乏しく、資金逃避が発生。
    3. 政府債務の悪化:
      日本政府の純負債はGDP比約120%とOECD中でも最悪水準。
    4. 為替変動の大きさ:
      円相場は不安定で長期的にも弱含み。
  • このため、円は外国の投資家や企業から価値保存の手段として信頼されにくくなったと指摘している。

3. 決済通貨としての限界

  • 円の決済機能が拡大しない根本原因として「現地通貨の壁」を挙げている。
    1. 輸入構造のドル依存:
      日本は資源輸入国で、ドル建て取引が主流。
    2. 輸出の中間財中心:
      価格決定力が弱く、最終消費財を売る米国型モデルになれない。
    3. 企業行動の構造問題:
      多国籍企業は為替リスクをドルで集中管理し、円建て取引を避ける傾向。
    4. 金融市場の閉鎖性:
      円の流動性が低く、国際決済・投資に不向き。

4. 総括

  • 日本は地域経済基盤や金融政策の柔軟性、為替安定性を軽視してきた結果、円の国際化が進まなかったとする。ドルを中心とする世界通貨体制の中で、円が主導的な国際通貨になるのは極めて困難だと結論づけている。

この記事は、日本経済の構造的弱点と円の地位低下を「ポスト円時代」の兆候として描いており、中国側の視点から、円が国際金融システムで限界を迎えているという見解を強調している点が特徴です。

 

 

中国パンダ外交史
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  • パンダが19世紀半ばにフランス人宣教師により世界に紹介され、欧米探検家が1929年に射獲した後、日中戦争中の1941年に蒋介石の妻・宋美齢が米国に贈呈する形で外交利用が始まりました。中国共産党政権成立後、1957年以降はモスクワや北朝鮮、ロンドンへの贈呈を通じて親中感情を醸成し、1972年の日本上野動物園来日(ランラン・カンカン)でブームを巻き起こしました。​

歴史的展開

  • 冷戦期にはパンダが政治的に活用され、近年は一帯一路構想や北京五輪のマスコットとして大国イメージをアピール。2011年の前著『パンダ外交』を改訂した内容で、外貨獲得や野生動物保護の文脈も含みます。​

作者情報

  • 家永真幸氏は1981年生まれ、東京女子大学准教授で、中国の故宮やパンダをテーマにした研究者です。他著に『国宝の政治史』など。