不動産不況で一変!深セン地下鉄、黒字神話の終焉
要約
地下鉄利用者の減少
- 深センの地下鉄は、かつて朝の通勤ラッシュ時には非常に混雑していたが、現在は乗客が大幅に減少している。
- 特に1号線など主要路線でも、ラッシュ時に座れるほど空いている状況が日常化しつつある。
深セン地下鉄の経営悪化
- 深セン地下鉄は2024年に約335億元(約6700億円)の赤字を計上し、中国都市鉄道市場で最大の赤字となった。
- 14年連続の黒字経営は、不動産開発(駅と町の一体化事業)による収益に支えられていたが、不動産不況の影響で収益源を失った。
不動産市場の崩壊
- 深セン地下鉄は2017年に大手不動産会社「万科(バンカ)」の筆頭株主となり、配当収入を得ていたが、2021年以降の不動産市場の悪化で万科も大幅赤字に転落。
- 深センの住宅価格は最大70%も下落したケースがあり、かつて1平米あたり3万元(約60万円)の物件が1.3万元(約26万円)まで暴落しても買い手がつかない状況。
住民の苦境
- 深センでは戸籍制度の影響で、地方出身者が子供を公立学校に通わせるには高額な住宅購入が必要。
- 多くの住民が高値で住宅を購入し、ローン返済に苦しんでいる。住宅価格の急落で資産価値が大きく減少し、売却も困難。
- 住宅購入が家計を圧迫し、「普通の人には失敗が許されない」ほどの重圧となっている。
結論
- 深セン地下鉄の黒字神話は、不動産バブルと密接に結びついていたが、不動産不況で経営が急激に悪化。
- 住民も住宅ローンや資産価値の下落で苦しい状況にあり、都市の活力や将来への不安が広がっている。
要点まとめ
- 地下鉄利用者減少=経済停滞の象徴
- 不動産収益依存の経営モデルが崩壊
- 住宅価格暴落で住民の生活も直撃
- 深センの「成長神話」に大きな転換点
「崛起」は、主に「くっき」と読み、山などが高くそびえ立つ様子や、にわかに事が起こること、多数の中から頭角を現すことを意味します。また、中国語では「juéqǐ」と読み、山が切り立つ、決起する、勃興するといった意味も持ちます。
習近平の「鉄道崛起」は巨大なブラックホール、判明した負債は1兆4600億ドル
- 中国の都市地下鉄と高速鉄道の急速な拡大は、地方財政を圧迫する「巨大なブラックホール」と化しています。2023年末時点で、地下鉄と高速鉄道を合わせた負債総額は1兆4600億ドル(10兆5000億元、約212兆円)に上り、年間の利子負担だけでも300億ドル(約4兆3500億円)に達すると報じられています。
地下鉄:ほとんどの都市で大規模な赤字
- 経営実績を公開している28都市中26都市の地下鉄が大規模な赤字を計上。例えば、深センは407億元(約8210億円)、北京は217億元(約4380億円)の赤字となっています。深センでは1日の利用客数が1189万人と多いにもかかわらず、毎日1億元(約20億円)以上の赤字が発生しています。
- 2023年末時点で、29都市の地下鉄の負債規模は4兆3000億元(約87兆円)に膨れ上がっています。
利用需要と建設規模のミスマッチ
- 中国には55都市が地下鉄を運営していますが、1キロあたり1日1万人以上の利用客がいるのは北京・上海など7~8都市のみ。それ以外の多くの都市では十分な需要がないにもかかわらず、巨額の資金を投じて地下鉄を建設してきました。
地方政府の財政構造と不動産バブル崩壊の影響
- 地方政府は主に政府所有地の売却益で財政を賄っていましたが、不動産バブル崩壊により土地売却収益が急減。結果として、地下鉄の維持に巨額の補助金を支払わざるを得ない状況に追い込まれています。
高速鉄道も同様の構造的問題
- 習近平政権下で高速鉄道網も大幅に拡大されましたが、人口規模が小さく収益性が低い地域にも路線を敷いたため、国有企業「国家鉄路集団」の負債総額は6兆2000億元(約125兆円)に達しています。
運営コスト削減や運行停止も
- 赤字が深刻な都市では、照明や空調の節約、エスカレーターの停止など運営コスト削減策が実施されているほか、珠海や上海の一部トラム路線では運行そのものが停止される事態も発生しています。
まとめ
- 中国の鉄道・地下鉄事業は、過剰な建設と不動産バブル崩壊による財政悪化が重なり、巨額の負債と深刻な赤字を抱えています。特に地方都市では利用需要に見合わないインフラ投資が財政を圧迫し、今後の持続的な運営に大きな課題が残されています。