ロシアは資源価格が高騰すると戦争を始めるクセがある

ロシアは資源価格が高騰すると戦争を始めるクセがある

ロシアの軍事行動と経済状況の関係については、単純な「経済悪化=侵略」という相関よりも、むしろ「資源価格の高騰による自信」や「サプライチェーンの再編を通じた構造的支配」といった側面が強く見られます。

専門的な洞察に基づき、その背景にある構造的な理由を分析します。

資源価格と軍事行動の相関

ロシアの軍事介入は、経済が落ち込んでいる時よりも、むしろ石油や天然ガスなどの資源価格が高騰し、外貨準備が潤沢な時期に発生する傾向があります。

  1. 2008年:ジョージア侵攻 原油価格が史上最高値(1バレル=140ドル超)を記録した直後に発生しました。
  2. 2014年:クリミア併合 シェール革命の影響を受ける前、原油価格が100ドル前後で推移していた時期です。
  3. 2022年:ウクライナ侵略 パンデミック後の需要回復と供給不足により、エネルギー価格が急騰していたタイミングでした。

経済的な困窮が理由というよりは、資源収入による財政的な余裕が、欧米による経済制裁への「耐性」に対する過信を生み、実力行使のハードルを下げているという側面が指摘されます。

サプライチェーンの強制的な組み換え

近年の侵略行為の本質的な狙いの一つに、サプライチェーンの構造的支配があります。

  1. 資源と食料の武器化 ウクライナ侵略を通じ、世界最大の小麦輸出地域の一つを支配下に置くことで、中東やアフリカなどの中立国に対し「食料供給か、欧米との同盟か」という二者択一を迫る構造を作り出しました。
  2. 中立国の抱き込みと依存度の強化 西側諸国の制裁を逆手に取り、中国、インド、トルコといった国々へ安価なエネルギーを供給することで、これらの国々の製造業をロシアの資源供給網に深く組み込みました。これは、単なる貿易ではなく「ロシア抜きでは成り立たない経済構造」の強制といえます。

軍事ケインズ主義による国内経済の変質

現在のロシアは、軍事支出がGDPの約6%に達する「軍事ケインズ主義」的な経済体制に移行しています。

  1. 雇用と所得の再分配 地方の貧困層を兵士として雇用し、軍需産業に莫大な国家予算を投じることで、制裁下でも一時的な経済成長と失業率の低下を実現しています。
  2. 構造的な非効率の固定化 民生部門(技術開発やサービス業)を犠牲にして軍事に特化することで、中長期的には産業の多角化が阻害され、さらに資源と軍事力に依存せざるを得ない構造が固定化されています。

ロシアにとっての侵略は、経済悪化の打開策というよりも、既存の国際秩序から離脱し、自らを中心とした独自の経済圏(資源供給側としての覇権)を再構築するための「実力行使」という側面が強いと考えられます。

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