大学の定員割れ、義務教育レベルの教育は2000年代前半から

大学の定員割れ、義務教育レベルの教育は2000年代前半から

日本の大学で定員割れが深刻化し、一部の大学で義務教育レベルの教育が本格的に導入され始めたのは、2000年代前半(2000年〜2005年頃)からです。

 

 

門倉貴史 日本の大学は私立大学の数が圧倒的に多い

日本の大学は諸外国に比べて私立大学の数が圧倒的に多いという特徴がある。大学・大学院の学生全体に占める私立学生の割合は、日本が73.6%に上るのに対して米国は40.0%、ドイツは1.2%、英国は0.1%、フランスは0%だ。私立大学が多すぎるために、現在、定員割れとなっている私立大学は全体の6割にも達する。ただ、定員割れになっている私立大学の学部であっても定員に対する在学生の割合が50%を下回らない限りは国から補助金が支給される。このため、補助金の予算が広く分散されることで各大学に支給される補助金が不足して、学生の授業料が高くなってしまうという悪循環に陥っている。

 

 

末冨芳 現場を支える技術職・行政職・看護職・福祉職・介護職・教育職すら低賃金・非正規化を推進してきた

この報道はより大きな我が国の将来ビジョンと共に捉える必要があります。事務職や大卒の経営管理系(いわゆる文系)のホワイトカラー優位の雇用賃金構造が、先進国全般に変化を余儀なくされています。個人的には異論もありますが、需要が減少するライトホワイトカラー部門で、私大が従来の人材育成を行えば、大量失業の可能性は否定できませんので、変革は必須でしょう。しかし日本の人材育成政策が奏功しないのは氷河期を長引かせる中で、適切な人材育成計画も国として実現せず、大卒院卒のSTEAM系人材すらリストラし、現場を支える技術職・行政職・看護職・福祉職・介護職・教育職すら低賃金・非正規化を推進してきたからです。子どもの貧困、国民の貧困は国策貧困です。財務省や文科省の間で、駆け引きをしている場合ではなく、国民に信頼される人材育成改革を。日本を支える人材育成改革は財務省だけでは不可能な社会構造改革です。

 

 

石渡嶺司 高校での留年制度の強化が必須

財務省の指摘は私大の問題点を鋭く突いています。筆者は財務省の指摘の有無に関係なく、経営難から2025年・入学定員充足率80%未満だった141校(うち50%未満が29校)は10年以内に募集停止や統合などで減少していく、と見ています。ただ、それ以上の削減を一律機械的に、というのはなかなか難しいでしょう。それと、「規模の適正化」を提唱するのであれば、高校での留年制度の強化、大学設置認可の厳格化は必須です。前者は、高校での留年者は2022年・文科省調査で8236人でした。全体のわずか0.3%しかいません。留年制度を強化しないと、財務省が批判する「四則演算」を理解しない大学生が出てしまいます。後者は、大学昇格を考える短大・専門学校が多くあり、2000年代以降の新設大学164校の大半が該当します。設置認可申請が現状のままでは、大学数を4割減らしても4割増えて変わらないことになりかねません。

 

 

文科省が提示している代案

文部科学省は、財務省の一律な「4割削減案」に対して、単に反発しているだけでなく、いくつかの具体的な代案や方針を示しています。

その主な内容は、経営が厳しい大学の「定員削減」や「学部の統廃合」、他大学との「連携・統合」、そして時代のニーズに合わせた「教育の質的転換」です。

学校そのものを無理に潰すのではなく、規模を小さくしながら中身を作り直すという方向性を打ち出しています。

文科省が提示している主な代案

文科省が検討・推進している具体的な対策は以下の通りです。

1. 収容定員の厳格化と削減の誘導

定員割れが続いている大学に対して、募集定員そのものを引き下げるよう指導しています。

これにより、大学の規模を18歳人口の減少に合わせて小さくし、過剰な定員枠を是正します。

2. 経営困難校への早期介入と撤退支援

経営状況が悪化している大学法人に対し、早い段階から経営改善を促す仕組みを強化しています。

自力での存続が難しい場合は、他法人への事業譲渡や、学生が不利益を被らない形での円滑な閉校(撤退)を円滑に進めるためのガイドラインを設けています。

3. 大学間の連携・統合の推進

1つの法人が複数の大学を運営できる「アンブレラ方式(地域連携プラットフォームなど)」を活用し、地方の複数の私立大学や国公立大学が、事務部門や授業を共通化する取り組みを支援しています。

これにより、単独では生き残れない大学のコストを削減し、地域に高等教育の場を残す工夫をしています。

4. 成長分野(デジタル・グリーン)への学部転換

文科省は大規模な基金を創設し、理系やデジタル(AI・データサイエンス)、グリーン(環境)分野への学部改組を進める大学に対して財政支援を行っています。

定員割れしている文系学部などを、社会的な需要が高い分野へと作り替えさせることで、学生の確保と地域産業への貢献を両立させる狙いです。

両省の方針の違い

財務省と文科省の代案の違いは、アプローチの仕方にあります。

  • 財務省案:
    「250校」という具体的な数値目標を掲げ、基準に達しない大学を市場原理や補助金カットによって退場させる「外科手術的」な手法。
  • 文科省案:
    各大学の役割や地域の事情を考慮し、定員削減や分野転換、組織統合によってソフトランディングを目指す「体質改善的」な手法。

文科省側は、急激な廃校は地方の衰退を加速させるため、形を変えて存続させるか、段階的に整理していくべきだという立場をとっています。

コメント