- 2015年10月10日 ほとんどの働きアリは働いてないことが判明GIZMODO Japan
- 2014年11月26日 働かない働きアリに意義があるガジェット通信
- 2013年01月15日 続・働かない「働きアリ」–「怠け者」と「バカ者」は必要かZDNet Japan
- 2012年12月25日 働かない「働きアリ」とジャック・ウェルチの過ちZDNet Japan
2015年10月10日
ほとんどの働きアリは働いてないことが判明
2:8の法則なんてもんじゃなかった…!
アリといえばチームワークのイメージですが、働きアリとは名ばかりで、実はまったく働いてない働きアリが圧倒的大多数を占めることがアリゾナ大学の最新の調査でわかりました。
調査対象は、北米の松林に生息する茶色の小さなアリ「Temnothorax rugatulus」。一般的に分業体制をつくる種として知られ、餌を集める専門、巣をつくる専門、卵の世話をする専門がいます。ところが巣を詳しく調べてみたら、これとは別に、なんにもしない専門がいたのです。
研究班ではまず5つのアリの巣をラボに用意し、巣の構成員全員にカラーペイントで点の目印をつけました。そして2週間に渡って、HDカメラで1日6回5分間ずつアリの動きを記録してみたのです。
すると、働きアリのうち71.9%は半分以上の時間怠けており、25.1%に至っては1度たりとも働いている姿が観測されなかったんだそうな。観測中ずっと精力的に働いている働きアリは、たったの2.6%でした。この結果は学会誌「Behavioral Ecology and Sociobiology」9月号に掲載中です。
過去の研究では、休むのは一時的なものであって、24時間サイクルのシフト交代制で働いているものと思われてきました。が、怠けるアリは昼夜関係なく1日中怠けていたのです。
これはもう、どう考えても仕事の合間の休み時間ではありません。これはこれで専門なのではないか、そして働きアリの分業体制の中でそれなりに重要な役割を担っているのではないか、と研究者たちは書いていますよ。
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2014年11月26日
- コロニーのアリの7 割は働いていないという。
それで、アリの社会は成り立つのか。また、それにはどんな意味があるのだろうか。7割は何もしていない
- アリと言えば働き者の代名詞ですが、実際のアリの巣(コロニー)では、全員がいつも働いている訳ではありません。ある瞬間を見ると、全体の約7割が何もしておらず、長い期間観察しても1 ~ 2割の個体は労働と呼べる行動をほとんどしません。ただ何もせず、たたずんでいるだけです。コロニー同士の間には生存競争があるため、より効率を高めるような性質を持ったものが競争に勝ち残るはずです。全員がいつも働く方が、短期的な効率は良いはずなのに、なぜ働かないアリがいるのでしょうか。
- 働かないアリが生じるメカニズムは、仕事への反応しやすさに個体差があるからだとわかっています。仕事をしやすい個体は少しの刺激で仕事を処理するのでいつも働いていますが、仕事の刺激が大きくならないと反応しない個体は、なかなか仕事をしません。人間にたとえれば、皆でいるときに部屋が汚れると、きれい好きの人だけが掃除をするようなものです。
だから休んでいる
- アリには全体の状況を判断して仕事を差配する中枢の個体がいないので、このようなシステムは仕事の配分に有効だと考えられます。しかし、このシステムはほとんど働かない個体を常に産み出してしまうので、短期的な効率は低い。しかしそれでも働かないアリを常に産み出すこと自体に大きな意味があるのです。
- アリの巣には誰かがいつもこなしていなければいけない仕事があります。例えば、卵はつねにきれいにされていないとカビて死にます。卵の世話が途切れるとコロニーの次世代が全滅するので、いつも卵を舐め続けることが必要です。ところが、アリを含む動物は必ず疲れるので、永遠に働き続けることができません。どこかで休まなければならないのです。よく働くアリが休まなければならない時、全員が働いているコロニーではだれも代わりに仕事をやることができません。しかし、誰かが常に休んでいるコロニーでは、休んでいる個体が穴埋めすることができます。私たちのシミュレーションでは、誰かが常に休むシステムは、全員が一斉に働くシステムよりも長続きすることがわかっています。働かないアリはサボっているのではなく、いつか来る出番のために待機という仕事をしていると言えるでしょう。彼らがいないシステムは早晩滅ぶのです。
個体の利益か組織の利益か
- 人間の企業でも似たようなことが起こっています。グローバリズムの名の下に、人件費をコストとみなし削減し、システムを効率化しようとする動きが強まっています。しかし、労働条件を厳しくし、ブラック企業と呼ばれたいくつかの企業は、一時的に好業績を挙げましたが、現在は人手不足で苦境に陥っています。
- 個体の利益と組織の利益はしばしば対立します。生物の世界では、個体を犠牲にして組織の利益を高めるようなやり方は、そうしないときよりも個体の利益を下げるため原理的に進化不可能です。経営者はそのやり方は存続可能なのかどうか、よく考える必要があるでしょう。
働かないアリに意義がある
2013年01月15日
続・働かない「働きアリ」–「怠け者」と「バカ者」は必要か
前々回の「働かない『働きアリ』と ジャック・ウェルチの過ち」を書いた後、その中で取り上げた長谷川英祐准教授に『働かないアリに意義がある』という著作があることを知った。読んでみて、アリには組織の存続を賭けた過酷なキャリアパスがあること、「怠け者」は徹底的に怠け者で、死ぬまで働かない働きアリもいることを知った。
そして、そのすべてがアリ社会の存続のためなのである。どうやら、アリ社会から我々が学べることは、まだまだありそうである。
アリの冷酷なキャリアパス
アリは人間同様に社会性生物であり、組織として生き残ることにその行動は最適化されている。そして彼らは現在も勝ち抜いているのである。
故に、その行動様式には組織戦略として学ぶところがあると考えるべきだ。アリ社会の勤労者たる「働きアリ」にもキャリアパスというのがある。しかも冷酷な。
前掲書によれば、アリは若いころは内勤、つまり子供の世話などを中心に担当し、年を重ねると外回り、つまり餌探しを担当する。なぜか。
「働きアリ」が労働力として長く機能するように、余命が長い若者は危険の少ない巣の中での作業を担い、余命が短い高齢者は命を落とす危険の多い巣の外での作業を担うのだ。これによって、一匹一匹の働きアリは、より長く社会の存続に貢献することが出来る。
それでも働かないことの合理性
それだけ過酷な「働きアリ」の世界において、働かないことが許されるのは何故か。実は、これは許されるというよりも、働かないように仕組まれていると言った方が正しいのである。つまり、アリが皆一斉に働いて、一斉に疲れてしまうと巣の存続が危うくなってしまうというのが正解なのだ。
どういうことか。我々人間でも、すぐに夏休みの宿題を始める人と、ぎりぎりにならないと始めない人がいる。同様にアリにも、子供がお腹を空かしていたらすぐに給餌をするアリと、よっぽど空かさないと給餌をしないアリがいるのである。
これは、アリの社会の労働量調整の仕組みで、暇なときは一部のアリしか働かないけれども、忙しくなるとより多くのアリが働き始める仕組みになっている。これは、アリの個体によって仕事に対する感応度(これを「反応閾値」と呼ぶらしい)が異なることによって実現するのだという。
ゆえに、最も反応閾値が鈍いアリは、うまくいけば一生働かないのである。が、それはこのアリが悪いのではなく、アリ社会の労働力調整の仕組みとして、そう生まれついたのである。ということは、怠け者も存在意義があるということだ。
バカであることの合理性
更にである。長谷川准教授によれば、バカにも存在意義があるという。アリは大きな餌を見つけると、フェロモンを使って他のアリにルートを教えてみんなで運ぶという行動を取る。
しかし、その通りに行動しないバカなアリがいて、みんなと同じルートを辿らない。そういうアリが餌への最短ルートを発見したりするらしく、実験によれば、そういうアリがいる方が結果的には効率的に餌を集めることが出来るらしい。
長谷川准教授曰く、「お利口な個体ばかりいるより、ある程度バカな個体がいるほうが組織としてはうまくいくということです」。なんと心強い。
つまり、怠け者だけでなく、バカ者にも存在意義はある。組織では協調性が重視されるが、意図的にはぐれ者を混ぜることが大切なのである。
短期戦略と中長期戦略
さて、アリの社会を振り返ってみると、短期的には非合理であることが、中長期的には合理的であることが分かる。つまり、皆で一斉に働いた方が仕事は早く片付くのであるが、それでは想定外の仕事量になったときに対応することが出来なくなる。また、全員が同じ行動を取らないと大きな餌を運ぶことはできないのだが、そこには新しい発見を望むことが出来ない。
つまり、短期的には非効率であることも、中長期的な組織戦略から考えると、それを許容するだけの価値が十分あるということである。「働きアリ」のキャリアパスで見たように、アリ社会は冷酷だ。そのアリ社会において許容される「怠け者」と「バカ者」に価値が無ければ、既にその存在は抹殺されているであろう。
会社における「怠け者」と「バカ者」
では、会社組織においても「怠け者」と「バカ者」を許容すべきか。その答えは、アリと同じ意味においてはノーである。どういうことか。
アリの脳は小さい。故に、その労働量のコントロールのために、より効率的なルートを発見するために、アリは遺伝的に「怠け者」と「バカ者」を作り出したのである。
人間はアリよりも賢い。故に、会社としてなにも遺伝的な「怠け者」や「バカ者」を一生懸命採用することはない。もっと意図的に「怠け者」的な社員、「バカ者」的な社員を育成するべきなのだ。
アリ社会が遺伝的に実現しようとしたのは、組織における多様性なのである。アリは、脳が小さいが故に、その多様性は「反応閾値」や突飛な行動として表現された。
会社組織においては、反応閾値の異なる社員を揃える必要はない。つまり、アリ社会が求めるものと同じ多様性を求める必要はなく、それを遺伝子に求める必要もない。
組織として必要となる多様性が何かを定義して、それに見合った人材の採用や育成を行うべきなのだ。そして、アリとは異なる環境に生きる我々が必要とする多様性は、全く異なるものである。それは、時代によっても、場所によっても、組織によっても変わってくるものなのだ。
それにしても、「働きアリ」、何とも悲しい響きである。
2012年12月25日
働かない「働きアリ」とジャック・ウェルチの過ち
12月15日付の日本経済新聞夕刊、北海道大学の長谷川英祐准教授の研究が気になる。『働かない「働きアリ」がいる!?』と題する記事によれば、働きアリのくせに、その10%は働かないのだと言う。
働く働きアリだけを集めてみても、やっぱりそのうち10%は働かなくなってしまう。逆に働かないアリだけ集めると、今度は90%が働き始めて、結局働かないアリの比率は10%になるという。
10%が働かないと聞いて思い出すのが、下位10%を解雇する経営手法で知られた元GE会長Jack Welch氏である。長谷川准教授の説に基づけば、働かない10%を解雇しても、その残りのうちの10%がまた働かなくなってしまうので、解雇する意味はない。
つまり、Welch氏の経営手法は、必ずしもその効果を発揮していなかったことになる。どうやっても10%は働かないんだから、毎年10%解雇していたら割増退職金のコストが掛かるだけ損である
では、どうやってこの「10%が常に働かない」という問題を解決したらいいんだろう? 長谷川准教授によれば、「アリは一部の個体が常に働かなくなるようなシステムを、労働の制御機構として採用している(北海道大学ウェブサイトより引用)」のである。
しかし、これが何のためなのかは分かっていないのだという。ただ、アリという集団生活に長けた生物のDNAがそうさせるのだから、そこにはきっと生き残るためのヒントがあるに違いない。
そういえば、Googleには「20%ルール」という、勤務時間のうち20%を自分の好きな研究に割り当てていいという制度がある。アリの10%よりちょっと長いが、これは、通常業務とは別のことに時間を割くことが、組織全体の能力を高めている事例である。
しかし、誰もが10%を自分の好きなことに使うなら、アリの実験同様、常に10%は働いていないことになる。なるほど、これでアリ社会にもイノベーションが起こり、種の生存はより確実なものとなる訳だ。
とすれば、自分のパフォーマンス、そして組織のパフォーマンスを最大にするには、一日中働くのではなくて、10%は怠けて関係ないことをやるのが良いに違いない。Welch氏も、10%を解雇するのではなくて、全社員に一日の仕事時間のうち10%は怠けるよう指示を出せば、GEの業績は更に良くなっただろう。
人間、やっぱ週末だって仕事しないで怠けないといけないのである。原稿なんか書いている場合ではない。今日はここまで。釣りだ、釣り!