アメリカは「自国の死活的利益には介入」し「それ以外は切り捨てる」という「選択的介入」にシフト

「全ての地域で平等にリーダーシップを発揮する」戦略を捨てた

西半球政策を見ると「アメリカは閉じこもる」という見方をする人がいる。しかしイランを見ると民主化を進め、地球規模での再編を促しているようにも見える

アメリカの外交政策において「西半球への回帰(閉じこもる)」と「イランへの介入(再編を促す)」という二つの動きが同時に起きている現状は、一見矛盾しているように見えますが、実は共通した戦略的ロジックに基づいています。

現在のアメリカ(第2次トランプ政権)の動きを読み解くためのポイントを分析します。

1. 新モンロー主義:西半球の「聖域化」

「アメリカが閉じこもる」という見方は、主に「新モンロー主義」や「トランプ・コロラリー(トランプの系譜)」と呼ばれる政策に起因しています。

これは、ユーラシア大陸(欧州やアジア)でのコストのかかる紛争から距離を置き、アメリカの「裏庭」である南北アメリカ大陸における影響力を再構築しようとする動きです。

  1. 目的:
    中国やロシアの浸透を排除し、西半球をアメリカの排他的な経済・安全保障圏(聖域)にすること。
  2. 特徴:
    移民抑制、麻薬対策、重要資源(リチウム等)の確保を優先し、他地域の「世界の警察官」としての役割を縮小させる。

2. イランへの関与:現状打破による「再編」

一方で、イランのデモを支持し、体制の変化(民主化)を促そうとする動きは、「閉じこもる」姿勢とは逆の「攻め」の姿勢に見えます。しかし、これは以下の戦略的意図があると分析できます。

  1. 敵対勢力の無力化:
    イランの現体制は、中東におけるアメリカの利益を脅かす最大の「破壊者」です。この体制を内側から崩壊させる、あるいは民主化を支援して親米的な勢力に変えることは、中東における米軍の負担を長期的に減らすための「出口戦略」とも言えます。
  2. 地球規模の再編:
    イランが民主化し、国際社会(特に西側経済圏)に復帰すれば、エネルギー供給の構造が劇的に変わり、中国やロシアとの連携(いわゆる「悪の枢軸」的な結びつき)を断ち切ることができます。

3. 「選択的介入」という共通点

これら二つの動きを統合して考えると、アメリカは「全ての地域で平等にリーダーシップを発揮する」という従来のグローバリズムを捨て、「自国の死活的利益に直結する部分には強力に介入し、それ以外は切り捨てる」という「選択的介入」にシフトしていることが分かります。

  1. 西半球:
    物理的な安全保障のために直接支配を強める。
  2. イラン:
    中国・ロシア・イランという「反米連携」を解体するために、民主化というレバレッジを使って体制転換を狙う。

つまり、アメリカが「閉じこもる」のはあくまで「コストに見合わない既存の枠組み(NATOや伝統的な同盟関係の一部)」からであり、自国の覇権を盤石にするための「積極的な再編」は並行して進めているというのが実態に近いでしょう。

4. 民主化を「手段」として利用する側面

重要なのは、現在のアメリカが掲げる「民主化支援」が、かつてのような理想主義的なものではなく、極めて現実的な「体制転換(レジーム・チェンジ)の道具」として使われている点です。

バザーリのような伝統的な保守層がデモに加わったことは、アメリカにとって「最小限の直接介入で、最大の効果(体制崩壊)を得られる好機」と映っています。

この「西半球の固め」と「中東の再編」が同時に進むことで、2026年の国際秩序は、第2次世界大戦後のシステムとは全く異なる、よりブロック化された競争の時代に入ったと言えます。

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